ザ・フッドの首を取れ!
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【あらすじ】
悪党の手で善良な人々の血が流れる街、ニューヨーク。この街は今やグリーンゴブリンことノーマン・オズボーンの支配下にあった。ノーマンの息のかかったギャングやマフィアたちが市民に気づかれないように着々と支配力を強めてきた。ギャングを纏めるザ・フッドもその1人だ。
今夜、フッドの首を取る。スーパーヒーローの強力な武器を手に入れたパニッシャーが裁きを下すだろう…。
【ONE WAY STREET】
ヘンリーが入手した情報を頼りにフッドのアジトを特定、ピザの配達員に成りすましてアジトに突入、フッドの手下たちを片っ端から撃ち倒していくパニッシャー。
その暴れぷりは今シリーズ中でもずば抜けていると言えるだろう。何せ今のパニッシャーが身に付けた武器は最強のスーパーヒーローチーム“アベンジャーズ”のメンバーの装備なのだから。
自身の身体を収縮するピム粒子を制御するアントマンのヘルメット、アイアンマンのリパルサーブラスト、キャプテンアメリカのそれを模した盾、それにヘンリーが調達・改良した各種武器群、これらの殺傷力抜群の兵器を駆使してアジト内を爆発、火の海にしていくのだ。パニッシャーに対峙した連中には同情するが、ヒーローたちが絶対にやらない手段で悪党を倒していくパニッシャーの姿に胸が熱くなる。
パニッシャーはどんな手段を使ってでも悪を倒す。不意打ちをしてでも他人の装備を拝借してでも、自身の怒りの炎がパニッシャーに無限のパワーを与える。愛する家族を失った永遠に癒えない悲しみと家族を奪った悪そのものに対する憎悪の念がフランクにそうさせるのだ。
その意志はかつての仲間にも向けられる。
初代マイクロチップことデイヴィッド・リーバーマン。彼はフランク同様に家族をギャングに奪われた為に、復讐の念を晴らす為にフランクに協力した男。だが、とある事件を機に2人は決裂、結果的にマイクロはかつてのパートナーだったパニッシャーの手で引導を渡された、筈だった。
その男が再びパニッシャーの前に現れる。マイクロは死んだ、と冷徹な顔を崩さないフランクだが心中では違っただろう。自らの手で殺めた男が生前と変わらない姿で現れたのだから、そして今のマイクロはフッドの手下となっていたのだから。マイクロがフッドに協力しているのは自分を蘇らせてくれたからだけではない。失った妻子も蘇らせてくれるからだ。家族への情が深かったが故に悪と戦った男が、今度は悪に味方するようになっていた。この現実はフランクに深い失望と、絶望を与えただろう。自分がマイクロの立場になっていたら、フランク・キャッスルはどうするのか。
お前も妻子を蘇らせてもらえ、マイクロの甘言を跳ね除けるフランクだが、内心は穏やかではないだろう。
妻子が甦える、生前と同じ姿で。それはフランクにとっては何よりも望んでいることだろう。フランクは以前にも(そして後々にも)妻子を蘇らせてやると言われ、悪に与したことがあった。そしてその度に失敗に終わってきた。フランクの中の戦う意味が、それを許さない。失ったものは二度と帰ってこない。あの時、妻子が死んだ時にフランク・キャッスルの何かも死んだのだ。ここに立っているのは“私刑執行人”パニッシャー。パニッシャーの往く道はこれだけだ。
フッドのアジトは街中のど真ん中にあり、それが一夜の内に跡形もなく吹き飛んだ。このニュースは大きく取り上げられ、ノーマン・オズボーンの耳にも届いてしまう。
自分が支配する街に未だに自身の命を狙う反逆者が生きていて、手下は誰もパニッシャーを倒せていない。パニッシャーの存在はノーマンにとっても大きな悩みの種だ。同時にフッドにとってもそうだ。このままパニッシャー抹殺にてこずっていては、こちらがノーマンに消されてしまう。手段を選んでいる時ではない。