血に刻まれた渇望に向き合い、制御する術を学べ。
ブリエルの前に現れたのは、ずっと会いたいと願っていた父親だった。
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【あらすじ】
クラスメートが仕掛けた罠にはまり、廃校に閉じ込められたブリエルはそこに住まうヴァンパイアの群れに襲われる。異形共の襲撃から必死に逃げ回るがブリエルだが、自身の体に起きていた異変、即ち血を求めるヴァンパイアの闘争本能にのまれてしまう。ブリエルを襲ったヴァンパイアたちは娘の危機に駆け付けたブレイドの手で駆除されたが、ブリエルはブレイドに襲い掛かってしまう。
寸でのところで血清を打たれたことで衝動が収まり、意識を失ったブリエルが目覚めたのは廃校での騒動から2日が過ぎた夜。娘の無事を喜ぶサフランは、ヴァンパイアに襲われたブリエルの身を守るべく夫に会わせるのだった…。
【MEET】
物心着く前には既にいなかった父親。ずっと会いたいと願いながらも、ソフトボールで遊ぶことも叶わなかった。その父親が自分と母の前に現れた。世界を護るスーパーヒーローチームであるアベンジャーズに所属し、人ならざる異形であるヴァンパイアを狩ることを使命に持つ男。それがブリエルが会いたいと願ってきた父親の正体だった。
突然の出会いと情報量の多さに呆気に取られ、混乱する様子を隠せないブリエル。目を覚ましてすぐにこんな話を聞かされたら、そうなるのも無理はない。そんな様子のブリエルを気遣うサフランは夫に直接話すよう言う。だが、肝心のブレイドも10数年ぶりに会う娘になんと声をかければいいか分からず、固まってしまう。夫の様子に呆れるサフランだが、こっちはこっちで無理もないだろう。
ブレイドが何故今になって自分の前に現れたのか、自分が何故ヴァンパイアに襲われるのか、ブリエルには聞きたいことが沢山ある。ブレイドは包み隠さず、娘に全てを話した。ブリエルは半ヴァンパイアである自分の血を継ぐデイ・ウォーカーであること。そしてブリエルの存在はヴァンパイアたちにとって脅威以外の何物でもなく抹殺対象であったこと。そんな娘を護るべくブレイドは愛する家族の元を離れ、たった一人でヴァンパイアたちと死闘を演じてきたこと。自分が留守の間はドクターストレンジに家族の安全を約束させ、彼の魔術を使ってブリエルたちを存在を知られないようにしていたこと。そんなストレンジも今はこの世におらず、魔術の効力が弱まったことでブリエルの存在がヴァンパイアたちに知られてしまったために、サフランがブレイドを呼び出したこと。
ブリエルも想像もしていなかった、いやさできなかったと言う方が正しいか、両親の壮絶な過去を知ってしまったブリエルは混乱しているようだが不思議とブレイドたちの話をすんなりと信じているようだった。自分と周囲に起きていた異変は本当のことだし、何よりも母が信頼を寄せる男が言うことなのだから信じられるということなのだろう。
それに自分がピンチになってもブレイドが助けてくれるのだから、あの転校生がまた襲ってきても安心だ。そう考えていたブリエルだが、そうは問屋が卸さない。ブレイドにはアベンジャーズのメンバーであり、今はドラキュラが治めるチェルノブイリを監視する任務を受けているのだから、付きっきりで守るのは不可能だった。
じゃあ私はどうすればいいのか、と憤慨するブリエルだがブレイドはブリエルを鍛えてやると言う。ブレイドが娘の元にやってきたのはただ助けるだけではなく、ヴァンパイアの危険性と弱点、そして身を守るための技術を伝授するためでもあったのだ。
こうして、ブレイドによるレクチャーが始まった。ヴァンパイアが巣食うバーにて繰り広げられるハンティングを陰から見て戦慄するブリエルに厳しく接したり、マンツーマン指導で直接格闘術を叩きこむのも、全ては愛する娘を護るために他ならない。心を鬼にするブレイド。そんな父に恐れるブリエルだったが、どこか楽しげな様子も見せていた。
幼少期の頃のブリエルは、人よりも優れた身体能力を持っていたために誰かと遊ぶこともできなかった。常に体力も気力も持て余していた彼女が、今は全力で体を動かせる。それもずっと会いたかった父親と、自分よりも遥かに強い父親とぶつかり合える。自分が望んでいたものとは違うものではあったが、父親に接することができたのはブリエルにとっては何よりも嬉しかったのだ。
ブレイドにとっても思っていたものとは違っていただろうが、ようやく父親らしいことができたことが嬉しかっただろう。軽口を叩きながらも懸命に特訓についていく娘を褒め、そして軽口で返す様子はまさに親子のそれ。特訓に刀を持ち出して実践形式でトレーニングをさせるのはやり過ぎな気がしなくもないが、それもまた娘に生きる術を教えたいブレイドの親心か。
しかし、父と娘が特訓に明け暮れて絆を深め合う間にも一家を狙うヴァンパイアたちの攻勢は勢いを増していく。その牙はサフランにも向けられてしまうのだった…。