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アメコミ:スーペリア・スパイダーマン:トラブル・マインド

究極の選択!

 

 

ということで、今回は翻訳版スーペリア・スパイダーマン誌の2巻「トラブル・マインド」の解説だ。トラブル・マインドは前号「ワーストエネミー」の続編であり、街の守護者であり監視者としての地位を高めるスーペリア・スパイダーマンの活躍を描いている。

ワーストエネミーの解説はこちらから↓

 

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オリジナルスパイダーマンであるピーター・パーカーよりも自分の方が優れていることを証明したい、それがスーペリア・スパイダーマンことオットー・オクタビアスの行動理念だ。彼はピーターが苦心していたヒーロー活動をプライベートの時間を両立し、街中にばらまいたオクトボットの目を使って犯罪者の動向を監視する。そうしてひとたび犯罪が起きれば現場に急行。警察に指示し、速やかに捕らえるのだ。

まさにスパイダーマンよりも“優れている”スパイダーマンだと言えるだろう。それは自信家であるオットーにとっても誇らしいことでだ。しかし彼は元はヴィランであるドクターオクトパスと呼ばれた男、スパイダーマンとしては相応しくないのでは、と考えてしまう一面もある。前回ではブーメランやヴァルチャーに重傷を負わせ、マサカーを殺害、そして今回では愉快犯であるジェスターたちを激情に駆られて血祭りに上げたりと例えヴィラン相手でも過剰な暴力をよしとはしなかったスパイダーマンとは決定的に違う。ピーター・パーカーとして振る舞う時も地の尊大な態度を取ってしまい、MJやアベンジャーズといったピーターを知る人々からは疑念を持たれてしまう。

愉快犯ジェスターとスクリューボールから笑い者にされるオットー。
金的攻撃なんてされれば、そりゃ怒る。誰だってそうする。

ヒーローとしての活動に充実感を感じ、(周囲の疑念の目を煩わしく思いも)我が世の春が来たと言わんばかりのオットーだが彼の行動にまったをかけた男が1人。ピーター・パーカー。ピーターを“演じる”ために僅かに残したピーターの記憶が作り出した残留思念がオットーの活動を妨害したのだ。

ここに来てオットーにある決断が迫られる。

ヒーローとしての活動を続けるのなら、スパイダーマン=ピーター・パーカーの記憶は必要だろう。彼が“親愛なる隣人”として振る舞い、周囲から集めた信頼はスーペリア・スパイダーマンが利用するのにうってつけだったからだ。しかし、その記憶がオットーの活動の邪魔をするなら?かつての悪行の贖罪をしたいと思ってもそれを妨害してくるなら?

排除するしかない。

幼い少女を救う為に全力を尽くすオットー。
贖罪を込めた手術は成功するが、ピーターは彼の成果を認めようとはしない。

ピーターにとっては奪われた体を取り返したいだけ。体もスパイダーマンとしての功績も元々はピーター・パーカーの物だ。普通に考えればピーターの考えに理があるだろう。何せオットーが自分の体で好き放題やるお陰でMJとの関係はギクシャクしてしまい、アベンジャーズの称号をはく奪されかけるわヴィランを殺してしまうわで、ピーターの人生は滅茶苦茶になってしまったのだから。

ピーターの脳内の中でピーターはオットーに糾弾する。が、ピーターの言い分はオットーには届かない。世界に本当に必要なのは優れたスパイダーマン、明るく優しく振る舞う“親愛なる隣人”などいらない。ピーターにはできなかったことはオットーにはできるのだ。

それにオットーが打ち倒してきたヴィランたちは、ピーターが見逃してきた者たちばかり。ヴァルチャーが子供を手先にしたり、マサカーが凶行を起こしたのもピーター・パーカーの甘さが招いた結果だ。先述した幼い少女の手術を妨害したりと、体を取り返す為に手段を選ばないピーターのことをオットーはヒーローとは認めなかった…。

力には責任が伴う。
その責任を果たせない者に、ヒーローを名乗る資格はない。

ピーターの記憶は消えた。スパイダーマンは死に、スーペリア・スパイダーマンが勝った。今シリーズでピーターは二度死んだわけだが、一度目の死とは違い今回は明確に敗北者として描いているのが容赦ないと思う。どん底に落ちていくピーター・パーカーと、高みに駆け上がっていくオットー・オクタビアス。どちらがヒーローで、ヴィランなのかが分からなくなるが、今回はオットーの言い分に理があった。勝った方が正義だ。

しかし、オットーのこの決断は水面下で蠢く巨大な悪意に気付くことを遅らせてしまう。スパイダーマンにとって最悪の敵、グリーンゴブリンの壮大な計画が始まっていたのだった。