化け物の体に宿るは正義の心。
弱者を虐げる者を復讐の精霊は許しはしない。
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【あらすじ】
ブラックアウトの行方を追うゴーストライダーは前回自分に接触してきた謎の怪人バートラムと遭遇する。バートラムはゴーストライダーを自分たちを“モーロックス”と名乗り、アジトに招くと、自分たちに代わって匿っていた少年少女たちを助けて欲しいと頼んできた。
バートラムの目的は何なのか。バートラムとライダーの会話を盗み聞きしていたブラックアウト、そして頻発する少年たちの行方不明の事件を調査するべくミュータントたちも動き出す…。
【犠牲】
忘れがちだが、ゴーストライダーはヒーローであるのと同時に化け物、モンスターとしての側面を持つ。彼は銃弾やナイフでは傷一つ付かない強靭な肉体とタフネス、そしてなによりも燃え盛る骸骨頭とライダーはぱっと見では怪人のそれ。故に本来ならば味方であるはずの警察からはヴィラン同様に追われ、守護されているはずの街の住民たちからは恐れられてきた。勿論ライダーに変身するダニーは言わずもがな、である。
この事実をゴーストライダー自身は気にしていなかった、否、目を背けてきた。
ただでさえ自分自身が何者なのか分からず、ひたすらに復讐の精霊として戦ってきたのに彼らが自分をどう思っているかを直視してしまえば、自分自身を否定するような気がしていたから。強大な力を持つゴーストライダーでもモンスターとして忌み嫌われるのは堪えるのだ。
そんな折に出会ったのがバートラムらモーロックスだ。異形の容姿を持つ彼らは人間たちが近づこうとしない暗い洞窟の奥深くで暮らし、外界と関わろうとしてこなかった。それは人間たちとの無用な争いを起こさないため。誰かを傷付けることを良しとしない善良な心を持つ彼らは街で起きていたギャングやマフィアとの抗争にも、ヒーローたちの戦いにも不干渉を貫きながらも、その戦いで血が流れることに心を痛めていた。そのために自分たちが救える範囲内で戦いに巻き込まれた少年たちを救出し、自分たちのアジトで匿っていたのだ。
しかし、それも遂に限界を迎えていた。増え続ける行方不明者たちの捜査に乗り出す者たちが増えてきたことで彼らの生活が脅かされてきたのだ。そこで、ゴーストライダーに少年たちを安全な場所に避難させて欲しいと頼んだのだ。
ライダーは彼らの真摯な頼みに素直に首を振ることはできない。彼らは自分と同じ化け物でありながらも暴力を嫌い、他者を護ることを優先する善良な人々だ。復讐を求める自分に彼らの頼みを聞ける資格なんてあるのか。悩むライダーにハーピーはゴーストライダーが戦う意義はある、貴方が戦うことで救われている命はあると諭す。ライダーが戦わなければ悪党がのさばり更に血を流す人が増えていたはず。これは復讐の精霊にしかできない事なのだ。
ライダーへの復讐に燃えるブラックアウトやライダーを危険視する警察組織、そしてX-ファクターがモーロックスのアジトに乱入し、混乱を極める事態になるがライダーは少年たちを逃がすべく奮闘する。しかし、その中でハーピーがブラックアウトの手に掛かってしまう…。残り少ない力を振り絞ってハーピーはライダーに改めて戦う意義を説く。
ハーピーの遺言を受けたライダーは奮起。警察に押収されたヘルサイクルを呼び出し、ヘルサイクルに彼らを載せて先に脱出させる。バイクが向かう先は先に脱出していたミュータントたちの元。彼らの方が少年たちの保護がしやすいだろうし懸命な判断だろう。追いすがるブラックアウトを迎え撃つ際も、少年たちを逃がすことを優先し、共に崩落に巻き込まれてしまった。
誰かを救う為には時には犠牲が必要。その犠牲となった者の覚悟を、託された者が無駄にしてはいけない。
崩落した洞窟から脱出したゴーストライダーは少年たちとバートラム、ミュータントたちに背を向けてヘルサイクルを走らせる。月夜に照らされるゴーストライダーの姿に彼らは声をかけることはできなかった。
X-ファクターもまた、バートラムやゴーストライダーたちと同じく人々から化け物として恐れられる集団だ。彼らとの皆合が自身のアイデンティティに悩むライダーに助けになればいいが…。