ヘルズガードとの戦いを制し、モンスター・メトロポリスに帰還したパニッシャー。
彼が向かう次の戦場は何処にある?
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【あらすじ】
ヘルズガードやヤマトたちハンターを打ち倒し、モンスターたちを護り抜いたパニッシャー。彼はモンスターに恩人として迎え入れられ、モービウスの手で取り返したブラッドジェムをボディに移植され、力を増していった。ブラッドジェムの効果でボロボロになった身体と精神を修復していくパニッシャー。人の目もつかないモンスター・メトロポリスで過ごすことも悪くないと考え始めるフランクだが…。
【再起】
前号までのハンターたちとの生き残りをかけた激しい戦いの結果は、不死の体を持つパニッシャーを以てしてもギリギリの勝利だった。ハンターの首領ヘルズガードとの死闘を制したのはよかったが、その代償にパニッシャーも決して無視できないダメージを負ってしまった。機械仕掛けの腕はちぎれ賭けているわ、胴体は引き裂かれるわ、首には刺し傷がいくつもあるわで常人ならとっくに殺されている筈のダメージだ。おまけに不完全な施術をそのままにし、安定剤で誤魔化していた精神の破綻も露になり始めており、このまま放置していれば取り返しのつかないことになるのは誰の目にも明らかだった。
命の恩人をこのまま死なせるわけにはいかない。モンスターたちは皆そう思っていた。フランク・キャッスルは無理やり生き返らされたにも関わらず“パニッシャー”としてハンターたちと戦ってくれたのだから。そんな男を死なせないためならば、魔石を与えるのも抵抗はない。モービウスとリビングマミーが施した手術のお陰でフランクは命を永らえることになった。こんなに気のいい連中はいない。目覚めたフランクがモンスター・メトロポリスで楽しく生活するのも悪くないのでないか、と考えるのも当然の帰結だろう。
しかし、そんなフランクに待ったをかける男がいた。ヘンリー・ルッソ、ジグソーの息子であり、父に復讐心を向ける男。彼がパニッシャーに味方をするのは、父をはじめとした街に蔓延る悪党共を全て打ち倒すためだ。ヘンリーには彼らと正面から戦えるだけの力はない。だからパニッシャーにコンタクトを取り、何度も突き放されても諦めずに着いてきたのだ。そんなヘンリーには、今のパニッシャーは腑抜けに見えたことだろう。あの誰よりも恐ろしく、そして頼もしい最強の私刑執行人が本来の戦場から遠ざかろうとしていたのだから。パニッシャーがいるべき場所は地下などではない。懇願すると同時に怒りをぶつける“マイクロチップ”にフランクは、己の為すべきことを再確認するべく地上へ出ることを決意する。
すっかり日が暮れ、夜の闇に包まれる中フランクが向かったのは家族が眠って“いた”墓地。ザ・フッドとリーバーマンらの手で墓を暴かれ、家族の遺体は持ち出され、そしてフランク自らの手で引導を渡した。あの日の出来事は今でも夢に見る。家族を殺しておきながら、自分は生き返った。無かったことにはできない重すぎる十字架を背負う機械仕掛けのフランクの背には悲愴と、そして悪党たちと自分への憤怒の感情が渦巻いているようだ。フランクの地上での戦いはまだ終わっていなかったのだ。
フランクがモンスターたちと地下で暮らしている間にもニューヨークには悪党どもが幅を効かせ、勢力を拡大させていた。もはやフランクの胸中にはモンスター・メトロポリスでの安息を求める考えは一片たりともない。この街には“パニッシャー”が必要なのだから。異形の姿となりながらも再起を果たしたパニッシャーは準備を整え、再び地上へ向かうのだった…。