↑ドクターオクトパスを的確に表現した一面
※オクトパスガール最新話のネタバレを含みます
ということで、今回はジャンプ+で配信されている「スパイダーマン:オクトパスガール」にて描かれた原作ネタを幾つか取り上げようと思う。
まず、この作品について軽く触れる。「スパイダーマン:オクトパスガール」はアニメ映画「スパイダーマン:アクロス・ザスパイダーバース」のタイアップ企画。過去にもアメコミヒーローを題材にした作品は多く世に送り出された(オクトパスガールと同じく集英社とマーベルのコラボ企画「デッドプール:SAMURAI」、アニメ作品でなら「ディスクウォーズ・アベンジャーズ」などなど)が、このオクトパスガールはそれらの作品とは一線を画す。
その理由はいくつかある。1つ目は主役はスパイダーマンではなくヴィランのドクターオクトパスであること。2つ目はドクターオクトパスが日本の女子中学生に「転生」してしまったこと。…とても正気の発想で作られたとは思えない(特に2つ目)。最早「タイアップ?なにそれおいしいの?」と言わんばかりのやりたい放題ぷりだが、その実、この作品は原作ネタを多く取り入れつつ、独自の解釈で描かれているために原作既読・未読者問わずに注目を集めている作品なのだ。管理人はこういう作品は大好きだ。
では、そんなオクトパスガールにて描かれた原作ネタを幾つか紹介する。
・アナ・マリア
1つ目はこのブログでも取り上げている「スーペリア・スパイダーマン」誌のメインヒロインであるアナ・マリア。オットーが最も愛した女と言っても過言ではない女だが、本人はオクトパスガールには登場していない。ではどういう形で登場したのかというと、何とオットーのサポートAIとして登場したのだ。勿論、これは原作でも描かれている。長くなるのでこのAIが登場した細かい経緯は省くが、未邦訳エピソードからの登場という衝撃は大きかったとだけ書いておこう。
電脳空間にて再起を図るべく恋人を模したAIと共に策謀を練るオットー。
オットーを全肯定するだけではないのがアナらしい。
・神経スキャナー
ドクターオクトパスが女子中学生に「転生」する原因となったのは、オットーの不注意で命の危機に陥ったことにあった。オットーは過去に何度か死ぬ羽目にあってきたが、その問題を解決する術を身に着けた。転生、自身が死ぬ度に人格と記憶をデータ化してクローンボディーに転送する画期的なシステムを、オットーは開発した。そのシステムの中核を担うのが件の神経スキャナーだ。
この装置はオットーが開発した脳内の思念を増幅・伝達するすることを目的とした装置で、スーペリア・スパイダーマン誌において物語の鍵を握る重要なアイテムだった。そんな装置が巡りに巡って、再び物語の鍵を握ることになるとは製作者のオットーも思ってもいなかっただろう。
カーディアックとの戦いの中で偶然発見した過去の遺産。
人助けも脳内人格を消すことも、これ一台で解決だ。
・パーカー・インダストリーズ
作中ではオットーの口から今はもう存在しない、と明言された企業。その企業がパーカー・インダストリーズだ。この企業もまた、オットーがスーペリア・スパイダーマンとして活動していた際に設立した会社だったが、体をピーター・パーカーに返してからはピーターが社長としてオットーの業務を引き継ぐことになった。
ピーターの主導で医療機器の販売・ボランティア団体への寄付にチャリティー活動といった慈善活動を積極的に行っていたが、復活したドクターオクトパスとスパイダーマンとの戦いの末に、会社自体が消滅してしまった。何を言ってるのか分からねえと思うが、パソコンを物理的に破壊するだけで企業が倒産するのは、ピーターの管理体制はだいぶお粗末だった言えるか。
・スーペリア・オクトパス
最新話のラストにてシルエットで現れた超人。スパイダーマンの体格をしながらもドクターオクトパスのメタルアームを背に装備し、自らを「スーペリア・オクトパス」と名乗った男は警察から逃亡した(ライノに似た風貌の)悪漢を血祭りにあげた。
ヒーローというには過剰とも言える(そうでもないか?)制裁を加えた彼の原作での正体は、ピーターのクローンボディーに自身の記憶をダウンロードしたオットー・オクタビアス。前述したAIアナ・マリアと共にネオジャッカルが作成したクローンボディーを奪った彼は、紆余曲折を経てクローンボディーを全て強奪。そしてオットーの知性に目を付けたヒドラの大幹部「アーニム・ゾラ」と結託して誕生したのが、このスーペリア・オクトパスだ。
スパイダーマンとドクターオクトパス、2人の特徴をうまく組み合わせたデザインは好評を博したが、その出番はあまり多くなかった。そんなスーペリア・オクトパスが令和の時代に再び登場したことは非常に喜ばしい。今後、彼がオットーと出会い、どんな活躍を見せてくれるのかが楽しみだ。
スーペリア・オクトパスはヒドラの一員だったが、利害の不一致から脱退。
その後はスーペリア・オクトパスは暫くの間だったが、この姿でヒーロー活動を行っていた。そんな彼を市民は好意的に迎え入れていた…、ヒーローなら誰でもいいのかも(世知辛い)。
・サクラスパイダー
この作品の主役はドクターオクトパスだが、当然スパイダーマンの存在は欠かせない。ニューヨークでオットーと戦ったピーターの他に、もう一人のスパイダーマン、いやさスパイダーウーマンが登場した。
それが「デッドプール:SAMURAI」にて初登場を飾ったサクラスパイダーこと飛蝉遥。彼女はデッドプールとのチーム・アップ後、いかなる経緯を経てか、「オクトパスガールの世界」にやってきた。
「安易なオリキャラ出すんじゃねーよ」とどっかの変態が喚きそうだが、サクラスパイダーはいまやほぼ公式なスパイダーウーマンの1人として扱われている。同じジャンプ+で配信されている作品だからこそ出来たコラボだと言えるだろう。
デッドプールと別れてからは、単独で活動を続けてきたサクラスパイダー。
そんな彼女の前にマルチバースを観測する能力を持つスパイダーウーマン「マダム・ウェブ」が現れたのが、彼女が別世界にやってきた理由のようだが?
上に挙げてきた原作ネタ以外にもまだまだあるのが、オクトパスガールの本気ぷりを感じさせる。
本来の体に戻るべく行動を映しながらも、女子中学生との奇妙な生活を送るオットー。オットーは学校で虐めを受けていた気弱ながらも心優しい少女「奥田宮乙葉」と周りの環境の問題を解決すべく、時に暴力に訴えながらも奮闘する。
オットーも幼少期に学友からは虐めを受け、両親から虐待を受けて育った経験があるだけにオトハが抱える問題は他人事ではない。優れた能力を持つ者が改善するのは当然だという考えがオットーの根幹にあるだけに、オトハだけでなくオトハを虐める生徒にも「指導」していく。
自分の問題を後回しにしてでも周囲の人々の問題に首を突っ込むのは、彼がスーペリア・スパイダーマンとして活動していたが故か。彼が戦う敵は、現代社会に巣食う闇。この敵はスパイダーマン以上に厄介な存在なのかもしれない。
それでもオットーは挫けないだろう。何度も負けようが、最終的に勝てばいい。ネバーギブアップの精神こそがオットーの最大の武器。その武器が彼女たちの道しるべとなるのか。今後も追い続けたい作品だ。