[アメコミ]LAGIAの趣味部屋[アメトイ]

アメコミ、アメトイに関して語るブログです。MARVELのダークヒーローやクライムファイター中心。

アメコミ:CAPTAIN AMERICA AND CROSSBONES#1

凄腕の傭兵、クロスボーンズ。

残虐な手段を取ることも躊躇わない悪漢である彼の知られざる過去が暴かれる!

 

 

【あらすじ】

とある事件を機に勃発したヒーローたちの抗争、シビルウォー。その仲間割れは1人の男の死を以て終結を迎えた。キャプテンアメリカの死。偉大なる自由の番人を狙撃し、捕らえられたのがヒドラが誇る凄腕の傭兵クロスボーンズだった。

ある時、監獄に囚われていた彼の元にとある要人の救出をアメリカ政府から依頼される。最初は断ったクロスボーンズだったが、有無を言わさない政府によって強制連行されてしまう。果たしてこの危険な男は国から強要された任務を成功できるのか?

手錠に足枷を付けられたまま高高度から落とされるクロスボーンズ。
テメエら戻ったら覚えてろよ。
【CROSSBONES】

さて、まずは本作の解説から始めよう。本作は2004年代のキャプテンアメリカ誌の外伝であり、同時に宿敵の1人でもあるクロスボーンズことブロック・ラムロウが主人公を務めるワンショットとなっている。クロスボーンズはキャプテンアメリカの宿敵であるが、彼自身の過去や心情はあまり語られることはないために本作は非常に珍しい作品となっている。

ラムロウが降ろされた地はかつてキャプテンアメリカが率いる部隊がヒドラ相手に激戦を繰り広げたカスピ海、そこににポツンと浮かぶハザールと呼ばれる小さな島。その島ではとある少年と彼の仲間たちによるウイルスの改良の実験が行われていたが、被検体が暴走したことでバイオハザード同然の惨事が起き、異形のモンスターと化した科学者たちが島民たちを襲っていた。

時限式で外れた錠から逃れたラムロウが見た地は地獄絵図と化していた。
だが、そんなものはラムロウには見慣れた光景でしかない。

その地では生き残った人々が廃棄された発電所に集まり、救出が来ることを信じて耐えていた。そこにやってきたのはヴィランであるクロスボーンズ。島民からすれば最悪の展開だが、それは彼らがクロスボーンズがヴィランだと知っていればの話。本国の情勢を把握していない島民たちはクロスボーンズをヒーローだと認識してしまった。こうして部外者であるラムロウは彼らのアジトに潜入することに成功し、少年の居所を探るべく島民たちに近付く。

自身が超人であると自慢げに話すラムロウ。
更にキャプテンアメリカの命令で助けに来た、と嘘までつくことで島民たちの信用を得る。
これが傭兵のやり方だ。

そこで救出対象である少年の姿を発見するラムロウ。後はこの小僧を攫ってとんずらするだけ、島民たちを助ける義理など自分にはない。そう高を括っていたラムロウだったが、当の少年を見て思わず硬直する。その少年は今回の事件を起こした科学者たちの中でただ1人生き残り、ヒトの姿を保っていた。それ故に島民たちからはこの惨劇の首謀者だと決めつけられて酷い暴行を受けていたのだ。その光景にラムロウは幼少期の自分を重ねてしまう。

老婆から平手打ちを受ける少年と、ギャングから殴られる自身。
強い者にやられるだけの弱い姿にラムロウは少年を守ろうとする。

幼少期のブロック・ラムロウは寂れたストリートで育ち、そこで生きるためならどんなことでもやってきた。屈強なゴロツキたちに囲まれて育った非力なラムロウが生き残るためなら卑怯と蔑まれるような手段も取ってきた。そして同時に、そんなギャングを正面から打ち倒せるような絶対的な力を求めるようになった。そんな中で憧れの対象であり、彼が信奉する力の象徴であるヒドラの首魁レッドスカルに仕えるべく、力を得るためにタスクマスターの戦闘訓練校に入学する。そこでめきめきと力を付け、力への渇望と非情な手段も平然と取る豪胆さをレッドスカルに買われる。そこで彼は傭兵クロスボーンズとなった。

ラムロウの過去は生存を賭けた戦いの記憶しかない。
冷酷で冷徹な性分は昔からだったようだ。

そんなクロスボーンズが虐げられる少年を守ろうと老婆の振り上げた手を止める。それは一瞬の気の迷いか、それとも同情から来る行為か。ヴィランであるラムロウも人の子、思わず救いの手を出すこともあったのだ。

しかしラムロウは自分が取った行為に困惑、そして怒りの感情を見せる。救いなどヒドラの一員である自分には相応しくない弱い奴の行動だ、自分には救いなどなかったのに何故この小僧を自分が助けなければならない、と。それはある種の逆恨みに近い感情だ。だが、それでも一瞬でも少年を守りたいと思った気持ちに嘘はない。

ならば今は少年を救おう。少年を虐げてきた島民たちを見殺しにしてからなぁ!

隠れ家に流れ込んできた化け物たちに襲われるラムロウと島民たち。
こんなクソッタレ共と心中は御免だね。

 

 

政府が寄越してきた迎えのヘリの到着もあって、辛くも少年の救出に成功したラムロウ。これにて任務は完了。ラムロウの手腕を高く評価する政府の人間の言葉を聞きながらも、ラムロウの胸中にはまだ少年への哀れみと怒りの感情が渦巻いていた。

少年を救ったのはいいが、政府はこんな非常事態が起きながらもこの少年の持つ知識を利用しようと企んでいた。少年には利用価値があるし、巨大な力を持つ政府に歯向かえるだけの力も持っていないから。嚙みつかれる心配がないなら、幾らでも利用できるというわけだ。エージェントの口から政府の意向を察したラムロウはそんな政府に利用されながらも戦おうとせず、されるがままの少年への怒りの炎を静かに燃やしていた。あくまでも冷静に努めているのは、少年に自分自身を重ねていたからか。

利用されるだけの哀れな少年。そんな彼を助けると決めたのは他でもないラムロウ本人。ヴィランとして生きる彼ができる人助けはこれしかない。

人間が元来から持つ生存への本能と狂暴性、そして一握りの優しさ。クロスボーンズという男はそういった人間性を体現した男だと言えるのかもしれない。

すまんな、坊主。