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アメコミ:スーペリア・スパイダーマン:ネセサリー・イービル/スーペリア・ヴェノム

さあもう一度、タイムワープ

というわけで、今回は翻訳版スーペリア・スパイダーマン誌の4号「ネセサリー・イービル/スーペリア・ヴェノム」の解説だ。

「ワースト・エネミー」、「トラブル・マインド」、「ノー・エスケープ」と2016年から翻訳化が続いていたスーペリア・スパイダーマン誌だったが、どういう訳か翻訳化はそこでいったんストップ。その後の数年間、全く音沙汰がないままだったが、長く翻訳化をしてきたヴィレッジ・ブックスから翻訳権が小プロに渡ったことで事態は一変。このままスーペリア・スパイダーマン誌の翻訳版は宙ぶらりんなまま終わるのか、と思われた。しかし、そこはヴィレッジ・ブックス。ノー・エスケープ以降の物語も通販限定という形ではあるものの、しっかり翻訳版の刊行に踏み切ってくれたのだ。こうして2021年から「ネセサリー・イービル/スーペリア・ヴェノム」と「ゴブリン・ネイション」の2大タイトルが晴れて世に送り出されてたのだ。

「ネセサリー・イービル/スーペリア・ヴェノム」は原書の「NECESSARY EVIL」と「SUPERIOR VENOM」の2冊を合本したものであり、内容も前半はネセサリー・イービルを、後半はスーペリア・ヴェノムのエピソードで構成されている。翻訳化の再開を祝うにはこれ以上ない程のボリュームだったと言えるだろう。

【あらすじ】

スーペリア・スパイダーマンがニューヨークの守護者、監視者としての地位を確固たるものしてから暫く経ったある日。未来の世界で異常が発生した。時空間の湾曲エネルギーと呼ばれる強大なエネルギーが世界を引き裂き、タイムパラドックスが発生しようとしていたのだ。未来のニューヨークであるヌエバヨークの支配者であるアルケマックス社、その社長であるタイラー・ストーンは消滅の危機にある自分たちを救うために特異点である現代に“スパイダーマン2099”を送り込む。スパイダーマン、ミゲル・オハラは悪党であり同時に父であるストーンを救うことに反対だったが、こうなっては仕方がない。ミゲルは過去に共闘したことがあった現代のスパイダーマンに助力を求めるが、今のスパイダーマンはミゲルの知るスパイダーマンとは違っていた。

未来の異変にホブゴブリンの出現、元恋人の暴走、古き学友との再会と次々に降りかかる災難にオットーは…。

 

未来の世界に異変が起きたのは、タイラー・ストーンの父であるタイベリウス・ストーンに「何か」が起き、死んだことが原因だった。
スーペリア・スパイダーマンに襲われていたタイベリウスを救うべく、2人の間にミゲルが割って入るが…。
【未来と過去からの刺客】

未来の世界での異変から始まった前編はニューヨークで悪事を働いてきたホブゴブリンといったヴィランたちに接触し、そしてオズコープ社の御曹司であるノーミー・オズボーンや後見人であるリズ・アランといった重鎮たちとコンタクトをとってきたタイベリウス・ストーンがキーキャラクターとなる。ストーンは、ピーター・パーカーが務めるホライゾン・ラボの所長であるマックス・モデルとライバル関係にあったが、彼を謂れのない容疑で逮捕させてラボを乗っ取ってしまった。

これはピーター・パーカーの体を借りているオットー・オクタビアスにとっては、非常に都合が悪い。オットーがスーペリア・スパイダーマンの姿で打ち立ててきた偉業は全てピーターの体で作り上げてきたもので、一応所有権はホライゾン・ラボにあるのだ。その輝かしい功績が全て横からかすめ取られてしまうことは、プライドの高いオットーには我慢ならない。スパイダーマンの姿でマックスを救い、タイベリウスを始末することがオットーが取れる報復の手段だったのだ。しかし、オットーの腹の内など知らないミゲルは、スパイダーマンが自分を知らないことを訝しみながらもタイベリウスを守るべく奮闘する。

悪党であるタイベリウスの妨害もあってスーツに異常をきたすアクシデントに見舞われながらも、ホライゾン・ラボを取り戻すために奔走するオットー。彼はなりふり構わずに戦うが、ここから「ピーター・パーカーの記憶を消した」弊害が次第に見え始め、窮地に立たされていくことになる。

ホライゾン・ラボを(物理的に)失い、容疑が晴れたマックスとも袂を別れたオットーは自身の会社である“パーカー・インダストリーズ”を起ち上げることを計画する。新事業の足掛かりとして新たなナノ・テクノロジーを開発する方程式を発表するものの、その知識は全てオットーが“オットー・オクタビアスの姿”で得たもの。審査会に出席していたオットーの学友であったラメイズ博士は、オットーが発生したものは全て「オットーの案の盗作」だと非難してしまう。更にはヴィラン時代のオットーの恋人であったスタナーことアンジェリーナが意識を回復し、恋人を殺したスパイダーマンに復讐するために街で暴れているというのだ。

スパイダーマン2099との戦いでは「ピーター・パーカーの記憶を消した」ことが仇となったが、今度は「ピーター・パーカーの体を乗っ取った」ことが裏目に出てしまったのだからオットーの精神はどんどん追い詰められていく。それでもオットーが折れなかったのは、最愛の女であるアナ・マリアの存在があってこそだろう。彼女はピーター・パーカーの中身がオットーだということは知らないが、オットーのことを愛し、支えてきた。そんな女のためならば、どこまでも戦える。

元悪党であるオットーが仲間を救うために、恋人との幸せな未来を築くために置いてきた過去と向き合う姿が胸を打つ。だが、オットーの往く道には障害は多い。オットーをも含めた“必要悪”がニューヨークにはまだまだいるのだ。

ラメイズ博士を一人で説得する恋人の姿にオットーは…。
果たして、マスクの下ではどんな顔をしていただろうか。

長くなったので、後半の「スーペリア・ヴェノム」の解説は後日に更新する。お楽しみに!

