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アメコミ:PUNISHER(2022)#11

パニッシャーvsアベンジャーズ

マリアの元に帰ろうと足掻くフランク。しかし、夫は夫自身の凶行を妻が知ってしまったことに気付いていなかった…。

 

 

前回はこちらから↓

 

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【あらすじ】

世界中の「悪」を駆除し、争いの元を根絶しようと西に東と駆け回ったフランク。これが終われば漸く「家」に帰ることができる。マリアとリサとフランクjr、奪われた4人で暮らせる幸せを享受できるのだ。

ザ・ハンドの王としてパニッシャーとして戦い続け、遂に戦争を終えて帰路に着こうとするのも束の間、今度はアベンジャーズがフランクの前に立ち塞がる。彼らは「ビースト」の力を振るうフランクを危惧し、彼から「ビースト」を引き剝がそうというのだ。

しかし、フランクにはアベンジャーズの相手をしている暇はない。急いで家に帰らなければならないから。

ドクターストレンジの魔術で拘束されながら「ビースト」の呪いを吸い出されていくフランク。邪魔をするな、ヒーロー共。仕事は終わったのだから俺は定時で帰る、残業なんて御免だ!

【Remenber】

アレスを倒し、ザ・ハンドの司祭を黙らせ、自分に付き従うニンジャ軍団もただ頭を下げるのみ。これでもうフランクに「これまでのパニッシャー像」を押し付ける者はいなくなった。しかし、フランクの周囲にはまだこの虚像を押し付けようとする者たちがいたようだ。最後の敵はフランクにとっても因縁深きヒーロー、アベンジャーズだった。

アベンジャーズのメンバーはキャプテンアメリカを筆頭にウルヴァリンブラックウィドウ、ドクターストレンジ、そしてムーンナイトと皆かつてフランクとひと悶着があった者たちばかりだ。彼らはパニッシャーと時に共闘し、またある時は敵対してきた。その中でフランクの人となりを見てきたために、こうして「魔道」に堕ちたフランクを救おうと立ち上がったのだ(ローガンやムーンナイトのように嫌味を飛ばす奴らもいるが)。フランクがヒーローの敵に唆されたり、強大な「力」を得て暴走するのは今回が初めてではない。その度にヒーローたちがフランクを救おうと奮闘してきた。今回もきっと上手くいく。当時読んでいた管理人はそう思っていた。

そうは問屋が卸さない。今のフランクには孤軍奮闘してきたパニッシャーではなく、帰る家がある男なのだ。なにがなんでも、たとえヒーローたちと刃を交えようとも、だ。焦燥と怒りの感情から魔術師の拘束を力づくで破り、正面からウルヴァリンを圧倒する様はまるで修羅の様だ。だが、怒りの感情にのまれながらも心にはまだ冷静な感情が残っていたようだ。キャプテンアメリカの「命令」にはすぐさまに従ったフランクは拳を下ろし、マリアの元へ向かう。

「退がれ、海兵。君の戦争は終了した。」“憧れ”のヒーローから命令を受諾したフランクは、命令通りに引き下がる。スティーブは大人しく自分たちに付いて来い、て意味合いで命令したと思うが…。言外の意味なんてフランクがくみ取る訳ない。

当然アベンジャーズはフランクを見逃す筈もなく。空を飛ぶフランクをストレンジが魔法の斧を持って強襲し、地面に叩きつけられれば今度はブラックウィドウとムーンナイトの波状攻撃の嵐が降りかかる。彼らは口々にフランクに目を覚ませ、と言う。「ビースト」の力で与えられた希望などまやかしに過ぎない、お前が必死に守る妻こそがお前の目を曇らせている最大の元凶なのだ、と。

そうまで言われればフランクも黙ってアベンジャーズを見逃す訳にはいかなくなる。妻を守るのが夫の仕事。家族の幸せを掴むのを邪魔するなら大人しくしてもらうまでだ。

ヒーローたちの猛攻を受けながらも孤軍奮闘するフランク。彼らを打ち倒さなければ「家」には帰れそうにない。ならば、取るべき手段はただ1つだ。

 

