[アメコミ]LAGIAの趣味部屋[アメトイ]

アメコミ、アメトイに関して語るブログです。MARVELのダークヒーローやクライムファイター中心。

アメコミ:GHOST RIDER(2006)#34

失意の中あてのない旅を続けるダニー・ケッチ。

しかし、ダニーの血に刻まれた“復讐の精霊”の呪いがダニー自身の「あるべき姿」へと導く!

 

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[あらすじ]

ハイウェイマン。それは長距離運転手たちの間でまことしやかに囁かれる都市伝説。両親から優秀な兄と比較されて屈辱を味わいながら生きてきた男は、悲惨な現状を打破するために悪魔に魂を売り渡して力を得た。その時から男は毎日のように悪魔への供物を捧げるために、愛車のトラックを走らせる。身も心も悪鬼と成り果てた主人に従う漆黒のモンスターマシン。

とても信じられるような話ではない与太話か、いやさこれが現実に存在するのだ。この世界には己の欲望のためなら超常の存在へ傅く者はいくらでもいるのだから…。

一目では穏やかな風貌をしていても、裏では何を考えているのかは分からない。悪党も最初からそうだった訳ではない。が、お前はやり過ぎたなハイウェイマン。

[On the Road Again]

これまで描かれてきたゴーストライダー誌では、悪魔と契約をした者たちが登場してきた。彼らが悪魔に魂を売った理由はひとりひとり違うが、その根源には共通するものがある。己の人生を奪った者たちへ復讐するための「力」への欲求。何者にも止められない強大な力を手に入れたら、憎き敵を打ち倒すことができたら、この手であいつが苦痛に喘ぎながら無様に死んでくれたらどれだけ気分がいいか。そんなある種の純粋な思いは、悪魔たちにとって格好の餌なのだ。

ハイウェイマンことジェファーソン・アーチャーもまた、そんな欲求を抱いたが故に人の道を踏みはずした哀れな男だ。兄を自分と比較し侮辱する両親の死別と兄の消滅、忌々しい者たちが悉く姿を消したことで行き場のない怒りを解消するようにサタンと契約を交わした。救いようのない馬鹿野郎だが、管理人は彼自身が抱いた怒りには一定の理解を抱いてしまう。

何故ならゴーストライダーもまた、ハイウェイマンのように復讐するための「力」そのものなのだから。

「神」に最も近い天使ザドキエルはそんな「力」を欲した。彼自身の復讐を「神」に果たすために地上の多くの人々を利用してきた。聖地エルサレムを奪われ、憎き敵の尖兵として振る舞うことを強要されたザドキエルが怒りを抱くのも至極当然の結果だろう。しかし、だからといって個人の復讐心のために多数を犠牲にすることはあってはならない。「そんなこと」のためにライダーの力はあるんじゃない。故にジョニー・ブレイズたち“復讐の精霊”を宿す地上のライダーは戦いを挑んだ。

そんなライダーたちの中でただ一人、ザドキエルに与したのがダニー・ケッチだ。神が授けた「啓示」を信じ、救いを齎さんと戦ってきたダニーはジョニーとの決戦の末に勝利するものの、ザドキエルに裏切られてしまった。

兄の説得を聞き入れず、神に利用された自分への怒り、そしてザドキエルへの怒り。そして怒りの炎を覆い隠す諦観の感情。ダニーの胸中に渦巻くのは諦めしかない。ザドキエルの強さはダニー自身が一番よく分かっている。勝てる相手ではない。復讐しようと思っても無駄。ジョニーやサラたちの前から姿を消し、独りバイクを駆るダニーはハイウェイマンが起こした殺人現場も見て見ぬ振りをしようとする。ダニーは己の「復讐の意義」を見失ってしまったのだ。

しかし、ダニーの諦観は所詮言い訳でしかないのは明白だ。本当に見て見ぬふりをするなら、その前にジョニーたちの前で「責任」を取るだろうから。そうしなかったのは背中を押す後押しが欲しかったからだと管理人は思う。ダニーが抱く「復讐の意義」は至極シンプルだった筈。忘れてしまったのなら思い出させてやろう、嫌という程に。

炎に包まれた命を落とした罪なき者たちの怨嗟の声が、ダニーを呼び止める。彼らの無念を晴らさずにおけるものか。ダニーの血に刻まれた“復讐の精霊”が再び目覚めた!

 

天界の蒼き炎から地獄の赤き炎へと戻ったゴーストライダーは荒野を駆ける。目指す先はハイウェイマンただ一人。奴はダニーが来る前にもハイスクールバスを襲い、乗客を皆殺しにしてしまった。死人が増えれば増える程にライダーの怒りの炎は激しく燃え上がる。地獄の炎に包まれたバイカーと悪魔のトラックを駆るトラック野郎。美しい夜空が彩るデスレースが幕を開ける。

多くの生贄を捧げてきたハイウェイマンの「力」は強大だった。ライダーの一撃を受けてもトラックはすぐさまに再生してしまう。互いに不死身のタフネスを持っているなら、決め手は一撃必殺のみ。その首を刈り取ってやる!

 

主を失いコントロール不能になったモンスタートラックは大クラッシュ。内部から蠢く悪鬼は触手を伸ばして生贄を求める。そして主もまた、首を落とされながらもまだ生きていた。首から昆虫のような足を生やしてシャカシャカ這い廻る様はトラック同様、気味が悪い。最早ヒトの面影を感じない正真正銘の化け物と化した化け物に、ダニーがかける情けはない。ヘルファイアを浴びて灰になれ。

断末魔の悲鳴を上げて燃えていくハイウェイマンを、ダニーは神妙な面持ちで見守る。これが自分が本当に往くべきロードなのだ。偽りの救いのためではなく、罪なき者たちの無念を晴らすために戦う。彼らの中にはダニーが命を奪った「同胞」たちも含まれている。ならばもう自分を誤魔化す理由はない。必ず復讐を果たしてみせる。あり得たかもしれない己の最期を灰になってゆく男に重ねながら、ダニーは奔る。

己の在り方を認識し再起するダニー。復讐のロードを駆けるダニーを、朝日が優しく迎える。そして、残された「灰」もまた己の復讐を果たすために復活を遂げるのだった…。