リーバーマン、そして亡き妻の面影を残す正体不明の襲撃者を追うパニッシャー。
処刑の果てに待ち受けるものとは一体?
前回はこちらから↓
【あらすじ】
ヘンリーが怨敵ジグソーに懐柔された。ジグソーはパニッシャーへの復讐を果たすためには手段を選ばない。息子を利用し、宿敵の元相棒を攫い、着々と準備を進めてきた。そして宿敵を打倒する最後のカードを切ろうとしていたのだ。
一方でジグソーの思惑など全く知らないパニッシャーは独り、リーバーマンと謎の女を追っていた。この事件の背後に誰がいようとフランクには関係のないことだ。最終的に全員殺せば済む話だから。だが、フランクの脳裏には自らの手で引導を渡した妻マリアと子供たちの幻影が付き纏っていた。妻と同じ声を発する襲撃者。彼女の足取りを追うパニッシャーだったが、それがジグソーの仕掛けた罠だったとは…。
【罠】
自分のパニッシャーとして突き進んできた道と信条を守るために、悪党の手で蘇ろうとしていた妻子を殺したフランク・キャッスル。フランクはあの日から、妻子を殺めた悪夢を見続けていた。炎に焼かれ、消し炭となる家族の姿はフランクにとってトラウマとなるのも無理はない。その悪夢が形を変えて、フランクの前に立ちはだかったのだ。
フランクの前に何度か現れた襲撃者は全身をラバースーツで覆い、僅かに見える肌はまるで炎に焼かれたかのように焼け爛れていた。フランクを狙い、まるで挑発するように姿を消す。マリア・キャッスルの声でフランクに向けて呪詛の言葉を残した女の存在は、フランクにとっては正に悪夢だ。冷徹に悪党たちを処刑していきながらも、必死にマリアの筈がないと信じ込もうとするフランク。女の存在は、フランクを追い詰めるのには適役だった。常に付き纏う疑念はやがてフランクの精神を蝕み、いつかのように全ての悪党を根絶やしにしようとするまでに殺意を高めてしまう。その悪党にはリーバーマンもヘンリーも含まれていた。暴走していく宿敵の姿はジグソーにとっては、酒の肴には丁度よかっただろう。
そう、襲撃者“マリア・キャッスル”はジグソーの手先だったのだ。自分を殺した夫を恨んだマリアは、ジグソーに取り入って彼らの味方になったというのか。アジトに備えたモニターに映るパニッシャーを見て、愉悦に浸るジグソーとマリア、そしてスチュアート。酒を呷り、ドラッグに興じる姿には嫌悪感を覚える…。
そうとは知らずに襲撃者の足取りを追うパニッシャー。何人もの悪党たちを血祭りにあげて、少しずつ情報を集めたパニッシャーはあるバーに足を運ぶ。漸く事件の背後にジグソーの思惑が絡んでいることを知ったパニッシャーはギャングたち御用達のバーでなら、襲撃者とリーバーマン、そしてジグソーの行方を掴めるかもしれないと考えたのだ。そこでフランクも、襲撃者の正体を知ってしまう。
激情に駆られ、ギャングを撃ち殺すパニッシャー。しかし、怒りで感情を支配されても、バーカウンターで潜んでいた男が逃げ出した音を聞き逃すようなミスはしない。バーのマスターも、裏方の従業員も全員がジグソーの息のかかった者たちだ。そんな連中を生かしておく理由はない。血祭に上げ、残った奴にはジグソーの居所を吐かせる。いつものことを行っただけだが、この一連のシーンはフランクの尋常じゃない怒りの感情を表してかスピーディーかつ容赦のない処刑・拷問が描かれているのがポイント高い。
拷問した男からジグソーのアジトの場所を吐かせたパニッシャーは、早速襲撃をかける。誰の目にも気づかれることなく、護衛たちを1人1人始末していく。そんなパニッシャーの前に現れたのは、喧嘩別れをしたばかりのヘンリーだった。何故お前がここにいる、お前の復讐はどうしたと銃を向けるパニッシャーだが、引き金を引くことができない。激情に駆られ、ヘンリーを含む仲間たちまで始末しようとしたパニッシャーだが、やはり当人の前ではそれはできないようだ。ヘンリーはリーバーマンとは違い、何も悪事を働いていないのだから尚更だ。「俺にお前を殺させるのが望みか!?」これもまたフランクの人間性を感じさせる。
しかし、これこそがジグソーが仕掛けた罠だ。フランクは完全にヘンリーを信用しているが、当のヘンリーはフランクに対して敵意を抱いてしまっている。ジグソーに与してしまった今、自分もまたパニッシャーが処刑する悪人の一人に過ぎないという強迫観念に迫られてしまったヘンリーに、フランクの声は届かない。
部屋に仕掛けた電気ショックのスイッチを起動したヘンリーの元に、件のジグソーが“父親”として息子を労う。もう大丈夫だ、と。邪悪に笑う顔をヘンリーには見せず、電気ショックを受けて意識を手放そうとするフランクには見せつけるジグソーは、まさに“悪魔”のそれだ。この男を倒すには、ヘンリーを何とか説得して和解しなければならないか…。