復讐の精霊生誕50周年を祝うサバトの第18幕！
1人の女の記憶にあるのは悪魔への、自分を助けてくれない周囲への怒りの日々。
前回はこちらから↓
【あらすじ】
ジョニー・ブレイズと行動を共にする元FBIエージェント、タリア・ウォーロード。ジョニーと悪魔退治の旅を続ける彼女には、ある1つの悩みがあった。夜眠る時、カフェで食事をする時、ガソリンスタンドに立ち寄った時、あらゆる時間あらゆる場所で異形の化け物たちを見るようになっていたのだ。それは幻覚か、それとも幼い頃のタリアの記憶に刻まれた悪魔へのトラウマに起因するものなのか。
今は独力で化け物を祓えるが、子供の頃は両親に助けを求めるしかなかった。
【Bad Education】
今シリーズはゴーストライダーの生誕50周年を祝うアニバーサリーシリーズ、そんな記念すべき作品でヒロインを務めるタリア・ウォーロード。S.H.I.E.L.D.、そしてFBIと所属を移りながら世の理を乱す地獄の悪魔や怪物たちが齎した異変を解決してきたエージェントだった彼女は、ブラックハートが起こした事件を追う中で“復讐の精霊”をその身に宿す男と出会い、以降は彼と行動を共にしてきた。今回からはそんな彼女の過去に起因する悪魔との戦いを描くストーリーとなっている。
闇の魔術を操り、脅迫に恫喝と手段を選ばないしたたかさを備えるタリア。その強気な様にはジョニーも出会った当初は苦労したものだったが、彼女も最初からそうだった訳ではない。幼少期の彼女は自分にしか見えない怪物たちに恐怖し、誰かに助けを求めることしかできなかった非力な普通の少女だった。しかし、人は自分に見えるものでしか判断できないもの、タリアに助けを求められても彼女の訴えを受け入れることは難しいだろう。両親に学校の先生に、幼いタリアが頼るしかない大人たちは怯える彼女のことを救うことはできなかった。それどころか、特に学校の先生は彼女がまるで異常者かのように扱う始末だ。満足に眠ることもできず、トイレに行けず学校で漏らしてしまう屈辱を味わったタリア。どうして自分がこんな目に遭わなければならないのか、枕を涙で濡らす彼女だが、悲しみの感情は何時しか怒りの感情へと変わっていた。ビビる位なら、いっそ怪物の力を利用してやる。そして自分を助けてくれなかった大人たちに仕返しをしてやる。少女の黒い感情に、天井から見つめていた影は応えた。
その影の姿はまるでかの地獄王のそれだ…。
こうして悪魔由来の魔術を手に入れたタリアは、学校の先生に仕返しをすることに成功した。しかしタリアの苦しみは癒えることはない。成長した彼女には今度は両親からの重圧という錘が重くのしかかってくる。タリアを正しく教育しようと真っ当な愛情を注ぐ両親だが、彼女には煩わしいものでしかなかった。手入れされた髪型を乱雑に刻み、髪を染め、プレゼントの人形をズタズタにするタリアの姿は恐ろしい。闇の魔術を手に入れたことを誰にも話さずに過ごしてきた彼女の精神は、固く蓋をされた鍋が爆発するかのように限界を迎えていた。その弱った精神にあの影が付け入るのだ。
影に魅入られた彼女はやがて悪魔崇拝者たちと行動を共にするようになっていく。
警察に捕まった彼女だが、警察では彼女を救うことはできないだろう。
自身の感情を制御できず、真っ当な感性と荒んだ精神とでボロボロになっていく彼女に見ていられなくなったのか、両親はここに来てタリアを“至高の魔術師”ドクターストレンジの拠点サンクタム・サントラムへと連れていく。タリアを苦しめている「何か」を取り除くことは自分たちではできない。超常の現象の専門家に診てもらうのが、最善の行動だと考えたのだろう。だが、この判断は些か遅かったと言わざるを得ない。
ドクターストレンジでもタリアを蝕む影の正体を暴くことは難しい。そして、それを取り除いて彼女を救うことも。もっと早くにストレンジに診てもらえば対処は出来たのかもしれないのに、悪魔に魅入られたタリアはストレンジの手を払い、魔術で姿を消してしまう。サンクタム・サントラムを後にした彼女を出迎えたのは、先述した悪魔崇拝者たち。そのリーダーが差し伸べた手をタリアは手に取ってしまうのだった…。
これまでタリアのバックボーンは一切明らかにされてこなかったが、まさかの正体に管理人は驚いたものだ。彼女に力を与え、そして彼女に接触してきた者たちが崇拝する悪魔の正体を知れば尚更だ。彼女がここから如何にして悪魔崇拝者たちの元を離れることができたのか、エージェントになった経緯は少しづつ明かされていくことだろう。現代と過去のパートを交互に繰り返しながら進行するストーリーは、影が動きだしたことを感付いたタリアの焦りを演出しているようだ。
地獄王メフィスト。最強最悪のサタンもまたタリアを“視て”いた…。