「ビースト」が齎す赤黒き炎を纏い、5人の超人たち相手に渡りあうフランク。その姿を呪術を用いて見物していた司祭は「最後」の賭けに出た。ここでフランクが「キング・オブ・キラーズ」としてアベンジャーズを殺害すれば、一度は失敗した作戦も今度は成功するのだから。だが、司祭の目論見はまたしてもマリアの手で破綻してしまう。

マリアは夫が自分に隠していた秘密を知ってしまった。フランクはマリアのために2人の子供たちを蘇らせようとしてきたが、それは全て失敗に終わっていた。そして生み出された「失敗作」を例外なく切り捨て、丁重に葬っていたのだ。幾つも並ぶ墓標の数が、フランクの「罪」を証明する動かぬ証拠。

愛する子供たちの名が刻まれた無数の墓標を見たショックで、マリアはここに来て漸く霞が掛かっていた記憶を全て取り戻す。そうしてマリアが真っ先に取った行動は、夫の「パニッシャー」としての所業を知ることだった。ザ・ハンドのニンジャたちが口々にフランクを称える際に呼ぶパニッシャーの名前、マリアはフランクが何故そう呼ばれているのかを知らずにいた。1人の男が愛する妻子を奪われたことで、全ての悪を抹殺する私刑執行人となったことをマリアは知ってしまった。彼女が見たパニッシャーの戦果は、夫が自分の希望を最低の形で踏み躙ったことを突きつけていた。

「OUR NAMES」その中にフランクは含まれてはいない。フランクはマリアとリサとフランクjr、3人の「死」を言い訳に使って周りに「死」を齎した。

 

マリアはフランクに真っ当な人生を歩んで欲しかった。学生時代に出会い恋に落ち、夫婦となりやがて子供を持つようになった2人。その中で妻は夫が抱える「闇」を知り、少しでも「光」を与えようと努力を続けてきた。だが、マリアが努力すればする程にフランクの「闇」は増大していく。それどころかフランクの方から己の「闇」に近付こうとしている有様だった。「生」が与えらればそれ以上の「死」を欲する、前号にて描かれたマリアに内緒で死刑場に足を運ぶ様には流石の管理人も引いたものだ。そしてそれはマリアも同様だったようで、彼女はいつしか限界を感じるようになっていた。フランクを支えることはもうできない、と。

彼女の諦めと絶望の結果が「かつてのパニッシャー」の戦果だ。モニター室に映し出されるパニッシャーの殺しの風景が、マリアに突き付けられる。そうなってはマリアの怒りの矛先が誰に向くのかは決まっているだろう。

そんな妻の変化など露とも気付かないフランクは、強まるアベンジャーズの攻勢を受けながらひたすらに妻の元へと向かっていた。流石に多勢に無勢と言うべきか、いやさこの場合は守る者が出来たもの特有の弱さが齎した結果と言うべきかフランクはアベンジャーズに押されていたのだ。早くマリアの元に帰りたい、今のフランクの頭の中はそれで一杯なのだから。フランクの胸中にも、きっとあの日のピクニックでマリアが切り出そうとした話がフラッシュバックしていただろう。早く、早く帰らなければ今度こそマリアが自分の元から離れてしまう。残念ながら、フランクの心配は的中していた。それも最悪な形で。

必死に走り続け、血反吐を吐こうとも前進することを止めないフランク。哀れな男が描かれる中、マリアの回想として描かれるあの日の事件。今シリーズではパニッシャーのオリジンに大胆な追加・変更がされてきたが、一番の衝撃はここだろう。

 

 

そうしてザ・ハンドのアジトに辿り着いたフランクを出迎えるマリア。彼女を見たフランクの第一声は「仕事は終わった、家に帰ってきた」だった。フランクがそう言うのは当然だろう。彼からすればこの戦いでのゴール地点はここなのだから。だが、マリアにとってはそうではない。全ての真相を知ってしまえば、もうフランクの傍に居ることも、フランクの「家」であり続けることなどできる筈もない。

マリアがフランクを待っていた理由。それはフランクに報いを与えるため。「パニッシャー」としての業を払わせるためだ。

生前マリアはフランクから銃の扱いを教えてもらっていた。「パニッシャー」のシンボルマークが描かれた銃で、フランクを撃ち抜くマリアの姿に躊躇いはない。一発目は自分の分、トドメの一発は子供たちの分だ。

次号、パニッシャー誌最終号。引き裂かれたフランクとマリアの行く末はどうなってしまうのか…。