モンスターとなったパニッシャーの安息は何処にある?
風雲急を告げるモンスター・メトロポリス。迫り来る脅威がパニッシャーを再び戦いに導く...。
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【あらすじ】
モービウスらの手で怪物として蘇ったパニッシャーは己の在り方に悩み、苦悩していた。死人である自分は、一体何者なのか。何のために戦うのか。答えが見出せないフランクにモンスターたちは...。
一方、モンスターを狩り続けてきた侍たちの首領が、レギオン・オブ・モンスターズのメンバーでるマンフィビアンと彼の子供たちを拉致する事件が起きてしまう。果たしてハンターたちの目的は何なのか?フランクはどうするのか?
【what do you fight for】
モービウスたちモンスターから距離を置いたパニッシャー。フランケン・キャッスルとなり果てた彼はモンスター・メトロポリスの外れにある倉庫内で独り潜んでいた。頼んでもいないのに、手前勝手な理由で蘇らせたモンスターたちの要望を聞く理由など、フランクにはなかった。自分の居場所は地上、犯罪者やヴィランと戦い続けてきた血と硝煙に溢れた地、そここそがフランクがいるべき場所だ。しかし、それはもはや過去の話。今のフランクは動く死人。パニッシャーはあの日に敗れ、そして死んだのだ。
その事実は、日を経つに連れてフランクに重く圧し掛かる。“パニッシャー”が死んだのなら自分は何者なのだ、と。パニッシャーとして戦い続けることを誓い、そして死んだのなら自分はもうパニッシャーではいられないのでは?さりとて“フランク・キャッスル”という普通の人間に戻ることも、もうできないのではないか?
不完全な施術のために、未だに錯乱状態にあるフランクの心はボロボロだった。精神安定剤を飲むのもおぼつかず、その辺にいたネズミを食おうとする様は見ていられない。そんなフランクに寄り添おうとする者がいた。モンスターだ。モールマンの少年が、独り塞ぎこむフランクが心配になり、様子を見に来たのだ。恐る恐る近づく少年に威嚇し、遠ざけようとするフランクだが、今のフランクには少年の優しさによるケアが必要だろう。戦いの中では有り得ない、安らぎの時。フランクの傷だらけの心が少しだけ癒されていくようだった。
少年との交流のお陰で頭が冷え、冷静さを取り戻したフランクの下にレギオン・オブ・モンスターズのメンバーであるリビングマミーが訪れ、フランクをモンスター・メトロポリスの聖堂に案内する。聖堂にあるモンスターたちの苦難に満ちた戦いの歴史が刻まれた壁画と、そこから見下ろすモンスターたちの生活、これらを指してリビングマミーはフランクに問いかける。
「人からモンスターと呼ばれる我々は、いつの世も日陰で過ごしてきた。その陰で過ごすことすら心無い者たちに奪われることは耐えられない。仲間になれと言わない、しかしこの地で暮らす同胞や子供たちを護るために戦ってくれないか?」
彼らは善悪問わず人とは違う姿、能力を持つ異形の化け物たちだ。そのために人々からは迫害され、遠ざけられてきた。彼らの多くは安息を求める。その安息は人の手が届かない地にしかないのだ。生前のン・カンツウとして生きた時代の出来事を例えに話し、フランクに訴えかけるリビングマミー。しかし、フランクにはリビングマミーの過去などはどうでもいいことだ。子供たちを護るために戦う、それは自分の子供たちを護れず、手にかけた“パニッシャー”にできることではない、とフランクは考えていただろう。
フランクが協力をこまねいている内にもモンスターたちの被害は増えていく。マンフィビアンをはじめ、多くの同胞たちを失った。フランクの協力を得られないモービウスは最後の手段として、自身の研究室に秘匿していた“ブラッドジェム“に手を出す。魔石ブラッドストーンの欠片であるこの欠片の力を使えば、ハンターたちを退けることができるのではないか、希望的に考えるモービウスだがウェアウルフ・バイ・ナイトらは否定的だ。自分たちでもコントロールできない力に手を出せば、待っているのは破滅だ。糾弾されるモービウスだが、状況は一刻を争う、躊躇している暇はないと強行しようとする。
だが、モービウスの行動はハンターたちにとって望んだ行為だった。ハンターの狙いはモービウスが持つブラッドジェムだったからだ。
モンスターたちの安らぎが奪われる。モンスター・メトロポリスに群がる災厄。侍たちはモンスターを狩るのに喜びを感じる悪漢たちだ。彼らの振るう凶刃は老若男女問わず、モンスターたちに降りかかる。フランクと心を通わせた少年もフランクの目の前で、ハンターの手で殺されてしまった。非情な結末、フランクの腕の中で息を引き取るモールマンの少年を看取るフランクの目は、哀しみと怒りに満ちていた。自分では護ることはできない、だが復讐することはできる。フランク・キャッスルが再び“パニッシャー”として戦う時が来たのだ。