帰省したヘンリーを出迎えるジグソー。
卑劣な手段を取ることも厭わない男は、息子をパニッシャーから護ろうとするが…。
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【あらすじ】
パニッシャーと口論の末に喧嘩別れを起こし、独り母の待つ実家へ帰省したヘンリー・ルッソ。そんなヘンリーを待っていたのは父親であり、怨敵であるジグソーことビリー・ルッソ。ジグソーは相棒のスチュアートと共に息子をパニッシャーから護るためにやってきたと言う。父親の言うことを信じられず、銃を向けるヘンリーだが…。
【疑念】
息子がパニッシャーの元から、自分の元に帰ってきた。ジグソーはヘンリーが宿敵の下で“マイクロチップ”として活動していたことを知っていた。当然、息子が自分に対して激しい怒りと憎悪の感情を向けていることも、だ。にも関わらずジグソーはそのままヘンリーを泳がせていた。それは出来の悪い息子を見捨てたのではなく、ジグソーなりの親心であり、同時にパニッシャーへの復讐に“息子が抱く自分への復讐心”が使えると判断したからだった。
幼少期のヘンリーはジグソーから虐待同然の教育を受け、憎悪を植え付けられてきたが、その甲斐あってかヘンリーは父も一目置く程のハッキングスキルを学んだ。加えて目的を果たすためなら、手段も厭わないしたたかさも身に着けた。ヘンリーがパニッシャーにコンタクトが取れたのも全ては親父への復讐心が成せたことだ。そして、ヘンリーはフランク・キャッスルからある程度の信頼を勝ち取ることができた。他人に心を開かず、近づけようとしないフランクがヘンリーを仲間に迎えているのが、彼のスキルを認めているからであり、彼を頼りにしていることに他ならない。
そんな“偉業”を成し遂げたヘンリーだが、フランクは行方が分からなくなっていたリーバーマンを探すことを優先するために、彼の元を離れてしまった。これによりジグソーの息子であるヘンリーもまた、パニッシャーの“リスト”に加えられてしまった、とジグソーは語る。パニッシャーから己の身を守るには、自分と組む他ない、と。
ヘンリーがジグソーに向けた憎悪は、逆に言えば親からの愛情に飢えていたことになる。自分を愛してくれているにも関わらず、父親の暴力を止めず日和見を決め込んだ母親。息子を鍛えようとし、暴力を振るった父親。ヘンリーからすれば皆揃ってクソッタレだ。出来る事なら他人でいたいくらいだろう。しかし、こんなのでも親であることに変わりはない。そして父親が自分の力を頼りにし、自分を護ろうとしている。ジグソーの熱の籠った説得にヘンリーが首を縦に振るのも自然な流れだろう。
パニッシャーとヘンリーが仲違いをする一因となったリーバーマンの失踪。リーバーマンを攫った犯人は、やはりジグソーだった。ジグソーは過去にパニッシャーとリーバーマンの間で何が起きていたかも知っていた。リーバーマンを餌にすれば、パニッシャーは必ず動く筈だと踏んでいたのだろうが、その目論見は的中したと言える。
着々とパニッシャーを迎え撃つ準備を進めるジグソー。彼の手元には人質のリーバーマン、そして頼れる相棒に息子と万全の体制を築きつつあった。一方で当のパニッシャーはひたすらに麻薬製造人やそのバイヤー、ギャングにチンピラ、強盗を処刑して回っていた。彼らはリーバーマンのことは何も知らなかった。無軌道に殺害して回るパニッシャーだが、それだけフランクが焦っていたことを表しているかのようだ。それにフランクを悩ませている原因は“マイクロチップ”たちだけでなく、先日フランクを襲った謎の女にもあった。全身をラバースーツで覆った女の声は、フランクにとってあまりにも聞き馴染みのある声だったからだ。2度と聞くことのない声を、あの女は発していた。
そして、その女は再びパニッシャーの前に現れる。女の存在はフランクの心をかき乱す。何故あいつから妻の声が聞こえるのだ。