[アメコミ]LAGIAの趣味部屋[アメトイ]

アメコミ、アメトイに関して語るブログです。MARVELのダークヒーローやクライムファイター中心。

アメコミ:GHOST RIDER(2006)#33

天使との戦いに敗れ、散りじりとなったジョニーたち3人。

失意に暮れるサラに追い打ちのように降りかかる更なる絶望の数々。しかし、そこで彼女が目にしたのは…。

 

 

前回はこちらから↓

 

lagia.hatenablog.com

 

lagia.hatenablog.com

[あらすじ]

しがない修道女見習いでしかなかったサラが体験してきた事件の数々。それは彼女に成長を促し、同時に彼女の精神を限界まで追い詰めるには十分なものだった。祖父からケアテイカーの称号と記憶を受け継ぎ、ジョニー・ブレイズらゴーストライダーたちの活動を見守ることを義務付けられた女は、やがて“復讐の精霊”の力を利用せんと企む天使ザドキエルを阻止すべく行動を起こした。

しかし、彼女の思いもむなしくライダーたちと天使の軍団の全面戦争はザドキエルの勝利に終わり、多くのライダーが命を落とす結果となった。失意に暮れ、ジョニーの元を去ったサラは祖父の元へ踵を返す。これから自分はどうすればいいのか、何ができるのか、その答えを求めて…。

大切な者を失った悲しみの感情とそれを奪い取った天界への怒りの感情がないまぜになるサラ。さりとて、天界に住まうザドキエルへ復讐する手段はない。このまま絶望に悲観することしかできないのか…。

[Once Were GHOST RIDERS]

永劫の時の中で、ひたすらに復讐のロードを奔る運命を強いられる“復讐の精霊”たち。ただ独り、一度抱いた復讐の炎を胸にしまい、暗闇の中を彷徨う哀れな悪魔憑きたち。ケアテイカーは彼らの行く末を見守ってきた。誰からも顧みられることもなく、歴史の闇へと消えていった彼らの思いを無駄にしないために記録に留めてきた。ゴーストライダーたちが胸に抱いた怒りと悲しみと共に。

有史以前、神々の時代から連綿と受け継がれてきた復讐の炎。ヒトの身を感情諸共に焼き尽くす地獄の業火を手中に収めるために、ザドキエルはずっと機会を待ち続けていた。己の復讐を果たすために“復讐の精霊”の力を、そして「神」の創造物であるヒトを利用したのだ。

そんな彼らの思いを踏みにじる絶対な力。神に最も近い天使たるザドキエルは、数世紀もの歳月を掛けて求め続けた究極のライダーへと覚醒したダニー・ケッチを傘下に付けた。かの天使の目論見通りにダニーは彼が嘯く「慈悲」のもとに現代のライダーたち全員から“復讐の精霊”の力を奪った。そうして、ヒトの身では制御しきれない程のパワーを得たダニーから力を掠め取り、己のものとしたのだ。地上と天界を隔てる結界を力づくで破ったダニーには急襲したザドキエルから逃れる術はなく、僅かな分だけの“復讐の炎”を守ることしかできなかった。ダニーが守った地獄の業火は天より降り注ぎ、地上で這いつくばるジョニー・ブレイズに再びライダーへと変身する力を与えた。

終わってみれば、サラ1人がケアテイカーとして戦った戦果はこれだけだ。サラには散っていった「同胞」たちの無念を背負うことも、悲観に暮れるダニーを諫めることも、失意に沈むジョニーを慰めることはできない。彼女はまだ誰かの指し示すロードを必要とする子供なのだから。天使との決戦の前に壮年なモレックに弱音を吐いていたのは、彼女なりの助けを求める絶叫だったのだろう。年長者に教えを請うのはごくごく自然な姿勢だが、ザドキエルの悪意がそれを許さない。

祖父の遺体を埋葬するために世話になっていた修道院へと帰ってきたサラが見たのは、血まみれになった同僚たちの姿。彼女たちを殺害したのは、ザドキエルを崇拝する狂信者。ダニーやコワルスキーだけでなくディーコンを同時に使役していたのは用意周到なザドキエルらしいよ、クソッタレが。

頼る者も奪われ、残されたサラに胸に宿る黒い感情。今すぐにでもあの野郎に復讐をしたい。だが、その想いはすぐさまに諦観へと変わってしまう。よく頑張った。やれるだけはやった。ゴーストライダーでも勝てなかった天使に、ヒトの身である自分が敵う筈もない。祖父や修道女たちを墓地へ埋葬する彼女の目には、もはや戦意は宿っていないように見える。ここまでされれば心が折れてしまうのは当然だろう。

しかし、それでもと、決して復讐の意思を絶やさないのがゴーストライダーだ。「神」の持つ絶対的な力?ヒトの身では天使には敵わない?そんなこと知ったことか。「そんなもの」に負けてしまうような諦めの良さなんて持っていたら、最初から悪魔と契約してまで“復讐の精霊”の呪いなんて受けはしないのだから。

全てに絶望し、投げ出そうとするサラの前に突然現れた謎のゴーストライダーたち。体が半機械化された彼らはサラを立ち直らせるために遥か未来からやってきた。彼らを現代へ送ったのは、未来のサラ自身!

ゴーストライダーたちは戦い続ける。たとえ勝ち目がない戦いであっても、決して逃げず、真っ向から敵に挑み続ける。胸に抱いた「闇」の深さは測り知れず、そしてそれ以上の「光」を抱いて戦ってきた。罪なき人々を護るために。彼らの無念を晴らすために。自分以外の誰かのために戦い続ける復讐心こそが、天使をも打倒する力となるのだ。

どんな時代でもライダーたちはそれぞれの復讐心を胸に、強大な敵へ挑み続けた。“復讐の精霊”も、そしてヒトの意思は決して「神」のオモチャなどではない。

 

かくしてサラは、未来世界のサラ自身という「年長者」が指し示したロードを奔る。厳しくもかつ優しい激励を残して未来に帰っていった「ゴーストライダー・オブ・トゥモロー」の言葉を胸に、サラは1人荒野をバイクで駆けていく。ケアテイカーたる自分にしかできないこと。それはジョニー・ブレイズとダニー・ケッチを見つけ出し、2人の戦いを傍で見守ること。まだまだ未熟な面がある彼女が、真にケアテイカーとなる第一歩を踏み出したのはこの瞬間だったと管理人は思う。

再び燃え上がらせた復讐の炎を胸に秘め、「ケアテイカー」は駆ける。そんな彼女を祖父や修道女たちも見守っていることだろう。だが、ザドキエルもまた障害となり得る要因を潰すべくブラックアウトたちを使い、暗躍を重ねていたのだった…。