ロケットが見せる彼自身に起きた悲劇。
危機に陥った仲間たちを救うべく、1人の戦士が立ち上がる!
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【あらすじ】
ハーフワールドに降り立ったグルートとムーンドラゴンを出迎えたのは、瘦せこけ、体中に点滴を受けているロケットだった。邪悪なカルト教団に囚われの身となったスター・ロードたちを救出するためにロケットの手を借りたい2人だが、当のロケットはボロボロだった。彼に何があったのか、何故ガーディアンズを去ったのか。それを知りたいムーンドラゴンはロケットの過去を覗くことに…。
[痛みに向き合え]
サノスにヘラという宇宙を震撼させた巨悪と宇宙を護るガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの戦い。その戦いはガーディアンズの勝利に終わったが、当のガーディアンズに見慣れた男の姿はなかった。ロケット・ラクーン。口も態度も悪く、ひねくれもの、しかし優れた技術者であり戦闘のプロフェッショナルである彼の存在は、ガーディアンズにとって代えがたい仲間であり、家族の一員だった。
しかし、ロケットは家族の前から忽然と姿を消してしまった。
彼がガーディアンズから離れ、そして故郷の一つであるハーフワールドに隠遁した理由。それは過去にロケットが受けた改造手術による副作用にあった。かつては地球に住む普通のアライグマであり、初老の科学者に可愛がられていたロケット。しかし、ハーフワールドの科学者たちの多くは、地球中の動物たちに手術を施すことで新人類の創造を目論むマッドサイエンティストだった。彼らは老人からアライグマを取り上げると、そのアライグマに手術を施した。小さな体には耐えきれないであろう痛みを伴う手術に、アライグマは耐えた。そうして誕生したのが、我々がよく知るロケット・ラクーンだった。己の望まぬ姿に変えられてしまった哀れなアライグマ、それが彼だ。
科学者たちのエゴによって己の尊厳を踏みにじられたロケットはハーフワールドを脱走し、銀河中のあちこちを旅し、生き抜いてきた。科学者たちから与えられ、鍛え上げてきた戦闘スキルと技術力を武器に戦い続けてきたロケットはやがてガーディアンズ・オブ・ギャラクシーに参加し、チームの中枢として宇宙を護るほどの存在となっていったた。たった一人で戦ってきたアライグマだった生物は、家族と言える仲間たちに巡り会えたのだ。だが、ロケットに施された手術はゆっくりと、しかし着実にロケット自身の体を蝕んでいた。動物をベースに無理矢理の形で手術を行って人間に近づけようとしたのだから、その反動が来るのは当然の帰結だ。耐え難い程の頭痛に苦しみ、体毛が抜け、ボロボロの姿になっていく自分の姿に恐怖を覚えたロケットは、誰にも自身の不調を話さないまま、仲間たちの前から姿を消したのだった。
ロケットの過去と思いを知り愕然とするムーンドラゴン。しかし、彼の行動に納得をしていない男が1人。ロケットの相棒だったグルートだ。何故そのことを自分たちに話さなかったのか、そして筋を通さなかったにも関わらずに自分たちに手を貸そうとするロケットに憤りをぶつけてしまう。
追われる身となっていたガモーラのことを匿っていたことを引き合いに出しながら相棒を糾弾するグルートだが、そんな彼にロケットも内にしまい込んでいた思いをぶつける。家族に話せなかったのは、偏に自分の姿を見られたくなかったからだった。こんな痩せ細った姿を見せるのは、自分のプライドが許せない。ひねくれものなロケットらしい考えだが、そんな相棒にグルートは…。
ロケットの過去と、彼が今受けている痛みを知ったグルートは当初の目的を諦め、ロケットに安静するように勧める。こんな姿で戦えば本当に死んでしまう。それは誰の目にも明らかだったからだ。しかし、そこはひねくれものであり同時に頑固者であるロケット。グルートの要求を蹴り、ガーディアンズを救う作戦に同行する決意を固めてしまう。着実に迫る「死」という痛みに向き合い、最期まで戦うことを止めないロケットを止めることはグルートたちにはできなかったのだった…。
己のやり方で「死」に向き合うロケットの姿に涙腺が熱くなり、何処かで見たことがあるカラーリングのロボットが登場して吹き出したりと感情の変化が激しい本作。このハチャメチャ感は確かにガーディアンズらしいものだと言えるだろう。そしてロケットが再起した時と同じくして、ロケットとは違うやり方で「死」と向き合うジェイソン・スパルタクスの計画が動き出そうとしていたのだった…。