自らの過ちに打ちのめされ、失意に暮れるオットー・オクタビアス。
冷たい雨に濡れる彼の元に現れるのは海底王国の支配者。ネイモアとの出会いはオットーにとって希望を見出す切っ掛けとなるのか。
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【あらすじ】
オットー・オクタビアスの計画は失敗した。自らが考えうる“最も優れた”チームを結成し、ニューヨークを護ろうと奮闘してきたもののチームメイトに裏切られてしまい、護る対象であるニューヨークに危機を招いてしまったのだ。全ては自身の傲慢さが齎した結果、自分は結局どこまでもいってもヴィラン“ドクターオクトパス”なのか。絶望の感情に支配されたオットーはヒーローから、街の住人たちから逃げるように背を向ける。
降りしきる雨の中ニューヨーク中を飛び回るスパイダーマンだが、雷と爆発を目撃する。現場に急行するオットーが目撃したのは、ワカンダの兵士たちに追われるネイモアの姿だった…。
摩天楼で起きた爆発に焼かれ、墜落するネイモア。
ネイモアはある一件から、ワカンダから追われる身にあった。
【Brazen in out】
常に自信に満ちあふれていたオットー・オクタビアスが敗北感に包まれ、首を垂れる。誰よりも優れていると豪語し、それを証明しようとしてきたオットー。しかし、その目論見は皮肉にも彼自身の傲慢さから失敗してしまった。
かつてのシニスター・シックスのメンバーを洗脳してスーペリア・シックスを結成したのは、チームメイトの能力の高さを認めていたが故だったが、その手段に問題があったことにオットーは気付いていなかったのだ。他人を洗脳して自分の思い通りに動かそうという発想はヒーローがするものでも、ましてやスパイダーマンが取るべき行動ではない。仮にピーター・パーカーがシニスター・シックスのメンバーとチーム・アップするにしても、洗脳という手は取らないだろう。
自分では“最も優れた”スパイダーマンにはなれない。あの時、死に際のピーター・パーカーに誓った決意を果たせない。暗い感情に支配されたオットーは何時しかそう考えて初めていた。
もう諦めよう、これまで自分がピーター・パーカーの体で行ってきた所業も何もかも“世界”に打ち明けよう。ネバーギブアップの精神を持つオットー・オクタビアスでも、今回の失敗は相当堪えたようだ。
警察から逃げるようにウェブを飛ばし、街中を飛ぶオットー。そこでワカンダの兵士たちに追われるネイモアを発見する。ハットゼラゼたちの猛攻を受けて倒れるネイモア。片足の羽を焼かれ、脱出することもできなくなったアトランティスの王の様子を、オットーは黙って見ていた。
自分には関係のない戦いだ、見て見ぬふりをすればいい、全部アベンジャーズに任せればいい。頭の中ではそう考えていたが、スパイダーマンとして戦い続けてきたからか、体は無意識にネイモアを助けるために動いていた。自分でも何故そうしたのか分からないままにハットゼラゼたちを倒すオットー。
突然やってきたスパイダーマンの助太刀に「余計なことをしてくれたな」と憎まれ口をたたくネイモアだが、後続のハットゼラゼが迫っている今は争っている場合ではない。
飛んで逃げられるとムキになるネイモアを捕まえて、オットーは飛ぶ。
怪我をしている者を放っておくわけにもいかない。厄介ごとに首を突っ込んでしまうのはスパイダーマンの性か。
負傷したネイモアの片足の羽をウェブで応急処置したオットーは、彼が何故ワカンダから追われているかの理由を知る。
ネイモアはフェニックス・フォースの力に飲まれて暴走し、その巨大な力を以てワカンダを侵攻し、壊滅させた。悪意が囁くままに破壊活動を行ったために、ワカンダの国王ブラックパンサーに命を狙われることになってしまったのだ。ブラックパンサーが差し向けたハットゼラゼに追われるネイモアは、アトランティスまでもう少しという所で追い詰められ、そこでスパイダーマンに助けられたのだ。
世界から見れば今のネイモアは悪人だ。己のエゴを肥大化させ、望むままに暴力を振るう存在は許されない。だが、犯した悪行を語りながらも毅然とした態度を崩さないネイモアにシンパシーを感じたのか、オットーが自身が犯した過ちを語る。
スパイダーマンはニューヨークには必要とはされていないではのか、自分は“スーペリア”なのではなく“インフェリア”なのではないか。自分の正体までは明かすことはできなくても、弱音を吐きたくなることはオットーにもある。
スパイダーマンの言葉を黙って聞いていたネイモアだが…。
灯りに照らされるニューヨークを横に黄昏るスパイダーマン。
そんな彼をネイモアは笑い飛ばす。それがどうしたというのだ、と。
ネイモアはこれまでも(そして今後も)地上の人間を敵視し、時にはヒーローとも戦ってきた男だ。ネイモアがそうまで戦うのは海底に住まう民のため、そして地上の人間への復讐のためだ。
戦うためならばどんなことでもやる。たとえ人から後ろ指を指されることであっても。
己の理想を曲げることだけは決して許さないネイモアらしい考え方。その考えはヒーローのそれであるしヴィランのものでもある、非常に危ういものだ。だがオットーには、ある意味開き直れるネイモアの姿が救いとなっただろう。
絶望などいくらでも乗り越えられる。自分の戦いはまだ終わってなどいない。ドクターオクトパスの性分も、スパイダーマンとしての責任も全て自分が背負って突き進むのみだ。
休息を取っていたオットーたちに襲い掛かるハットゼラゼたちを打ち倒すスパイダーマン。立ち直ったオットーは強い。
人の振り見て我が振り直せ、と言うがこのエピソードではオットーは自分よりも傲慢に振る舞うネイモアと出会ったことで立ち直ることができた。1度や2度の失敗がどうしたというのか、最終的に勝てばいい。人が自分をどう思うと関係ない。スパイダーマンは決して諦めない。そうしてピーター・パーカーは周囲の視線に晒されながら、勝利を収めてきた。
ならばピーターよりも優れている自分に、それができない道理はない。自分はスパイダーマンを超えた存在、スーペリア・スパイダーマンなのだから!
立ち去ろうとするネイモアを殴りつけ、この街に近づくなと釘を刺すオットー。
スーペリア・スパイダーマンの復活だ。