アイアンマン、トニー・スタークが暴く時代の闇。
行方を眩ませたヒーロー、ブルーマーベルの居所をトニーは見つけられるか?
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【あらすじ】
謎のスーパーヴィラン、アンチマンが叫んだ謎のヒーロー、ブルーマーベル。
ブルーマーベルこそがアンチマンに唯一対抗できる存在だと考えたトニーは、ハンク・ピムやリード・リチャーズと会議を開き、ブルーマーベルの居所を知ろうとするが成果なし。ならばとSHIELD長官の立場を利用してSHIELDのデータベースを検索するが、ろくな情報がヒットしない。
このままではらちが開かないと踏んだトニーは、データベースに僅かにあったブルーマーベルの情報をもとにSHIELDの古株や政府の人間を尋ねるが…。
【時代が求めて、切り捨てたヒーロー】
トニーが会ったのはSHIELD所属の最古参のエージェント、デューガンとかつてのブルーマーベルことアダムの上官にあたる男。
彼らは60年代の頃から生き続ける時代の生き証人だ。アメリカ合衆国の自由を求めての戦いの歴史、そして臭いモノに蓋をして目を背けてきたのも見てきた者たちだ。
ブルーマーベルことアダム・ブラッシャーは軍人であり、同時に優秀な物理学者という超が付くほどの天才だった。ある時彼は政府の意向から親友のコナー・シムズと共に、「ネガティブ・ゾーンが齎す反物質をエネルギー資源に変える」という、とんでもないビッグプロジェクトに携わった。しかし、研究の途中で研究所は爆発。
アダムはアンチマター・リアクターを受け、その結果反物質をエネルギーとする超人となってしまった。
研究は失敗に終わり、これに頭を悩ませたのは政府の面々。せっかく大金をつぎ込んだのに成果が超人1人では割が合わない。どうしたものかと途方に暮れるが、1人が妙案を思いつく。「アダムをヒーローに見立て、彼に地球延いてはアメリカ合衆国に仇名すモノたちを倒し、アメリカ合衆国の強さを諸外国に見せつけるのだ」と。
かくしてブルーマーベルは誕生した。アメリカ合衆国の力強さを体現する男は、白人のマスクを被らされ、国の為にと心を無にし戦い続けた。こんなものは自分が求めたものではない、と拳を振るう度にアダムの心は悲鳴を上げ続けていた。
そうして、ブルーマーベルはアンチマンとの戦いを経て、政府によって引退に追い込まれた。アダムは黒人だから、ただそれだけの理由のために。
自分が生まれ育ち、そして守ってきた国の薄汚い一面を見てしまったトニーは憤り、政府を激しく糾弾する。
こんなことが許されるわけがない。肌の違いがなんだというのだ。大事なのは力を持つ者の心じゃないのか。
トニーの言うことは最もだろう。しかし、トニーは当時の苛烈な人種差別の時代に生きた人間ではない。故に当時を知る人たちにはトニーの言葉はきれいごとにしか聞こえない。そうしないと国も世界も成り立たなかったことを、今を生き未来を見据えるトニーには真に理解できないかもしれない。少なくとも筆者には理解できないし、分かりたくもない。
それにしても、“白人”であるトニーが“黒人”であるアダムを探す理由が、かつての政府同様、「ブルーマーベルを求め利用する」という過程は違えど結果だけ見れば同じというのがいやらしいというか業が深いというか…。
やがてアダムの所在地を突き止めたトニーは、アダムの妻もとい政府から派遣されたエージェントにアンチマンの復活と、我々にはブルーマーベルが必要なことを伝える。
個人の意思など関係ない。これは命令だ。
散々国から耐え難い仕打ちを受けてきたアダムに更なる困難が降りかかろうとしていた…。
取り敢えず辛い役目を背負わされたトニーはお疲れ様だ。一杯行くか?(畜生)