[アメコミ]LAGIAの趣味部屋[アメトイ]

アメコミ、アメトイに関して語るブログです。MARVELのダークヒーローやクライムファイター中心。

アメコミ:GHOST RIDER:DANNY KETCH(2008)#5

自らの意思の元に究極のライダーへと覚醒したダニー・ケッチ。

しかし、それこそがヒトの思いを意のままに操ろうと画策する天使の罠だった…。

 

 

前回はこちらから↓

 

lagia.hatenablog.com

[あらすじ】

「神」へ異議を唱えるミスター・イレブンが語った己の目的。毒のために制御不可能となった“復讐の精霊”の呪いに苦しむ「同胞」たちを、命を奪うことでしか救うことができない現実。背負いきれない程の重荷を抱えた時、ダニーは己に備わるゴーストライダーの「力」を極限まで引き出し、遂に天使が求めた最強の兵器へと姿を変える。

究極のライダーへと目覚めたダニーの力は“復讐の精霊”の紛い物でしかないヴァ―ミナス・レックスを圧倒。しかし、この有り様にミスター・イレブンは1人背を向けてしまう。

全てがザドキエルの描いた筋書き通りに事が運んだことを、天使は呪うしかできなかった…。

一瞬の油断か、ミスター・イレブンが依り代としていたカラスは悪魔の手で首を落とされる。相棒の死がダニーの怒りの炎をさらに激しく燃え上がらせる…。

[マリオネット・メサイア]

ダニー・ケッチ、ブルックリンに住む優しくも気弱な青年。悪党の手で倒れた姉を救うために、街中に蔓延る悪に復讐するためにゴーストライダーへと変身した彼はライダーの「力」の虜になりながらも、自身の優しさから時に苦悩する時もあった。自分が得た「力」が何のためにあるのか、本当にゴーストライダーの「力」で皆を救えるのか。血を流し、倒れながらも復讐のロードを駆け抜けていったダニーは常にこの悩みに苦しんでいった。罪なき者たちを守ることを願いながらも、ダニーが戦えば戦う程に犠牲が出る。そして遂には自分と同じ呪いを受けた者までも手にかけてしまった。彼らが死に際に流した涙がダニーを追い詰めてしまうのは当然だった。

死闘の末に仇敵を打ち倒したダニー。ヴァ―ミナス・レックスは己の持つ“復讐の呪い”をダニーに明け渡すが、甘さを捨てきれないダニーはそれを拒否しようとする。卑しい悪魔はダニーの優しさを嘲笑うが…。いい加減、黙って、死にやがれ!

 

ダニーは兄と同じく“復讐の精霊”の呪いを宿したノーブル・ケイルの子孫。彼らの血に刻まれた呪いは、感情の高ぶりによってその力を増幅する。怒り、悲しみ、そして復讐心。それら負の感情が極限まで高まった時に呪いの真価が発揮される。魂に宿った炎を熱く燃やし、眼前の敵を打ち倒す最強の戦士。今のダニーこそが有史以来、「神」が求めた駒に相応しい。

ライダーの力を目覚めさせるには、やはり大切な者を失った時なのだ。

戦って、戦って、戦い続けて。その果てに待ち受けるのは宿した復讐の炎に焼かれる自分自身。「力」を制御することが出来ないダニーはマリーに助けを求めるが、マリーは既に帰らぬ人となっていた。激昂するダニーの叫びは、復讐の炎をより激しく燃やす。

 

マリーの命を奪った犯人はレイヴンの首を落としたヴァ―ミナス・レックスの配下、正確に言えば彼の肉体を乗っ取ったミスター・イレブン本人だ。かの天使は死に際に他者へと自分の意識と記憶を移す能力を持つ。彼はこの能力を使い、ダニーの元を離れて「神」の計画の障害となり得るマリーを襲ったのだ。天使は彼女の命を奪うことを良しとはしなかった。優しいがために背負い込むダニーには、支えてくれる女が必要。ダニーの動向を傍で観察してきたミスター・イレブンはそう考えていたが、遅かれ早かれマリーは「神」の使者に殺され、地獄に落とされるだろう。ならば自分の手を血で染めてでも、マリーだけは救ってみせる。

天使であり同時に悪魔の姿を持つミスター・イレブンは「神」の手で弄ばれる者たちを救おうと足掻いてきた。こんな形でしか救うことが出来なかったことを悔やむミスター・イレブンを、当のマリーは責めはしなかったが。

しかし、「神」はミスター・イレブンの独断専行を見逃したりはしない。彼の行動は常に「神」の監視下にあるのだ。故にマリーに警告を告げ、天使の手にかかるのも計画通りなのだ。「神」、ザドキエルの狙いはダニー・ケッチを懐柔することのみ。彼にとってミスター・イレブンもマリーも、ヴァ―ミナス・レックスも己の野心を果たすための捨て石に過ぎないのだ。

暴走する呪いに苦しむダニーに降り立つザドキエル。ダニーは「神」が語る救済に賛同し、彼の「祝福」を受け入れてしまう。外界にいるミスター・イレブンとマリーには、ダニーを止めることはできなかった…。

 

ジョニー・ブレイズの敵となり、彼の前に現れたダニー・ケッチ。彼は実の兄と敵対してでも“復讐の精霊”の呪いを持つ者たちに「救い」を齎してきたが、その背景は当時の管理人の想像を絶するものだった。彼の持つ優しさという甘さは健在ながらも、その優しさが最悪の形で利用されてしまったのだから。

逃げることも出来ず、天使の傀儡となることでしか復讐を果たすことが出来ない。今シリーズはそんなダニー・ケッチの人柄と在り方を再認識させるのにピッタリだと言える。

「祝福」を受け入れたダニー・ケッチが宿す炎は地獄の赤き炎から、天界の蒼き炎へ。彼が往く復讐のロードの果てに待ち受けるのは、挫折と後悔、そして新たな復讐のロードへの分岐点だ。