子供たちを蘇らせるために魔道に堕ちる決意を固めるパニッシャー。
そんな彼を“救う”ために戦いの神が動き出す…。
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【あらすじ】
ザ・ハンドの王、最強の私刑執行人として今日も今日とて捕らえた悪党ども処刑して回るパニッシャー。そんな時、アポストル・オブ・ウォーを追っていたニンジャ部隊が帰還する。部下たちはアポストル・オブ・ウォーの本拠地を突き止めた。しかし、彼らの多くはアレスの手で殺された挙句、自分に従うよう強要してきたのだという。
豪胆かつザ・ハンドの掟を侮辱するアレスと、そんな異教の神に打ち倒された不甲斐ないニンジャたちに怒りを爆発させた祭司は彼らに自害するよう命令を下す。しかし、当のパニッシャーはそうは思ってはいなかった。
【The Way of The PUNISHER】
前号にて妻マリアが錯乱したことを機に、ザ・ハンドの神“ビースト”に膝をつくことになったパニッシャー。ザ・ハンドには死者を蘇らせる技術がある。その術を行使することで子供たちは蘇る。そうすればマリアの精神は安定し、フランクの傍から離れようとはしないだろう。全ては妻子のため。フランクの行動には、その根底に家族への不器用ながらも確かな愛情がある。
しかし、それは本当に正しい行いなのだろうか。死者を外法を用いて蘇らせることは、死者を冒涜することにはならないのか。何よりもフランク・キャッスルがこれまでパニッシャーとして歩んできた血塗られた道を否定することに繋がることなのではないか。
この疑問を真っ先にパニッシャーに突き付けたのがアポストル・オブ・ウォーの指導者であるアレスだ。オリンポスの神々の1人であり、戦争・闘争あらゆる戦いを司る軍神は世界に調和を齎すために、テロ組織や紛争地域に強力な武器を送り、戦いを激化させていた。一見するとこれのどこに調和を齎す要素があるのかと考えてしまうが、戦争を起こすことで増えすぎた人間の数を間引く、弱者にも人間が元来から持つ闘争心を目覚めさせることで圧制を強いる者たちを打倒する切っ掛けに繋がることは、確かに調和と言えなくもないのかもしれない。この苛烈ながらも芯には確かな理念がある振る舞いにアポストル・オブ・ウォーの信徒たちもまた、アレスに付き従っていた。
アレスはパニッシャー、フランク・キャッスルを高く評価していた。パニッシャーを己の信念が作り上げた芸術とまで言い切るアレス。戦いを司るアレスから見て、パニッシャーは理想的な戦士の在り方の1つだったのだ。凄惨な戦争を経験し、壊れた心を家族への愛情で繋ぎ止めていた男が、家族を失ったことで最強の処刑人と化した。その悲劇性とカタルシスを齎したのは、自分なのだとアレスは自負していた。
その自負をザ・ハンドは否定した。フランク・キャッスルは戦争に赴く前よりずっと前に、既にパニッシャーだったのだとアレスに突き付けたのだ。誇り高く、自身の信徒には絶対な信頼を置くアレスにはこの事実は認められるものではない。
だから、パニッシャーに挑戦状を叩きつけたのだ。捕虜の信仰を否定した上で、ザ・ハンドの本拠地に返したのもフランクに自分の意思に気付いて欲しかったからだろう。お前を作ったのはザ・ハンドの胡散臭いオカルトなどではない。
アレスとザ・ハンド。二つの勢力は共にパニッシャーを求めるが、戦況はザ・ハンドが優勢だと言わざるを得ないだろう。既にマリア・キャッスルというフランクが最も愛する女を抱えるザ・ハンドにフランクが身を寄せるのは当然の帰結だ。アレスがパニッシャーを取り返そうとするということは、蘇ったマリアの運命も自ずと決まることに繋がる。
しかし、今のフランクではアレスには太刀打ちできないことは司祭も理解していた。フランクは“ビースト”に膝を突いたが、真に信仰をしているかというとそうではないだろう。だからこそ、いち早く神の力を受け入れてもらわなければならない。たとえどんな手段を使ってでも。
捕虜となっていたニンジャたちが帰還した翌日、早速アポストル・オブ・ウォーの拠点に向かうべく出発の準備をするパニッシャー。そんな彼をマリアは引き留めようとするものの、フランクは聞く耳を持たない。マリアの不安を取り払うことができるのは、夫である自分だけなのだから。“仕事”に出かけるフランクを見送るマリアの目には、夫が戦地に赴くように見えていた。
準備を整えた王の出陣を待っていた司祭は、件のニンジャたちをパニッシャー直轄の私兵として使って欲しいと申し出る。彼らは、そして司祭もパニッシャーの在り方を理解することが出来たと言う。司祭の発言に眉をひそめるフランクだが…。