ディーケン・フロストに攫われた妻を救うべく夜の闇を駆けるブレイド。
家族の危機にブリエルが取れる選択は…。
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【あらすじ】
父との絆を深めたのも束の間、今度は母が姿を消した。家には荒らされた形跡と血に濡れた母のカバンが。最悪の光景を想像するブリエルだが、ブレイドの慰めで落ち着きを取り戻す。必ず母さんを連れて帰る、そう言い残し出て行ったブレイドだったがそれでもブリエルの心中は穏やかではない。何か自分にもできるのではないか、しかし、何ができるのか。
悩み、逡巡するブリエルだが、彼女の思いに関係なく闇の存在は着実にその手を伸ばしていた…。
【WONDER】
漸く出会うことができた父親との絆を深めたと思ったら、今度は母親が何者かに攫われてしまった。帰宅した2人を待っていたのは部屋中が荒らされていた跡と、血に濡れた装飾品や陶器類だけだった。ただ事ではない、涙を流しながら母の携帯に電話をかけるブリエルだが当然電話は繋がらない。悲観に暮れるブリエルだが、ブレイドだけは怒りを募らせ口元を歪める。部屋中に残った血の匂い、吸血鬼特有の匂いが満ちていたのだ。サフランを攫ったのは近頃出没していた吸血鬼たちで間違いない。そして奴らがサフランを攫ったのは、偏にブレイドとブリエルを誘き出す餌にするためだろう。奴らは常に「デイウォーカー」の血を求めているのだから。
サフランはもう助からないかもしれない。吸血鬼の恐ろしさを誰よりも知っているブレイドは最悪の結末を視野に入れながらも、奴らの足取りを追おうとする。だが、それはブリエルを独り残すことになる。精神の支えだった母が消息を絶ったことで不安に駆られるブリエルの姿は、普段のはねっかえりな態度とは全く違う。そんな娘にブレイドは約束する、必ず母さんを連れて帰ると。ブレイドは妻と娘を得てから、ずっと彼女たちのために戦ってきた。そんな男が約束を違える筈がない。
翌日からブリエルはいつも通りにハイスクールに通うようになっていた。母が攫われたという事実は伏せて、病気で寝込んでいることにして無用の混乱を持ち込まないようにして。学友たちとも普段通りに接そうと努めるブリエルだが、やはりその表情は暗い。更に畳みかけるように、ブリエルを殺そうとした転校生が母の携帯を持っていることを知ってしまう。何故ホイットニーが母の携帯を持っているのか、瞬時に怒りの感情に呑まれたブリエルは学内でホイットニーを叩きのめし、理由を聞き出そうとするが教師たちに阻まれてしまう。
人とは違う異形の血が半分流れているとはいえ、ブリエルはまだまだ子供だ。戦闘の経験なんて全くないし、ましてや自らの感情をコントロールすることもできない。自分にも母のために何かできるのではないかと考える彼女を、ブレイドが戦いから遠ざけたのは当然の判断だ。ブレイドだってまだまだ未熟な娘に危険な真似はさせたくないだろう。敵はブリエルを狙っているのだから尚更だ。しかし、父の思いとは裏腹に娘の迷いは増々強くなっていく。
人でありながら吸血鬼となり、野心に駆られ、吸血鬼を支配しようと企んだフロスト。フロストはずっと前にブレイドに倒された筈だが、新しい体を得て蘇った。長い潜伏期間を経て多くの配下を得たフロストの力は強大で、ブレイドも囚われの身となってしまう。そうして「デイウォーカー」の血を得ることで吸血鬼の弱点を克服した完全無欠の存在に成ろうとするが、ブレイドだけの血ではそれは叶わなかった。デイウォーカーの血の半分は娘に受け継がれているからだ。
フロストの次の目的はブリエルだ。このままではブリエルが危ない。フロストの一派に捕らわれながらも無事だったサフランは、一瞬の隙をついてブリエルの元に走る。サフランを追い、そしてブリエルの居場所を探ろうとするフロスト。当のブリエルは未だ迷いの中。
果たしてブリエルは迷いを振り払うことができるのか、それとも…。