[アメコミ]LAGIAの趣味部屋[アメトイ]

アメコミ、アメトイに関して語るブログです。MARVELのダークヒーローやクライムファイター中心。

アメコミ:ゴーストライダー:破滅への道

現代社会という名の地獄を彷徨う日本人よ。これが本当の地獄だ!!

 

 

というわけで、今回は翻訳版ゴーストライダー:破滅への道(原題:GHOST RIDER:THE ROAD TO DAMNATION)の解説だ。

キレッキレなサブタイトルと宣伝文句が目を引く本作は2005年から刊行されたマーベル・ナイツから発売されたミニシリーズだ。ライターはガース・エニス、作画をクレイトン・クレインが担当。両氏は本作の後にいくつかのゴーストライダー誌を担当して独特でかつクレイジーな物語を世に送り出してくれた、ゴーストライダーの活躍を語る上では外せない功労者たちだ。そして、そんな2人が描いた本作の主人公は初代ゴーストライダーこと、ジョニー・ブレイズ。地獄王メフィストと契約し、“復讐の精霊”をその身に宿したことで罪人たちとの戦いを強いられてきたジョニー。そんな彼が地獄の悪魔に加えて、天界の天使たちとも戦いを繰り広げることになったある意味、序章と言えるのが本作だ。

【あらすじ】

ゴーストライダーことジョニー・ブレイズは地獄に囚われていた。来る日も来る日も、毎晩のように地獄の悪魔たちから逃れようとバイクを走らせてきた。だが、結局地獄と現世を繋ぐ門には届かず、恐ろしい悪魔たちの手でズタズタに引き裂かれ、そして翌日には元通りの姿に戻される。再生と死を延々と繰り返されるという責め苦を味合わされるジョニーの精神は限界に達していた。

そんな彼の元に天使マラキが現れ、ジョニーに仕事を頼みこむ。仕事の内容は地上に逃げ出した悪魔カザンの討伐、報酬は地獄からの脱出とゴーストライダーの呪いから解放されること。文字通りの地獄から脱出するべく天使の言葉を信じたジョニーは、マラキが開いた門から久方ぶりの地上へ向かう。だが、カザンを追うのはジョニーだけではない、悪魔と天使双方からも追手が差し向けらていたのだった…。

終わらない罰を受け続けるジョニーの頭上に舞い降りたのは、“神”に仕える天使。
地獄を天界の光で照らす彼はジョニーの味方か、それとも…。
【破滅】

ゴーストライダーは悪魔が人間に取り憑いて力を振るう、言わば悪魔憑きだ。悪魔憑きは人の道から外れ、天からも見放されてしまう存在だ。冒頭からいきなり悪魔たちに追い回されるジョニーの姿から始まる本作では、ジョニーを助けようとする者は誰もいない。サイドキックとして共に戦ったダニー・ケッチも、師匠のような存在であるケアテイカーも、仲間のマイケル・バディリーノも妻のロクサーヌ・ブレイズも誰もジョニーに救いの手を伸ばさない。正確には救いの手を出せない、と言う方が正しいか。

ジョニーは養父クラッシュ・シンプソンを末期がんから救うためにメフィストと契約した。その契約によって養父はガンから救われたが、その代償として“復讐の精霊”ザラソスをその身に宿した。望んでいない復讐の戦いの果てに、彼はメフィストとの契約を破棄することを決心。ザラソスをシード・クリスタルに封じ込め、ロクサーヌと結ばれてゴーストライダーとしてではなくジョニー・ブレイズ個人としての幸せを掴んだ。しかし、何事もそう上手く話はいかない。

もう1人のゴーストライダーをその身に憑依させたダニーや、ザラソスに恨みの感情を抱くマイケル、ザラソスの正体を知るケアテイカーたちとの出会いが、幸せを掴んだジョニーを復讐の戦いへと続く道へ引きずり込んだ。その戦いの果てに、ブラックハートの手で“復讐の精霊”を再び植え付けられてしまったジョニー。ジョニーは以前と同じく、今度もこの復讐の戦いから逃げらると思っていただろう。だが、悪魔はそう甘くはない。度重なる契約の不履行に腹を立てた悪魔たちに、遂に地獄へと連れ去れてしまったのだ。今までのツケを纏めて返す時が来た、悪魔と契約することの恐ろしさを改めて思い知らされる。

天使たちが語るジョニーの人生の結末は、地獄逝き。
いくらゴーストライダーが強くても、地獄の悪魔には敵わない。

地獄に囚われてしまえば、そう易々とは助けだせない。ダニーやケアテイカーはジョニーが地獄に連れ去れてしまったことは知らなかっただろうが、知っていても何もできなかっただろう。悪魔から逃げ続けるジョニーに救いの手を差し出したのは、仲間たちではなく天使マラキ。悪魔とは敵対関係にある彼らは、自分たちの不手際を抹消すべくジョニーを利用しようとしたのだ。呪いからの解放という褒美をぶら下げて、心がすり減った男を弄ぶ姿は正直、悪魔と大差ないと思う。人間を神が造った創造物の中でも失敗作の部類であると考える天使の方が、悪魔よりも悪辣と言えるかもしれない。

とまあ、そんな天使の甘言に乗って数年ぶりの地上へと戻ってきたジョニー。広大なテキサスを駆け巡りながらカザンの居場所を探ろうとするジョニーの前に立ちふさがるのは、ジョニーと同じくカザンの討伐を依頼された飄々とした田舎っぺな悪魔ホスと寡黙で冷徹な天使ルツ。そしてカザンの信奉者である石油王グスタフや、“神”に仕える元殺し屋のアダム神父。それぞれの思惑がぶつかり合い、火花を散らし、時に共通の目的のために手を結んでは裏切り、と複雑に交錯していくストーリーが本作の見どころだろう。

カザンを探し当て、追い詰めたジョニーが知ったカザンの正体。呪いから救われたい一心から始まった戦いの果てに待ち受ける真実。それが後に彼が戦うことになる巨悪と関わり、破滅へと追いやることになるのはまた別の話だ。

テキサスの荒野で繰り広げられるゴーストライダーとホス、ルツの三つ巴の戦い。
そんな戦いに巻き込まれる人間たちにはちょっと同情する。