天使を崇拝する者たちから少年を連れ出したゴーストライダーは荒野を奔る。
その裏では少年を奪還すべく殺人ナースが、そして新たな刺客がライダーの進むロードに立ち塞がろうとしていた!
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【あらすじ】
モンタナ州はニュー・ビーラ、この地で仇敵である天使ザドキエルを崇拝する者たちが起こした事件を知ったジョニーは、ザドキエルの息のかかった者たちに捕らわれていた少年マーカスを救出する。しかし、ザドキエルたちがこのまま見逃す筈がない。彼を崇拝する殺人ナースたちがジョニーたちの追撃を開始する。
一方、ニュー・ビューラではもう一つの奇妙な事件が。「ルート18を通った者は世にも恐ろしい怪物たちに殺される」。そしてライダーがヘルサイクルを走らせる日の夜、この呪われたルートを通った者たちが殺された。いったいこの地はどうなっているんだ?
【約束の地】
ジョニーがニュー・ビューラにやってきたことは全て運命付けられていたことだったのか。彼がこの地で訪れたのを機に、天使が地上で重ねてきた悪行がまた1つ白日の下に晒されたのだ。
ザドキエルと彼を崇拝するナースたちは、誰の目にもつかないような田舎街に拠点となる病院を作り、街に住む若者たちを攫っていた。病院に連れて来られた若者たちを待つのはナースたちが人為的に引き起こした臨死体験。有無を言わさぬまま電気ショックに掛けられた者たちの多くはそのまま死んでいったようだが、マーカスのような一部の者たちは死ぬことはなかった。マーカスの肉体が仮死状態になった時、彼の魂は天界へと導かれていたそうだが、そこで彼は“神”が住まう荘厳な都市と“マラキム”のリーダーであるザドキエルの姿を“視て”しまった。ザドキエルは“神”ではなし得ない汚れ仕事をこなしてきた大天使だ。彼の天使は天界では絶対の影響力を持つ男であり、その力はルシファーをも超える程。ザドキエルの差し金でルシファーが地獄に堕とされる様を、マーカスは視た。それはザドキエルの天界での悪行の数々を地上へ伝えることができる者が現れたこと、そしてこの少年を利用することも可能であることも意味してした。
故にナースたちはマーカスを病院に監禁し、彼の心を少しずつ壊していった。天使の姦計により精神を破綻させていくマーカスの様子は、ザドキエルからすれば愉快なことこの上なかっただろう。ザドキエルの遠大な計画を完遂させるにはマーカスは必要な駒だ。もっと痛めつけて、自らの使徒たるに相応しい存在に造り変えなければ。“神”の創造物であるヒトを、自分の所有物であるかのように弄ぶ様は傲慢の一言に尽きる。
ゴーストライダーへと姿を変えたジョニーはマーカスをヘルサイクルに乗せ、再び荒野を駆ける。本当は今すぐにでも殺人ナース共をぶちのめしてやりたい、彼女たちは憎きザドキエルの手下なのだから。今はとにかくマーカスを護ることに集中するべきだろう。しかし、ジョニーの“邪念”に充てられてか、はたまたナースたちに与えられた“神”の加護の成せる業かライダーは追撃を振り切ることができない。狙撃を受けたことでクラッシュしたライダーを滅多打ちにし、勝ち誇るナースたちだがこんなもので“復讐の精霊”が往く手を阻めるとは思わないことだな。
ゴーストライダーが殺人ナースたちを吹き飛ばしたその頃、ルート18で起こっていた怪事件の調査を行っていたコワルスキーは上司の制止も聞かず、ニュー・ビューラの歴史を知る男の元へとやってきた。件の男は葬儀屋を営む老人であり、この「約束の地」で起こった数々の怪事件を何年も前から見てきた。そんな男ならルート18の謎も知っている可能性が高い。ルート18に潜む怪異は道行く者たちをバラバラに引き裂くが、それは新鮮な肉を求めているのが理由だからだ。だが、1人で行動を起こしたのは軽率だったと言わざるを得ない。