空を飛び、地を砕き、宇宙戦艦の艦隊もぶっ壊す凄いヒーローが現れた。
彼は青いマーベル、ブルーマーベル!
【あらすじ】
アベンジャーズが護る街に突如として現れた正体不明のスーパーヴィラン、アンチマン。彼はたった一人でアベンジャーズを圧倒。あわや壊滅寸前となったアベンジャーズだったが、突然アンチマンは苦しみ出し消えてしまう。
彼は消える前に「俺と対等に戦えるのはブルーマーベルだけだ、奴を出せ!」と叫ぶが、アベンジャーズにはそんな名前のヒーローは知らない。
果たしてアンチマンが叫んだブルーマーベルとは何者なのか?
【歴史から消された男】
アベンジャーズが知らないヒーロー、ブルーマーベル。
博識であるアイアンマンことトニー・スタークやイエロージャケットの姿で活動していたハンク・ピムも知らない謎のヒーローだが、彼らが知らないのは無理もない。
何故ならブルーマーベルはアイアンマンたちよりも過去に活動していたヒーローであり、その活躍の痕跡は当時のアメリカ合衆国により全て抹消されてしまっていたからだ。
ブルーマーベルが活動していた時期は1960年代、合衆国内では白人至上主義とそれに対抗する公民権運動が盛んに行われた時代。そんな時代にブルーマーベルとアンチマンは激闘を繰り広げてきた。空を飛び、パンチやキックだけでビルに大穴を開けながら戦う彼らの姿は、正に次元の違う戦いだと言える。
規格外の力を持つヒーローが人々の為に戦う、民衆からすればブルーマーベルは文字通りのヒーローだろう。何とかアンチマンを打ち倒すも負傷したブルーマーベルに駆け寄り心配の声を上げる彼らだが、彼らは信じられないものを見てしまう。
破れた白いマスクから覗く黒い肌、ブルーマーベルは黒人だったのだ。
肌くらいで何を騒ぐ、と思ってしまうが当時のアメリカ合衆国内では白人が絶対的な存在で、白人以外の肌を持つ者、特に黒人は劣等民として蔑まれてきた。
「優良種である証である白い肌を持つ自分たちが、白人のマスクを被った黒人をヒーローともてはやしてきた」という認識を誰もが持つのは無理もないだろう。
こうなっては政府も動かざるを得ない。
何せ白人だけでなく黒人からも「同じ黒人のくせに白人に成りすまして彼らに味方した裏切り者」とブルーマーベルは大バッシングされてしまったのだから。
ブルーマーベルことアダム・ブラッシャーは超人であると同時に軍人。
政府は黒人でるブルーマーベルのこれまで活動と記録を全て抹消し、アダムの軟禁を決定する。アダムは黒人だから、そんな黒人に頼ってきた政府の汚点を隠すためにと命令に従うように強制する様は実に醜い。アダムの上司も彼を庇おうとするが、一個人の力では無理があった。
アダムも自分がこれまでアメリカ合衆国、そして世界のために戦ってきたのにその結果がこれか、と憤るが黒人だからというだけで謂れなき暴言を吐かれ、理不尽な目にあってきたことは何度もあった。その度に耐えてきた。
今度も耐えるしかない、最強のヒーローも人種の壁は越えることはできなかった。
庇ってくれた上司に世話になった礼を告げ、ホワイトハウスを去るアダム。不死身の体を持つアダム、彼は今どこにいるのか…。