[アメコミ]LAGIAの趣味部屋[アメトイ]

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アメコミ:PUNISHER(2022)#10

ザ・ハンドの王として世界中の武力を排除して回るパニッシャー

そんな王の帰りを待つ妻は、王が隠していた所業を知ってしまう…。

 

 

前回はこちらから↓

 

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【あらすじ】

アレスを下した今、もはやザ・ハンドの快進撃を止めることは何人も叶わない。邪悪なニンジャ軍団は怒りと義憤の炎を燃やす最強の私刑執行人に率いられ、世界中の犯罪組織を襲撃し、血で染め上げていた。

「ビースト」が齎す炎の輝きが増す度にフランクの殺人衝動はどんどん強まっていく。1人の悪党の首を落とせば、また次の悪党を探す。次の戦場へ、次の次の戦場へ。赤黒き炎を宿しながらパニッシャーは今日も戦場をさすらう。妻に「ただいま」と言える日まで。

悪党がシャバの空気を吸うことはもうない。全ての争いの元を根絶してやる。

それが「パニッシャー」の決定事項だ。

【Bride of the PUNISHER】

前号にて遂にアレスを下したフランク。小うるさい司祭も黙らせたことで、煩わしかった他者が押し付けてくる「パニッシャー像」も消えた。自身の在り方を再認識、確定させたフランクは「ビースト」の力を振るって私刑を執り行っていく。赤黒き炎は超常の力をフランクに与え、常人を遥かに上回る怪力と自在に空を飛ぶ能力を得たフランクの攻勢を止めることは誰にも叶わなかった。

人目のつかない洞窟に立てこもろうが、空の上だろうが、海上に浮かぶ客船だろうが今のパニッシャーから逃れることは不可能だ。

何処に逃げようがパニッシャーは必ず見つけ出し、追い詰め、息の音を止める。安全な場所など何処にもないぞ。

地球上に蔓延るあらゆる「悪」を根絶すべく、西に東に世界中を飛び回るフランク。ひとたび彼が往けば、そこは阿鼻叫喚の戦場へと早変わり。怪しく光る刀は悪党の血に濡れ、足元には物言わぬ死体が転がるのみ。戦場から戦場へと転々としながら血で染め上げていく姿は、まさにザ・ハンドの王即ち殺しの達人と呼ぶに相応しい。ニンジャたちもただただ主君の快進撃を頭を垂れて歓迎するのみだ。

しかし、ただ1人だけ王の仕事に不満を抱く者がいた。マリア・キャッスル。フランクの妻である彼女は、未だに自分がどうしてザ・ハンドのアジトに匿われているのかフランクから教えてもらっていなかった。記憶も朧気で、最愛の子供たちの所在も分からない。ただフランクの妻だから、という理由だけで何不自由ない生活を過ごす。そんな日常を送るにつれてマリアの不満は募り、やがて状況を打開すべく行動を起こしたのだ。ザ・ハンドの司祭に取って変わって夫の隣に立つ。そして彼から子供たちの居所を聞き出し、4人で家に帰るために。なかなか大胆な行動だが、司祭も見抜けなかったマリアの行動力の高さは流石は「あの」フランクの妻なだけはある。狂人を愛した女もまた、どこか狂っていたのかもしれない。

邪神から凄まじき力を与えられたフランクだが、夫は一向に子供たちをマリアに「返そう」とはしない。少しづつ記憶を取り戻しつつあったマリアは、司祭に詰め寄り子供たちの居所を聞き出そうとする。司祭も女王の権威には逆らえない様子だが…。

 

これまで描かれてきたマリア・キャッスルから見たフランク・キャッスルの異常性。アメリカ軍の兵士として(フランク「海兵だ」)戦地に赴き、帰ってきてみれば頭の中は常に殺しのことで一杯。一方でマリアと2人の子供たちへの確かな愛情と他者を傷付ける悪を許さない義憤の心も持ち続けている、という危うい精神状態だったフランク。そんなフランクにマリアはずっと付き添い続けた。マリアはフランクの裏の顔を知らない。少年の頃から自分でも抑えられない暴力性を抱えて生きたフランクの闇は深く、その闇は大人になっても消えることはなかった。

その闇を薄々と感付きつつあったマリアは、少しでも真っ当な生きる糧を与えようと努力してきた。家族と共にいる時間を作り、夜を共にし、フランクの心を蝕む闇を払おうとしてきた。しかし、マリアの願いも虚しくフランクの闇は日増しに増幅されていった。その闇は現在もフランクの心を蝕んでいる。愛と義憤の心を、殺意という赤黒き炎で染め上げながら。それを実感したマリアは夫に、仕事が終わるまで家に帰るなと告げる。仕事が終わる時がフランクの闇が晴れる時だと一抹の望みを託して。

再び描かれたマリアの過去。そこではマリアに嘘をついてまで死刑囚の死刑を見に行くフランクの姿が。「生」に溢れる程に比例して「死」を求める、とでも言うのか。

この破綻した精神に、司祭は目を付けた。この男こそ自分たちの王として、「ビースト」の力を振るうに相応しいと。だからわざわざマリアを蘇らせてまでフランクを迎え入れた。「ビースト」は死を、それも大量の死を求める。大飯食らいの邪神の腹を満たすことができるのは、生きながらに死をまき散らすことができる「キング・オブ・キラーズ」だけなのだ。フランクから溢れる炎は、フランク自身の闇を増大させ、同時に彼が心の内で隠していた罪悪感も引きずりだしていた。悪党を殺せば殺す程に増していく殺意。日増しに強まっていく罪悪感をも飲み込む憤怒の感情。負の感情のスパイラルに取り込まれたフランクの姿は、司祭からみれば滑稽でかつ目論見通りなものだった。これこそザ・ハンドの真の目的だったのだ。

悪党が異形の怪物に見えてしまう程に「ビースト」の炎に囚われてしまうフランク。容赦なく始末していくフランクだが、子供の姿を見て一瞬我に帰る。司祭の言う通り、刀を振れば全て終わるが…。

フランクが躊躇したのはこの子供が知り合いのガキだから、とかそんな理由ではない。彼は自らの子供を刀で切っている。リサとフランクjr、化け物として蘇った2人の我が子を自らの手で引導を渡したフランクにとって、子殺しは殺意の炎が掻き消えてしまう程のトラウマを与えていたのだ。フランクは眼前の少年を逃がすことにした。冷静になったフランクは家で待つマリアの元へ帰る決意を固める。仕事は終わったのだ。

再び挫かれた司祭の野望。王の心変わりを止める者はニンジャたちの中には誰もいない。王が帰ると言ったのだから、それが正しいのだ。

 

危ないロードをひたすらに走り続けたフランクだがこれで一件落着…、とはならない。仕事はまだ終わってなどいないのだ。2人の子供たちを殺し「続けた」罪をマリアに知られては。

アジト内の一室に足を運んだマリアが見たのは夥しい数の墓標たち。そこに刻まれた名はリサとフランクjrのもの。フランクは最初に蘇らせることに失敗した後も、ずっと繰り返していたのだ。妻のために、と言い訳をしながら「生」を与えるために「死」を求めたのだ。夫の凶行を察したマリアは1人悲痛な叫びをあげることしかできない。望みは最悪の形で裏切られた。

そして、同じ頃フランクの元にアベンジャーズが駆け付ける。変わり果てたパニッシャーを止めるために。