[アメコミ]LAGIAの趣味部屋[アメトイ]

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アメコミ:REVENGE OF THE COSMIC GHOST RIDER(2019)#5

地獄王メフィストに囚われたキャミの魂を救うべく地獄を駆けるライダー!

逆襲のコズミック・ゴーストライダー、最終号!

 

前回はこちらから↓

 

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[あらすじ]

コズミック・キングの手でブラックホールの向こうへと消えながらも、現代のフランク・キャッスルの元へと帰ってきたキャミ。フランクの身を案じ、焦燥に駆られる彼女が目にしたのはマッドタイタンの後釜に座ろうと暗躍してきた愚王を下したパニッシャーの姿だった。

食えない奴だ。ほんの数分、しかし久しぶりの再会を果たした2人は笑顔で再会を喜ぶものの、そこに地獄王メフィストが現れる。メフィストは自分に黙って“復讐の精霊”の呪いを手放したフランクへの意趣返しとしてキャミの魂を奪ってしまう。

今度はフランクがキャミを救うために死地へと飛ぶ。そこでフランクが迎える結末とは…。

メフィストは契約主である自分に黙って契約をクーリングオフする者を許さない。傲慢な地獄王からキャミを救うために、単身地獄へ乗り込むフランク。ヘルファイアで身を焼かれても、悪鬼羅刹に囲まれても「パニッシャー」は止まらない。

[不滅の者が背負う業の重さ]

本シリーズのメインヴィランであるコズミック・キングを倒し、後はコズミック・ゴーストライダーとキャミのチームアップで幕を閉じる。そんな淡い幻想をぶち壊すかのようにやってきた地獄王メフィストメフィストはコズミック・キングの目的も、フランクが勝つことも全て見越した上でずっと機会を待っていた。自分が目をかけた「魂」がより洗練された極上の光を放つ瞬間を。フランク・キャッスルの場合は大切な者が奪われた時こそが、彼自身をより強くする。

メフィストは過去にジョニー・ブレイズが“復讐の精霊”の呪いを手放した時も、あの手この手と策を弄してジョニーが再び呪いを受けるように仕向けてきた。この悪魔が何故こんな回りくどい真似をしているのか、詳細は今は省くが、魂の質を誰よりも重視するメフィストにとってそれだけの価値が“復讐の精霊”と古代の悪魔の「力」を御する人間にはあるのだ。その中でもフランクの魂はメフィストのお気に入りの1つだった。彼ほど多くの人間の命を奪い、己の手を血で染めてきたヒトはいない。そう太鼓判を押すメフィストは現在のフランクの様子を見守りながらも、彼の行動には難色を示していた。

己の罪が消えないことを自覚しながらも尚、戦い続ける。常に斜に構えながらも、決して己の信条を曲げようとはしないタフさ。それはいい。問題はフランクの戦う動機が「フランク基準で」の純粋な者を護ろうとすることだ。キャミは決して善良な人間ではない、いやさ人間誰しも100%純粋な者はいないだろうが、そんな彼女を護ることで自分の罪の意識を誤魔化そうとしているのではないか。サタンたるメフィストの目にはそう見えていたのだ。

メフィストの指摘はおおよそ的を得ている。フランクがキャミの意思を無視してでも銃を撃たせようとしなかったのは、彼の純粋さの基準が失われてしまうからだ。一度でも引き金を引けば純粋さを失ってしまう、と口にしながらもキャミが何度も引き金を引いてきた過去を見て見ぬふりをしている。それは変わらない事実だ。

だが、だからといってキャミが「パニッシャー」が罰するに値する悪党であるという訳ではない。彼女が持つ人間性は決して「悪」ではない。ならば、そんな彼女を死に追いやった悪魔に激怒しない理由はフランクにはないだろう。ヘルファイアで焼かれた体をコズミック・パワーで癒し、かつ強大な力を以てメフィストの居城目掛けて進軍する。

 

コズミック・パワーを振るい、突き進むフランク。そんな彼に苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべるメフィストは、心中で「惜しい」と感じていたことだろう。

フランクがいくら強大なパワーを駆使してもメフィストは倒せない。これはストーリー展開的な意味でも、そして設定的な意味でも変えられない事実だ。ギャラクタス由来のパワーをもってしても、メフィストが城に展開する結界1つ破ることもできないでのは尚更だ。それでも諦めないフランクに気を良くしたのか、結界を解いて自室に招き入れる余裕を見せる悪魔には腹が立つ。そして、この赤い悪魔はフランクに対してお約束の提案をする。キャミの魂を返すのと引き換えにお前の魂を明け渡せ、と。

激昂するフランクを宥めながらも、場の空気をコントロールするメフィストは流石と言える。フランクの「魔眼」の危うさに警告を送るのは、後の顛末を知っているからか…。

 

かくしてメフィストと再び契約を結んだことで、キャミの魂を取り戻したフランクは現世へと帰還。息を吹き返したキャミが見たのは再びゴーストライダーへと戻ったフランクの姿。自分を助けるために取り戻した筈の自由を手放した男に悪態をつきながらもハグをする少女に向けるライダーの眼差しは優しかった。結局元の木阿弥だが、これでいい。コズミック・キングの野郎はぶっ倒せたし、キャミは取り戻せた。これ以上何を求めるのか。安堵に包まれるフランクに目頭を熱くしそうになるが、そう上手く話がいく筈もない。そう簡単に清算できるほどフランクが背負う業は軽くないのだから。

2人の不意を突く形でキャミを襲う「怪物」。コズミック・キングという宿主を失った怪物は、今度はキャミに取り憑いたのだ。化け物へと姿が変わっていく彼女を見やるライダーの魔眼には、彼女の純粋さが失われていく様子がハッキリと見えていた。

すまない、キャミ。呆気に取られるライダーはぽつりと謝罪の言葉を口にするしかなかった。

 

こうして、コズミック・ゴーストライダーの逆襲は幕を閉じた。いざ終わりまで振り返ってみると「結局この話は何だったのか」と思ってしまう自分がいる。折角蘇ったのに、余計にフランクのメンタルを傷付けるだけではないか。だが、そもそも「この程度」でコズミック・ゴーストライダーが抱える業は清算できはしないとも思える。彼はパニッシャーとして多くの悪党を処刑し、またサノスの右腕として多くの罪なき者たちの命を奪い、そして歴史を改変したために犠牲者を増やし続けてきた。どんなに「良かれと思って」善行を重ねても犯してきた罪が台無しにしてしまう。されど、それでもと贖罪のために戦い続ける。

コズミック・ゴーストライダーは決して色物でも、一発キャラなどでもない。今シリーズはそんなコズミック・ゴーストライダーの在り方を再定義するのに一役買っているのだと今なら思う。