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アメコミ:PUNISHER(2022)#7

フランク・キャッスルの前に現れた恐れ知らずの男、デアデビル

彼の男が見る真実、そしてマリアの視点から描かれる“パニッシャー”の顔とは…。

 

 

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【あらすじ】

それは遠き、されど近しき記憶。“国”の命じるままに戦地に赴いた夫の帰りを娘と待ち侘びていたマリアが見たのは狂気の“炎”を纏う夫の姿。いったい、どうしてこんなことになってしまったのか。フランクのことを誰よりも分かっていたと自負していた筈なのに、彼が抱える“闇”が何故分かってあげられなかったのか。教会に足げなく通い、神に己の後悔を懺悔するマリアの後悔は尽きない。

しかし、後悔しているのは件の夫も同様だ。あの時妻子を失わなければこんなことにはならなかった筈という悔いと、そして今度こそ良き夫として妻の前に立つ希望。迷いを抱きながらもそれを二律背反の感情を憤怒の炎で覆い隠し、フランク・キャッスルは侵入者を迎撃する。二度と幸せな生活を奪われないために。

フランクがザ・ハンドに与したことを知ったマットは、事の真相を確かめるために敵の本拠地へ乗り込んだが、当のフランクはマットに殺意をぶつける。
刀を向けるフランクのそれは妻を護る夫としての顔か、それとも…?
【The Man and The Devil】

最強の私刑執行人パニッシャーとしてのあるべき姿を憎むべき敵であるアレスに突き付けられ、完膚なきまでに叩きのめされたフランク・キャッスル。戦いの神の剛拳の前には“ビースト”が齎す憤怒の炎も有効打にはならなかった。軍神との戦いに敗れた「キング・オブ・キラー」を待ち受けていたのは、彼が己の意思で歪めたパニッシャーの道の代償。子供たちを蘇らせて錯乱した妻の精神を安定させたい。そんなうまい話しが通用する筈もなく、子供たちは言葉も交わせない醜い化け物と化していた。

フランクはそんな子供たちをフランク自身の手で切り殺した。今の自分が間違っているとは思いたくない、だが同時にアレスの言う通り間違っているのかもしれない。そんな迷いを断ち切るという意味も込めてか、凶刃を振り下ろしたのだろう。結果はフランクの精神を更に削っただけに終わったが。

しかし、ここでフランクのエゴの清算が終わったわけではない。“こんなもの”で済む程にパニッシャーが歩んできた道は甘くはない。

冒頭から描かれるマリアと子供たち、そして戦場から帰還したフランクの生活は傍目に見れば仲睦まじい家族のそれだっただろう。愛妻家であり、子供たちを大事にしている夫が地獄から帰ってきたのだから。しかし、当事者であるマリアの目にはそうは映らない。初めて出会った時からどこか様子のおかしかったフランクが自分を避けるようになっていたと感じていたのだ。目は虚ろでまるで此処ではない遠くを見ているようで、自宅にいながらも庭にテントを立てて眠る。銃を握りしめたまま眠りに着く様はマリアでなくとも異常としか思えないだろう。だが、フランクの破綻した精神は硝煙の匂いで安らぐことはない。マリアが目を離した隙に、フランクは子供たちを“自室のテント”に連れて川の字で眠っていたのだ。もうどうしろというのか、神に助力を請いたくなるマリアの心中は察して余りある。

マリアでなくとも顔を伏せたくなる壊れた日常生活。それでもマリアはフランクに寄り添い続けたが、子供たちは何も思わなかったのだろうか…。

目に映るものを全て敵とみなして殺意をぶつけ、常在戦場とでも言うかのように家族と距離を置きながらも家族を大切にしようとするフランク・キャッスルの行動は常軌を逸している。これまでにもフランクは不器用だと散々に書いてきた管理人だが、ここまで描かれると異常だと思わずにはいられない。フランクの在り方はシリアル・キラーのそれであり、家族がフランクの“敵”となれば容易く銃の引き金を引くことも躊躇わないだろうとそう思わずにはいられない。こんな歪な人間性を持つ兵士がアレスの言う芸術だというのか。おそらくアレスからすれば、そんなフランクもまたパニッシャー足りえんと答えるのだろうがちょっと疑問府が生じる。

デアデビルの“眼”にはザ・ハンドの王として振る舞うフランクの歪んだ在り方が視えていただろう。マットもフランクと同様、過去に“ビースト”の力を宿して暴走したことがあるだけに今のフランクもかつての自分と同じく邪神に唆されているだけに過ぎないと考えたのだ。フランクとの格闘戦の末に叩き伏せたマットは、懐から“神の加護”が施された十字架を取り出してフランクの“浄化”を試みる。

マットは信心深く、デアデビルと“神”は切っても切り離せない組み合わせだ。だがその一方でパニッシャーと“神”もまた例外ではない。マットは神に祈り時に背を向けるが、フランクは神に対して常に銃口を向ける。フランクが祈る神はもういない。“ビースト”の加護もアレスの導きも、神を気取る奴らなどクソくらえだ。妻子を奪う神など消えてなくなればいい。デアデビルが仕掛けた浄化はフランクが抱えた迷いを消し去ってしまったようだ。

俺を見ろ。お前の眼には何が映っている?
十字架を払いのけたフランクの目の奥には、かつてと同様に怒りの炎が渦巻いている。

 

歪められたパニッシャーとして歩んできた血塗られたロード。その延長線上に“ハイ・スレイヤー”と祭り上げているフランク・キャッスルの姿がある。しかし、いくら道を歪めようとも横道に逸れようともフランク・キャッスルの在り方だけは変わらないのかもしれない。“パニッシャー”とはフランク以外の誰かがそう呼ぶだけであり、フランクの往く道は最初から決まっていたのかもしれない。そして個々人の思い描く“パニッシャー”像を押し付ける者全てが、今のフランクにとって本当に倒すべき敵なのだと思わせる。

マリアの回想とデアデビルとの戦いを通して、そう訴えているようだ。

撤退したマットを追わず、マリアと刀と在り続けることを選んだフランク。そんなフランクの心境を知ってか知らずか、マリアはフランクの心を抉る。
一方、修羅の道を往くことを止めない信徒を奪い返すべくアレスが再び行動を起こした。
今度こそ決着をつける。