[アメコミ]LAGIAの趣味部屋[アメトイ]

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アメコミ:GHOST RIDER(2006)#30

骨肉相食む戦いで心に傷を負うジョニーとダニー。

しかし、“復讐の精霊”の力を狙う天使の企みは、ヒトの思いを黒く塗り潰していく…。

 

 

前回はこちらから↓

 

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[あらすじ]

日本、東京郊外。雨夜の中バイクを入らせる1人の男の姿があった。彼、ヨシヲ・カナベの表情は鬼気迫るもので、まるで大切な者たちが襲われた時に見せるようなものだった。虫の知らせを感じた彼は、彼が世話になっている住職が住む寺を訪ねるが、そこで彼を待っていたのは虫の息の住職と若い外国人が1人。

ダニー・ケッチは“復讐の精霊”の呪いを受けた者を救うべく行動を起こした。そして、その救済対象にはヨシヲも含まれていた。ヨシヲを救うと宣いながら、仲間たちを傷付けたことを事もなげに言うダニーにヨシヲの怒りの炎が爆発する。

何十人、何百人もの魂が安らかに眠る墓地。そんな地で地獄の炎が立ち上がる。天使の傀儡はこの地獄の鬼「ヨーカイ・ライダ」が叩き潰してやる!

【WAR for HEAVEN】

前号にて描かれた血を分けた2人の男たちの死闘、そして新たなるゴーストライダーたちの登場。ジョニーとダニー以外にも世界中に存在する“復讐の精霊”の呪いを受けた者たち。彼らは後々のゴーストライダー誌にも登場し、“復讐の精霊”ザラソスの秘められた歴史を紐解く手助けとなっていく。チベット出身のニマ、中東出身のモレック、中国出身のバイ・グ・ジン、そして今号にて登場した日本出身のゴーストライダー、またの名をヨーカイ・ライダことヨシヲ・カナベと続々と登場するライダーたちの存在は、ジョニーに「弟やマイケル・バディリーノ以外にも“復讐の精霊”の呪いを受けた者が現代にいるという悲しみと安堵」を齎した。この事実はジョニーにとっては受け入れがたいものだっただろうが、後々のストーリー展開を鑑みると必要なものだっただろう。

ヨシヲがダニーと相打ったその後、ジョニーとサラはモレックたちと共にチベットから遥々日本へとやってきた。目的はヨシヲを仲間に加えて、来るザドキエルとの決戦に備えるためだ。モレックもジョニーと同じくザドキエルの企みを知り、彼の天使の野望を阻止するために仲間を欲していた。その仲間は“復讐の精霊”をその身に宿す悪魔憑き、そして彼らの歴史を記録するケアテイカー、即ちジョニーとサラの2人であり、そこに数多の同胞を加えることで天界の勢力を迎え撃とうというのだ。ヨシヲもまた、モレックが探していた同胞の1人。だが、そんな彼らの思惑を見透かしていたようにザドキエルの息のかかった使者に同胞を消されていた。今回もまた、同様の結果に終わってしまったようだ。

モレックたちが東京に駆け付けた時にはヨシヲはダニーに敗れ、“復讐の精霊”の呪いを奪われてしまっていた。廃人になっただけに済んだのは、ダニーが情けをかけたからか。いずれにせよ、ダニーの動向を監視するザドキエルにとって計画は順調に進んでいるので問題はなかったが。

ニマに続いてヨシヲまで倒れたことで、モレックたちの打倒ザドキエルの計画に陰りが見え始める。そんな状況にジョニーはしびれを切らしたかのように、「同胞」に背を向けてしまう。こんなことをいつまでも続けて、また誰かが傷付くのなんてゴメンだ。怒気をはらんだ言葉にモレックたちも返す言葉はない。ジョニーはダニーとの戦いで記憶の中に隠していたトラウマを刺激されて心に傷を負っている。今のジョニーにザドキエルと戦うのだから泣き言をほざくな、とは言えないだろう。だが、彼らはジョニーが復讐のための戦いから逃れられないことは分かっていた。望む望まないに関わらず、ザドキエルの魔手はすぐそこまで迫っていたから。逃げ場など、何処にもない。

そして、黒い感情を蒼き炎で照らすことで罪悪感から逃れようとするダニーにもまた逃げ場は用意されてはいない。ザドキエルの加護を受けた彼は、今や傍らに立つ天使の操り人形。元来持っていた優しさを最低の形で利用されていることに薄々と勘付きつつあったダニーだが、もう引き下がれないところまで来てしまった。そんな信徒の様子に満足気な笑みを浮かべる天使は、自分の意志に従わない「反乱分子」を一掃すべく天界を掌握するのだった。

私兵部隊「ブラックホスト」を動かし、天界を襲うザドキエル。数多の「同胞」を手にかける告死天使は、その仮面と握る剣を血で濡らしていくことに躊躇いはない。

 

「神」に仕え、主君が掲げる「正義」を体現し、主君の「高潔」を示し続けたザドキエル。そのためには他の天使たちから後ろ指を指されるような汚れ仕事もこなしてきた。強大な力を持つがために冷遇を受け、冷や飯を食おうともザドキエルは「神」に傅いてきた。全ては己の信じる「神」のために。

ザドキエルユダヤ教に記された識天使、聖地エルサレムとそこに住まう民を守る剣。しかし、永劫の時を経て彼の神性は何時しか穢れ、聖地を奪った天界に深い憎悪と復讐の感情を向けるようになった。「同胞」が純白の翼を持つのに対し、ザドキエルとその配下たちは漆黒の翼を羽ばたかせているのが、彼の天使の「闇」の深さを物語っているようだ。

ザドキエルを裏切り者の犬畜生め、と侮蔑する天使たちは主君を守るべくザドキエルに一斉に攻撃を仕掛ける。そんな天使たちをたった1人で相手取るザドキエルの戦いぶりは、圧倒的で背筋が凍る。これが古き神の実力か。

「同胞」を討たれたことで心を痛め、戦うことから背を向けようとするジョニー。「同胞」を討つことを喜々として行い、戦火を広げることも辞さないザドキエル。今号で描かれた2人の在り様は対象的だ。ザドキエルからすればジョニーが抱く痛みは、何の価値もないゴミ同然のものに過ぎない。ザドキエルからすれば「同胞」とは名ばかりの裏切り者たちだから、そんな連中を討つ手助けをするチャンスを不意にした男の感情などを考慮する必要はないだろう。しかし、ジョニーにとっての「同胞」は同じ痛みを分け合った一種の兄弟だ。これまでのエピソードで天使の感性が人間のそれとは根本的に異なるのは描かれてきたが、その違いが如実に表されている。

「同胞」を切り捨てる冷酷さを持つ天使。悪魔顔負けの悪辣さと計算高さを持つ彼らだが、それだけに計画を実行するためには用意周到に準備を行い、二重三重に策を用意する。ジョニーが日本を去り、後を追うダニーに「祝福」を授ける様はまさに天からの贈り物だった。

天界でのクーデターも一区切りがついたことで私兵部隊をダニーに貸し与えるザドキエル。その一方で、ザドキエルゴーストライダーに復讐心を抱く男にもまた、「神託」を与えていたのだった…。