[アメコミ]LAGIAの趣味部屋[アメトイ]

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アメコミ:ADAM:LEGEND OF THE BLUE MARVEL#5

歴史から消された男が幾年の時を越えて再び表舞台に立つ。

自身が愛する人を護る為、自身が信じる理想の為に飛べ!ブルーマーベル!

前回はこちらから↓

 

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【あらすじ】

アンチマンの説得に失敗したアダムは再びアベンジャーズの元に現れ、彼らにアンチマンを止めるように協力を要請する。しかし、焦りに駆られて冷静な判断が取れないでいるブルーマーベルに首を縦に振る者は誰もいない。敵がいても何もしないなら自分がやる、と飛び出すブルーマーベルを追いかけ止めようとするアベンジャーズ

こんな状態でアンチマンを倒せるのか?世界の終わりはもうすぐそこまで迫っているぞ!

変わらない時代と世界への怒りがアンチマンを突き動かす。
総統閣下が映る度に笑ってしまう自分がいる(ちくしょうめー!)。
【痛みを分かち合おう】

暴走するアンチマンと止めるべく同じく暴走するブルーマーベル。

2人の超人が本気で戦えば街どころか地球すらも木端微塵になるだろう。それだけの力が2人にはある。反物質人智を超えた物質。その反物質をエネルギー源とする超人をアベンジャーズは総出で止めようとする。アイアンマンにワンダーマン、ミズマーベル、そしてアレスと彼らの攻撃が次々とブルーマーベルに繰り出されるがブルーマーベルは止まらない。逆にブルーマーベルの圧倒的なパワーの前に押し返されてしまう。

アダムがアベンジャーズの静止を聞かず、こうまで意固地になるのはコナーをアンチマンという怪物にしてしまい、彼を止められなかった負い目と彼が時代と歴史と世界から受けた苦痛故に他人を信じられないから。歴史に消され、人々から罵倒され、姿を隠さなければならなかった痛みは簡単には癒えない。“みんなのヒーロー”として戦ったアダムが護りたいものは、みんな彼を裏切った。

この痛みがお前らに分かるものか、と叫ぶアダムだがそこにセントリーが猛攻を仕掛ける。セントリーもまた歴史から消されたヒーロー、君の痛みは君だけのものじゃない、と説得と共に拳をぶつける。

かつてのブルーマーベルは孤独だった。共に戦うヒーローはおらず、苦しみを分かち合うこともできなかった。しかし、今はどうだろう?

変わっていないようで時代も世界も、少しずつ変わっている。何でも独りでやることはない。セントリーの魂が籠った一撃がブルーマーベルを降す。

そして、アダムと痛みを分かち合おうと歩み寄るのはヒーローだけではない。アダムの妻フラジールだ。彼を裏切った事実は消せない、けれども彼への想いは本物だ、とあの時言えなかった言葉を伝える。

アンチマンという名の“滅び”が迫る中、2人は互いの本心を語る。
もう隠し事はない。分かり合うのにそんなものは邪魔だ。

その言葉がアダムにとってどれだけの救いになるか。それは当事者であるアダムにしか分からないだろう。自分に寄り添ってくれる人を護りたい、その想いがブルーマーベルを強くする。

【Live And Learn】

ブルーマーベルとアベンジャーズの戦いが終わったのと同時に天空から世界を終わらせる“滅び”アンチマンが降臨。アンチマンは全身に満ちるアンチマター・リアクターを全開にし、街中にエネルギーの奔流をぶつけ始める。街を、人を、無作為に消滅させていくアンチマンは自らが掲げる大義を叫ぶ。

「お前らが何もしないなら、オレがやってやる。今ある世界を全て破壊して真に人が認められる世界をオレが作ってやる!」

空をアンチマターのエネルギーの奔流が包み、街を飲み込んでいく。
ネズミ以下のお前らに逃げる場所など何処にもないぞ。

アンチマンの反物質が齎す規格外のパワーは凄まじく、人々を護る為に駆け付けたアベンジャーズもアンチマンには成す術が無い。アンチマンの怒りは何十年経っても変わらない差別や迫害、戦争を繰り返し、それに目を背ける人々への怒りだ。その怒りをアベンジャーズだけで止めることは不可能だ。

