家族を、友を襲う吸血鬼たち。
受け継いだ血と技を以て悪鬼たちを叩き切れ!
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【あらすじ】
ブリエルたちの前に現れた光の正体は、サフランの乗る車のヘッドライトだった。フロストの元から何とか脱出したサフランは、ブリエルの身を案じて駆け付けてきたのだ。しかし、人質の逃走をみすみす見逃す吸血鬼はいない。サフランの往く先には、既にフロストが放った追手が待ち受けていた。
フロストの狙いはブリエルに流れる「デイウォーカー」の血。ブレイドを拘束した今、次に狙うのはブリッジだ。大切な人達を襲うフロストたちに対して、ブリエルの怒りは遂に爆発する。父から受け継いだ血と技を活かす時がやってきたのだ。
追手の正体は、やはり転校生のホイットニーだった。
何度もブリエルを襲い、挑発行為を繰り返したのも、主のフロストの命令があったからだったようだ。
【Resolution】
これまで父と母に守られる存在だったブリエルが、自らの大切な存在を護るために戦う覚悟を決めた。覚悟を決める切っ掛けとなったのは、他でもない母と友人たちの危機。これまでのブリエルは自分の中に流れる異形の血と力を恐れ、親しい者も作とうとはせず、他者と心の壁を作って生きてきた。同時に、あるがままの自分を受け入れてくれる存在と自分を導いてくれる存在を求める相反する思いを抱いてきた。鬱屈した日々を過ごしてきたブリエルだったが求める存在は待っているだけでは得られない。どんな機会であろうと、一歩踏み出す勇気がなければ手に入らない。
そして、ブリエルにもその機会が訪れた。ホイットニーはブリエルだけでなく、母たちにも襲い掛かってきた。彼女たちにとって必要なのは「デイウォーカー」の血のみ、他の存在は全て狩りの対象なのだ。そんな吸血鬼たちに味方するホイットニーは、フロストと敵対するブリエルを化け物と蔑むが、どの口がほざくのかと言いたくなる。主に盲信的に従う女の妄言など聞く必要はない。初めてホイットニーと戦った時は手も足も出なかったブリエルだが、今では簡単に退けることができる程に力量差がある。
ホイットニーが化け物と罵った力を以て、囚われた父を救うべく少女は駆ける。
怪我をした母を友人たちに任せ、ブリエルは気絶させたホイットニーを連れてフロストの元へ向かう。
しかし、囚われの身となっていた父は…。
家族を危機に陥れたフロストへの怒りか、それとも家族を守れなかった自分への怒りか、その両方か。怒りに我を忘れ、狂乱状態のブレイドは自らの牙と爪でフロストの配下たちを惨殺する。首元に牙を突き立て、引き裂く姿はまさしくモンスターのそれだ。そんなブレイドの様子を見て、フロストは増々邪悪に笑う。いくらヒーローとして戦っていても、結局ブレイドも自分たちと何ら変わることはない。家族なんて異形の自分たちにはちっぽけな存在に過ぎない。だからそんなモノに執着するお前は俺には勝てない。散々に罵倒するフロストは、暴れ回るブレイドの猛攻を退け、鎖で封じ込めてしまう。フロストにとって配下が殺されていく様子も、宿敵が自分の手のひらで踊る様も全てが自分の愉悦に過ぎないのだ。「デイウォーカー」の血を手に入れて完全な吸血鬼となり、件のデイウォーカーも膝まづかせる。
邪悪な欲望を剥き出しにしたフロストだが、そこにホイットニーを抱えたブリエルが現れる。ブリエルにはフロストの言うことは理解できなかった。家族を軽んじる癖に何故ホイットニーに戦う技術を授けたのか。しかし、フロストは事もなげに言う。そいつは俺の娘なんかじゃない、普通の人間がうやうやしくする様は滑稽だったぜ、と。
他者の思いを平然と踏みにじる真の悪を目の当たりにしたブリエル。愕然とするブリエルだが、そこに追い打ちをかけるようにフロストは狂乱状態のブレイドをけしかける。我を忘れたブレイドに娘を襲わせて、更なる愉悦を味わおうというのか。しかし、ブリエルは父に呼びかけ続ける。こんな卑劣な手を使う奴の思い通りには絶対させない。それはブレイドにとっても同じだ。娘の涙を受けて正気に戻ったブレイドは鎖を引きちぎり、愛刀を投げ渡す。家族の思いを込めた一撃をフロストにぶつけてやれ!
フロストを叩きのめしたブリエル。しかし、トドメを刺すことはできない。
非情になりきれない彼女を甘いと吐き捨てるフロスト。だが、心配無用。お前は授業の良い教材になってくれたよ。
数日後。全てが終わり、ブリエルに再びありふれた日常が訪れていた。ただし、その日常は今までと少し違っていた。友人たちと共にベースボールを楽しむブリエルに、娘を見守る両親。一歩を踏み出せた少女は、求めていた存在を手に入れることができたのだ。もうブリエルが寂しい思いをすることはないだろう。あるがままに生きる術を身に着けた彼女に大切な人たちがいる限り。
娘の成長が誇らしいブレイドに笑みが浮かぶ。ブリエルが“ブレイド”の名を継ぐのも、そう遠くない?