 

 

さあ、ではここから後半戦の開始だ。皆大好き(?)スーペリア・ヴェノムが登場だ!

【あらすじ】

スパイダーマン2099、タイベリウス、スタナー。オットーが護るニューヨークにとっての新たなる脅威が現れたのも束の間、今度はホブゴブリンの手下たちによる犯罪活動が激化を初めていた。ホブゴブリンに扮したグリーンゴブリンの妨害により、商売と面目が丸つぶれとなった初代ホブゴブリンことロドリック・キングズリーのイライラは最高潮に近づいていた。

ホブゴブリンの部下の1人であるクライムマスターがマンハッタンの操車場にて活動を起こしていたが、そこにクライムマスターを捕らえようと動いていたエージェント・ヴェノム、そしてヴェノム・シンビオートの脅威を知るスーペリア・スパイダーマンが現れた。エージェント・ヴェノムことフラッシュ・トンプソンはスパイダーマンのファンだったために彼と戦えたことを喜ぶが、スーペリア・スパイダーマンはヴェノムに襲い掛かってしまう…。

ヴェノムが追っていたクライムマスターはホブゴブリンに雇われた偽物だった。
捕まえることができて一安心、とはならない。不安材料がまだここにいるだろうが。
【スーペリア・ヴェノム】

前半では未来と過去からの刺客を辛くも退け、恋人アナ・マリアと新事業を打ち立てて忙しくも順風満帆な生活を送ってきたオットー。「もう私の理想を邪魔するものは何もない」。今のオットーのはそんな自信が漲っていた。“ピーター・パーカー”としての行動に疑問を持つ者たちには時に冷たく突き放し、そして時には口八丁手八丁で上手く誤魔化してきたオットーの快進撃は止まるところを知らない。そして“スパイダーマン”の活動にも何ら問題はない。街には監視ポッドを張り巡らせ、市長と警察組織との連携を強め、私兵とロボット軍団も有する軍団ならばどんな犯罪が起きようが即座に対処することを可能としたのだ。

これで万事問題なし、と残念ながらそうはならない。オットーが護るニューヨークの地下には、オットーの監視を逃れて潜伏する悪党たちが大勢いる。そして、ここ数か月のスパイダーマンの変貌を前々から監視してきたアベンジャーズをはじめとしたヒーローたちもまた、オットーにとっては対処すべき障害でしかなかったのだ。

そんなオットーの耳にクライムマスターとエージェント・ヴェノムが戦っている、という情報が部下たちから入る。オットーにとってはクライムマスターは正直どうでもよかったが、ヴェノムは別だ。オットーは同時期に刊行されていた「SUPERIOR CARNAGE」誌にてカーネイジと戦い、シンビオートの恐ろしさを知っていた。元々オットーは異星の技術や生物にあまり良い感情は持っていなかったが、そのシンビオートが活動をしていることを聞いたオットーはすぐさまに排除するためにヴェノムに攻撃をしたのだ。

ここまでなら、このブログ内でも上げてきたスーペリア・スパイダーマンらしい苛烈なやり方だが、オットーは1つ重大なミスを犯してしまう。逃亡したエージェント・ヴェノムを協力者のカーディアックの元まで追い詰め、フラッシュからシンビオートを引き剥がして拘束することには成功したが、シンビオートは拘束を解いてオットーの体に寄生。自らを「スーペリア・ヴェノム」と名乗る。シンビオートはフラッシュの元へ戻ろうとするものの、オットーは自分から離れようとするシンビオートを気合で抑え込み、シンビオートを持ち出してしまう。

何故、オットーはこんなことをしたのか。それはシンビオートの齎すパワーに一瞬にして酔いしれてしまったから。かつて戦ったウィザードがカーネイジ・シンビオートと結合した時もそうだったように、オットーもまたヴェノム・シンビオートのパワーに吞まれ、自らの野望を果たそうとしたのだ。「街を護り、自分こそが誰よりも“スーペリア(優れている)”ことを証明する」。増幅された野心は暴走し、街中に配置されたスパイダーポッドとスパイダーリングスを動かし、どんなに小さな悪事も見逃さんと言わんばかりに悪党にたちに襲い掛かるスーペリア・ヴェノム。

こうなってはどっちがヴィランなのか分からなくなる展開だが、スーペリア・スパイダーマンの原点である「ヒーローと足らんとする覚悟」はヴェノムとなっても失われていないのは述べておくべきだろう。オットーがあくまでもヒーローとして戦っていることには変わらないのだ。ただ、その苛烈なやり方が暴走するととんでもない大惨事を引き起こしかねない事態に発展してしまった“だけ”なのだ。

スーペリア・ヴェノムと化したオットーはニューヨーク中で暴れまわり、ヴェノムの猛威に晒されるホブゴブリンの部下たち、そしてスパイダーマンを止めようとするアベンジャーズやフラッシュ・トンプソンに、彼らの戦いを余所に地下からほくそ笑みながら着々とある計画を進行していくグリーンゴブリン。

様々な思惑が交差した「ネセサリー・イービル/スーペリア・ヴェノム」。怒涛の展開の目白押しである本作からその勢いのまま、最終号である「ゴブリン・ネイション」に繋がっていくのだ。

ヴェノムと化してもアナ・マリアへの愛情は忘れない。
彼女のためならば、ヒーロー活動を中断してでも駆け付ける。
アナは一途な女だけど、オットーも大概か。