しかし、アンチマンと同じくアンチマターをエネルギー源とするブルーマーベルが加われば話は別だ。セントリーやフラジールとの交流を経て冷静な判断力を取り戻したブルーマーベルはアベンジャーズのメンバーそれぞれに的確な指示を出して彼らを鼓舞する。

孤独に戦ってきたヒーローはもういない。ここにいるのは「耐えることを止め、自らの意思で愛する人を護る為に戦うことを選んだ」男だ。

人々の為と言いながら、その人々の命を奪うことを躊躇しないアンチマンへの情はもはや無い。アベンジャーズと協力し、アンチマンの力を抑えていたヘルメットを破壊したブルーマーベルもまた全身に漲るアンチマター・リアクターを全開に。更に不安定となり戦う力を失われつつあるアンチマンにトドメを刺さんとする。

しかし、不幸というのは突然起きるものだ。2人の戦いの場にアダムを案じて駆け付けたフラジールの姿が。そして…。

彼女の為にもう一度戦う覚悟を固めたアダムにこれ程の責め苦はないだろう。愛する女の最後を看取り悲しみに暮れるアダム、そんな彼をアンチマンは罵倒する。変わらない世界を正す為には圧倒的暴力が一番、これが自然なこと、お前の女が死んだのも世界から目を背けて暴力に訴えなかったお前のせいだ、と。

その一言がブルーマーベルの怒りに火を付けた。変わりつつある世界に目を背けて、ただひたすらに自らのエゴを押し通そうと暴力に訴えるアンチマンに怒涛の猛攻を浴びせる。アンチマンと化したコナーを救おうとアダムは努力した、彼の言い分も理解しようと自らの理想を押し殺そうともした、だが、その為に関係のない人々を殺めることはできない。暴力に訴えるのも時には大事だろう。「何事も暴力で解決するのが一番だ」と某ザイバツの某マスターが言っていたが、それはあくまでも最後の手段だ。相手の言い分を認め、間違いがあるなら正し、相互理解を目指す。アンチマンにはそれができなかった。己の歪んだ正義感が彼自身の目を曇らせ、変わろうとする世界を見れなかったのだろう。

アダムもまたアンチマンがそうだった様に、変わろうとする世界から目を背けてしまった男だ。アダム自身が体験してきた苦痛がそうさせてしまったのだ。遅すぎた意識の変化により愛する女を失った。それでもブルーマーベルは戦う。彼女と築き上げた想いを裏切らない為に。そして、暴走する嘗ての親友の意志を無駄にしない為に。

盲執に囚われた過去の亡霊となり果てた親友にトドメを刺すアダム。
眠れ、友よ。

 

ブルーマーベルは後から生み出された、所謂後付けキャラクターだ。60年代のエピソードにはブルーマーベルのブの字も出てこない。そんな彼がアメリカ合衆国が今日も抱える差別問題の為に歴史から消された、という大胆な設定で登場したのは大きな意味があると思う。

差別を受けてきたことで口を閉じて耐えることを選んだブルーマーベルと、そんな差別を受ける人々の為に立ち上がったアンチマン、2人の立ち振る舞いはコインの表と裏のようで、彼らと周囲の人々が織りなすエピソードは非常に熱い展開が多い。これはあくまでも物語、しかし彼らが苦しんだ差別問題は決してフィクションのものではない。現実でも起きている問題なのだ。この問題を知ってほしい、そしてどう立ち向かうか、ブルーマーベルとアンチマンが我々に問いかけてくれるように筆者は感じた。

愛した女の想いを受けて再び大空に向けて飛ぶブルーマーベル。
アダムの本当の戦いはここから始まる。