明かされるフランク・キャッスルとマリアの出会い。
この出会いがパニッシャーとして戦うフランクの血みどろの道を照らす光になるのか。
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【あらすじ】
司祭の部下たちに対する仕打ちに激昂したフランク。彼は刀を抜き、司祭を惨殺してしまう。もうこんな所にはいられない。一刻も早くマリアを連れて逃げなければ。司祭の返り血を浴びたまま妻を迎えに行き、何が何だか理解できないマリアの手を引いてニンジャたちの巣窟から脱出する。果たしてそう上手くいくのか…。
【Dirty Worker】
前号ラストにて司祭の凶行を知ったフランク。司祭は部下たちのために、そしてザ・ハンドのためにと部下たちの家族を皆殺しにした。アレスに負けておめおめと逃げ帰ってきた部下たちへの罰として、そして彼らの精神を自分たちの“王”へと近づけることでより組織の力を増すためにやったとにべもなく言ってのける司祭。邪悪にほくそ笑みながら宣うその姿は実に恐ろしい。そしてこんな奴の存在を許すパニッシャーではないことを、司祭は分かってはいなかったようだ。パニッシャーはこういった輩を始末するために存在するのだから。
門をくぐり、森の中を走るフランクたち。突然の事態に戸惑いを隠せないマリアの言葉に一切耳を貸さず、ひたすらに手を引っ張り続けるフランク。どうして走らなければいけないのか、子供たちはどうしたのか、夫の所業を一切知らないマリアの放つ言葉にフランクが答えられる筈もない。答えたら最後、これまで築いてきた妻との信頼が崩れてしまうのは明白だから。マリアだけには自分の所業を話すわけにはいかない。走り続けた末に倒れてしまったマリアを抱えて、森の中を歩くフランク。その表情は暗く、鬱蒼と生い茂る森はフランクの往くてを阻むかのようだ。お前の往く道はこっちではない、と。
悪党の存在を許さず、一切の情けもかけず暴力を振るい、時には命を奪ってきたフランク。そして同時に、一目惚れした1人の女に共に生きようとアプローチを掛けてきた。女には自分の血塗られた手を見せることは決してないままに。
この歪な在り方をパニッシャーのオリジンに書き足すのは、管理人的には非常に興味深いものだった。これまでフランクの内面は描かれてきたが、肝心のマリアのことはおざなりになりがちだったからだ(マリアは作中では故人だったのだから当然だが)。学生時代に出会った2人は惹かれ合うように結ばれた。その背景ではフランクの誰にも話せない“闇”が広がっていたのだった。
パニッシャーは悪党に裁きを下す私刑執行人。しかし、どう言い繕っても彼が人殺しであることは疑いようがない。そんな彼が何よりも大事にしているのはマリアと2人の子供たちだ。自らの使命と愛する者への想いとで板挟みになり苦悩する様が、今シリーズでの肝だ。
マリアの蘇生はまだ不完全であり、彼女を完全に蘇らせるには時間がかかる。定期的に「ビースト」の薬を投与しなければ仮初めの命が消えてしまうのだ。司祭が語る残酷な真実にフランクの顔も曇る。マリアは実質的にザ・ハンドに人質に取られたようなものだ。妻を完全に蘇らせたければ、ザ・ハンドの王として振る舞えというわけだ。
悪を許さないパニッシャーが、愛する者のために悪になる。こんなに滑稽で痛快、かつ哀れな話はないだろう。フランクとしてもこの事実は受け入れがたいものだ。しかし、それでもやらなければならない。ザ・ハンドのためではなく、マリアと子供たちのために。そして全ての悪を根絶やしにするために。先ずは目下の目標であるアポストル・オブ・ウォーの殲滅だ。アレスを倒した後に、ザ・ハンドもぶちのめす。司祭の協力を断り、パニッシャーは独りでアポストル・オブ・ウォーの本拠地に向かうのだった。