哀しき復讐劇に幕を下ろす時。
ヘルファイア・プログラムを叩き潰せ、ウルヴァリン!ゴーストライダー!
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【あらすじ】
ミュータントをターゲットにした連続殺人事件の犯人ブラムを追うジョニーとローガンは、事件を調査する内にブラムがウェポン計画に加担していたことを知る。ジョニーたちが何度も潰した筈のウェポン計画が、今度は地獄の悪魔の力を使うことで再始動した。
新たなウェポン計画“ヘルファイア・プログラム”を指揮する神父の復讐を果たすために、ブラムに取り憑かせた悪魔を強化し、その上で新たな宿主に憑依させる。宿主に見定めたのはウルヴァリン、そして憑依の媒介とするためにゴーストライダーを利用した。ヘルズバックボーンに乗り込んだ2人は捕らえられ、ウルヴァリンは悪魔に取り憑かれ、神父の操り人形となってしまった。抵抗するジョニーだったが、神父が操る魔術には太刀打ち出来なかった…。
【HELLVERINE】
ブラムと彼に憑依した悪魔バグラ=グールが引き起こした殺人事件を追うジョニーとローガンだったが、事件を影で操る者の力は強大だった。ブラムから「ファーザー・パイク」と呼ばれる男は闇の魔術を操り、FBIをはじめとした政府関係者とコンタクトを取ってきた悪漢であり、彼はこれまでずっと影に潜んで力を高めていた。彼は影に潜みながらも、ジョニーとローガンの動向を追い続けてきた。ゴーストライダーとウルヴァリン、2人の戦い様を見てきたパイクは2人の力を利用することを思いつく。“ヘルファイア・プログラム”即ちウェポンXの身体能力と残虐性と、“復讐の精霊”の超常的な力を併せ持つ究極の殺戮マシーンを完成させる。自身の意思に従う兵士を操り、地上を混乱に陥れることがパイクの目的だったのだ。
彼が何故ミュータントのみをターゲットにしていたのかは明かされなかったが、その理由はブラムの過去に由来するのだろう。幼い頃のブラムには、邪教を振るう者たちの手で地獄の悪魔が取り憑いていた。悪魔は常にヒトの命を奪うことに執着する危険な獣だ。そんな獣を身に宿した彼はずっと助けを求めていた。だが、その救いの手を握る者は誰もいなかった。最後のチャンスとしていたミュータントからも拒絶されてしまった。絶望の淵に立たされたブラムだが、そこでパイクが手を差し伸べたのだ。私がお前に取り憑いた悪魔の力を正しく制御できるように鍛える、とでも吹き込んだのだろう。
パイクの「お前はミュータントに見捨てられた」という“教育”を施されたブラムの精神は不安定になり、それにつれてバグラ=グールの力は強くなっていく。この教育はブラムが青年になるまで続けられたのだから恐ろしい話だ。
そうしてパイクが満足できるまでに強化された悪魔の力を振るうのに適任だったのは1人しかいない。ウェポン計画の被検体であり、現在に至るまでに生き残っている男こそが悪魔が“操る”のに相応しい。そしてその計画にはヒトの身でありながら“復讐の精霊”を制御するジョニーの力を媒介にすることも必要だったのだ。
かくして、“復讐の精霊”を媒介にブラムからローガンに移植されたバグラ=グールは、ブラムが命じるままにミュータントたちを殺害していく。その残忍かつ容赦の欠片もない姿はまさに悪魔のそれだ。ミュータントの妻子を切り裂き、次に彼らの子供をも手にかけようとするが…。
ローガンの抵抗に焦りを見せるパイクだが、そんな彼にブラムはバグラ=グールを返して欲しいと懇願する。不安定になっていた彼の精神は脆く、悪魔の力を振るえなければ自我を保つことも出来ないでいたのだ。ヒトの力を軽視したために、計画を邪魔されるとはお笑いだぜ。
【Our Better Monsters】
このブログではこれまでに数々の「復讐に取り憑かれた者たち」の物語を紹介してきた。愛する者を奪われたために復讐をする。己の尊厳を踏み躙られたために復讐をする。人によって復讐の形は様々だ。しかし、何れにおいても間違ってはいけないのは復讐を行う者の在り方だ。自らの胸に芽生えた黒い感情を如何に制御し、解き放つのか。そのタイミングを見誤れば、待つのは破滅だけなのだから。
ローガンの前に現れたブラムは、彼に憑依したバグラ=グールに語りかける。もう一度、一緒にいようと。何度も悪魔から逃れようとしていた筈なのにも関わらず、ブラムは悪魔の力を求めてしまった。悪魔と共に振るう強大な力に魅入られ、人殺しの快楽を覚えてしまったのだ。こうなってはもう、救えない。
ブラムとローガンの間に割って入ったゴーストライダーだが、ローガンが相手では本気で戦うことはできず苦戦してしまう。2人の戦いに満足したパイクはブラムの望み通り、バグラ=グールを元の宿主に戻そうとするがそうはいかない。ブラムの前に、てめえからぶちのめす!
再びバグラ=グールを身に宿したブラムの姿は炎に包まれた獣の姿だったが、その炎が消えて現れた“それ”は、ブラムの歪んだ感情を現しているかのように人体が混ざり合ったグロテスクなモニュメントだった。因果応報と言えばそれまでだが、助けを求めているかのように伸ばされた腕が少しだけ切ない。
こうして、犯人も首謀者も消えたことで“ヘルファイア・プログラム”も消滅。ヘルズバックボーンに残された研究所も破壊された。これでもう地獄の力を悪用しようと目論む者は現れないだろう。事件を解決したジョニーとローガンの表情にも笑みが浮かんでいたのだった…。