[アメコミ]LAGIAの趣味部屋[アメトイ]

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アメコミ:THE SAVAGE AXE OF ARES(2010)#1

その男、獰猛な蛮勇か。はたまた偉大な戦士か。

戦いの神の知られざる姿がベールを脱ぐ!

 

 

【あらすじ】

オリンポス神の一柱にして戦いの神であるアレス。調和を是とするアレスは己の持つ神性を尊び、それに恥じない戦士たらんと武器を振るい続けた。しかし、アレスには自分でも抑えられない殺意の炎が渦巻いており、それを自身が成す偉業に利用した。

アレスが往く道は常に血で濡れていた。太古の昔からそんな生き方しかできなかった男の在り方を、蛮勇と蔑むか英雄と称えるかは彼と対面した者にしかできない。これはそんなアレスに窮地を救われた戦士たちの物語だ。

古代ローマにて囚われの身となっても、現代にて兵士たちを逃がす時も彼の神性は不変。
戦争そのものであるアレスを止めることは誰にもできない。
GOD OF WAR

まず今作について簡単に解説していこう。今作はオリンポスの神アレスを主役に据えたオムニバス形式のワンショット。冷戦時代のソビエトの秘密軍事基地、古代ローマイラク某所、ポーランドの小さな村と時代を場所を問わず戦い続けるアレスと彼に救われた戦士たちの顛末を描いた4つのエピソード群で構成。アメコミでは非常に珍しいフルカラーではなく全編を白黒で描いているのが特徴だ。

初登場は60年代(実はそれよりも前らしいが)とマーベルユニバースの中でも古株であるアレスだが、実は彼を主役に描いた作品はあまり多くない。彼が悪役だからなのだろうが、同時に彼の人となりを知れる意味では今作は貴重な作品の1つだと言える。

戦う時代も場所も選ばず、アレスは類稀なる剛腕とその手に握る戦斧を振るってきた。ひとたび彼が戦えば、如何なる存在も彼を止める障害にはなり得ず、ただただ屍を曝すのみ。そこまでアレスが戦えるのは、偏に自分の在り方に嘘をつかないためだ。生真面目なアレスは全父ゼウスから授かった神性を守るために、そして世の調和を乱す存在を排除するために。それが“神”としてあるべき姿だとアレスは信じていたのだろう。

砂塵が舞うイラクに現れたアレス。目的はアメリカ軍を襲う化け物の討伐。
斧を担ぎ、グレネードランチャーを握る彼はちょっと楽しそう。

彼の生き方は傍目に見れば蛮族のそれにしか映らないだろう。粗暴で横暴、悪神と扱われるのも無理はない。古代ローマでは彼は鎖に繋がれ、「バーバリアン」と呼ばれていた。彼の在り方を万人が受け入れられるかと言うと、そうではないと言わざるを得ない。アレスを崇拝している連中なんて現れたら「戦い続ける歓びを!」とか言い出しかねないしな。

しかし、アレスは決して考えなしに暴れ回っているのではない。彼が目指すのは調和であり、暴力も調和を乱す存在に対して振るっている。ただその暴力が容赦がなさすぎるだけだ(悪党は全て皆殺しにしていいとは管理人も思うが)。戦いの中でアレスが出会った戦士たちの多くは国のために家族のために戦うと嘯きながらも、自身の保身と欲望を満たそうとする連中ばかりだった。そんな連中はアレスの考える調和には必要はない。

王国を救おうとした娘の目的を知ったアレスは、娘の救出を依頼した王国を襲撃する。
アレスの目は常に真実を見据えている。戦争そのものである彼を騙した者は荒ぶる戦火によって滅ぼされるのだ。

しかし、アレスの善性は分かるが彼の在り方を肯定するのは難しい所だ。アレスは戦争を体現した男だから。一本筋が通った男の行動は良くも悪くも多大な影響を与えるが、それはアレスにも当てはまる。彼は自分の在り方を変えることはない。ゼウスから授かった神性に嫌気がさして下界にて息子のアレキサンダーと暮らしたこともあったアレスだが、築き上げてきた屍の山がそれを許さなかった。彼の往く道はやはり戦場にあるのか。

戦場に戻ったアレスは時に古の武器や強力な力を持つ幼子を巡ってヒーローたちと争い、時にヒーローたちと食卓を囲んで慣れない箸に苦戦したり、またある時は自らが創り出した最高の芸術品を邪神から取り返そうと四苦八苦したりと波乱万丈な人生を歩んだ。調和を目指しながらも、戦火を振りまく。そんな歪んだ在り方はまさに戦争を体現する男を現していると思う。

次の戦場を求めて旅立つアレス。
誇り高き戦闘神は己を曲げず、誰かのために戦い続ける勇敢な戦士を高く評価する。
アレスが太鼓判を押した戦士にはかの私刑執行人も含まれていたようだ。