[アメコミ]LAGIAの趣味部屋[アメトイ]

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アメコミ:SUPERIOR SPIDER‐MAN:TEAM UP#12

オットー・オクタビアスの脳裏に蘇る愛する者を奪った仇敵との因縁。

グリーンゴブリンとの対峙が、オットーがヴィランからヒーローへと変わったきっかけだったのかもしれない。

 

 

前回はこちらから↓

 

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【あらすじ】

憎き宿敵スパイダーマンを打倒するためにノーマン・オズボーンと手を組んだオットー・オクタビアス。2人の科学技術を提供し合い互いの装備を強化、スパイダーマンの戦闘パターンを分析することで確実に勝利を掴むプランを練る。

しかし、2人の結束はオズボーンの逆恨みにより瓦解。オットーの婚約者であるアリス・アンダースを襲い、重傷を与えてからオットーに会わせる卑劣な手段を取る小鬼に怒りを爆発させたオットーは4本のメタルアームと己の拳を以て報復しようとするが…。

傲慢な母親の手で引き裂かれながらも妻と築いてきた絆。
それをグリーンゴブリンは一瞬で奪った。二度と笑えないようにしてやるよこの野郎!
【Otto Octavius】

前号にて描かれたドクターオクトパスとグリーンゴブリンの出会い。それは両者が今後辿る運命を決定付ける。共通の敵を打倒するために手を組んだ筈が、戦う目的が異なっていたことで破綻したこのチーム・アップは、オットーの心にオズボーンへの憎悪の炎を宿すことになったのだ。

オットーが病室で見たのは体中に傷を負い更に治療薬がない新種のウイルスに感染された妻に、邪悪に笑うグリーンゴブリンの姿。アリスとの出会いは、母の傲慢さと与えられてきた愛情で苦しめられていたオットーの心に光を刺した。自分に寄り添い、支えてくれながらも対等な関係を築ける女性。そんな女に非道を行ったとしれば、オットーでなくとも怒るのは当然だ。激情に駆られたオットーはコートに隠していたメタルアームを起動させ、グリーンゴブリンに猛攻をかけた。4本のアームはオットーの怒りを力に変え、瞬く間にゴブリンを組み伏せる。あとはノーマン・オズボーンの弱点である胸の“古傷”を抉るだけだ。悲しみの感情をかき消す程の怒りに取り憑かれたオットーは、メタルアームだけでなく自らの拳も“古傷”に浴びせていく。死から蘇ったオズボーンに残った“古傷”とは、彼の心臓だ。

沸き上がった殺意が収まるのは憎き小鬼がピクリとも動かなくなった時。しかし、この惨状を意識を失っていた筈のアリスが見てしまった…。

「ここで何をしているの?」アリスの問いにオットーが答えられる訳がない。
怨敵も姿を消し、あの蜘蛛までやってきた。だから彼女に宣言する。
必ず君の傷を治してみせる。

自分こそが世界で最も優れている(SUPERIOR)であることを証明するために、戦ってきたオットー。だが、ここで彼が戦う目的が少しづつ変わっていく。愛する者を救うために奔走するようになったのだ。自身の持つ知識を総動員させ、科学の粋を結集させた治療薬を完成させようとするオットー。しかし、彼の望みはスパイダーマンによって阻止される。オットーが造ろうとしていた治療薬は失敗に終わり、そしてアリスもこの世を去ってしまう。

アリスの墓前に佇むオットーの胸にはもうオズボーンへの怒りしか残されていなかった。しかし、彼の怒りはオズボーンに届くことはない。ノーマン・オズボーンは常にオットー・オクタビアスの上を行っている男だから。

オズボーンの屋敷を襲撃するオットーだが、家主の姿を見つけることはできなかった。
怒りの感情とオズボーンに勝てない劣等感が、オットーの目を曇らせてしまった。

それ以降、決別した2人は各々のやり方でスパイダーマンと戦い続けてきた。オットーはメタルアームの強化改造を繰り返し、巨大ロボットまで造り上げて世界とスパイダーマンに挑戦。対するオズボーンはクローンたちの問題に苦しむスパイダーマンの戦いを影から操ってきた。長年に渡って繰り広げられたスパイダーマンとの戦い、終止符を打ったのはオットーだったことは周知の通り。彼はオズボーンでも成し遂げられなかったスパイダーマンの殺害に成功しただけでなく、彼に成りすまして“スーペリア・スパイダーマン”と名乗っていたのだから。

だが、勝利を収めたオットーの胸中に去来するのはいつまでも続く「愛する女と掴む栄光と怨敵の出現で崩れる栄光」のループへの憤りだ。もうこんな思いはたくさんだ、できることなら捨ててしまいたい。そう思うのは当然だ。しかしオットーは逃げだすことはしなかった。アリスだけでなくアナ・マリアまで失いたくない。彼が真に「スパイダーマン」と名乗れる瞬間は、愛する女を救おうと足掻く時なのだ。

ドクターオクトパスとスーペリア・スパイダーマン
姿と名乗る名が変わっても運命は変えられない。否、変えてみせる。
スパイダーマンにはそれができるのだから。

 

傲慢でプライドも高いと、チーム・アップするにはどう考えても不向きな性格のオットー。そんな彼が主役を張ったこの「チーム・アップ」誌も、蓋を開ければチーム・アップしている場面が殆ど描かれない名前詐欺みたいなものだった(1号の時点で全然アベンジャーズに協力しようとはしていなかったし…)。しかし、オットーが手を組む対象がヒーローやヴィランではなく「スパイダーマン=ピーター・パーカー」と見た場合、このタイトルは正しいのでないかと思えてくる。作中、オットーは何度も自分はスパイダーマンに相応しいのか自問自答を繰り返してきたが、その裏でピーターはオットーの在り様を見ていた。そしてオットーはかつてのピーターとは違ったやり方で「大いなる力」に対する責任を果たした。

愛する女を救うために全てを捨てたオットー・オクタビアス。そんな彼の在り方を知れる名作だったと思う。

全てが終わったオットーが出来るのは、命を賭して守った愛する女の生きる未来を見守ることだけ。

これでオットー・オクタビアスの物語は終わりを迎えることになった…、とはならなかった。

 

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