過去の栄光を求める者、未来への偉業を積み上げる者。
新風を起こせない者に明日はない!
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【あらすじ】
エイリアンの襲撃に合うニューヨークに夜が訪れる。その夜はインヒューマンとなった1人が齎した真の暗闇。人類が発明、発展してきたあらゆるライフラインはストップされ、電気が照らす明かりも一つもない。人々は立て続けに起きる非情事態にパニックになり、暴徒化する者まで現れ始める。
この混沌と化した現状を打破できるのは、シルビアを戦場に駆り出したスーペリア・スパイダーマンだけ。スパイダーマンは彼女を説得すべく行動を起こす。
【よりよい明日のために】
オットー・オクタビアスが持ちかけた戦場への参加が、状況を更に悪くさせた。アベンジャーズはエイリアンたちとの戦いで手一杯だというのに、オットーがよかれと思って行った行為がこの事態を引き起こしてしまったのだ。
オットーは傲慢だが、無責任な男ではない。シルビアを連れてきてしまったことには責任を感じたオットーは、糾弾するルークを無視して1人でシルビアを説得しようと行動を起こす。先ずはシルビアに奪われた街の電力を取り戻し、怯え、混乱している市民たちを落ち着かせるのが先決だ。発電所に向かい、自力で回線を繋ぎ合わせることなど天才科学者であるオットーにはわけない。
電力を取り戻し、暴徒と化した市民たちを踏んじ張り、エイリアンたちもぶちのめす。スーペリア・スパイダーマンはニューヨーク中を飛び回りながら、1人思案に暮れる。シルビアが求めた理想とは、中世紀のような穏やかな世界だったはずだ。ならば、この事態は理想的な世界とは言えないはずだ。シルビアと直接話す必要がある。電気そのものと化した彼女に会うなら、彼女の精神世界に潜り込むしかないだろう。
自身が発明した神経スキャナーを使い、彼女のパルスと同調することでシルビアの前に現れるスーペリア・スパイダーマン。彼女の精神世界であるそこにスーペリア・スパイダーマンという異物が現れ驚愕するシルビア、しかも彼女の眼前に広がるのは科学が発展した現代の光景。「私の理想を返せ!」そう叫ぶシルビアにスーペリア・スパイダーマンは彼女が求めた理想郷と、その世界が辿る結末を見せる。何もない、何も生み出さずに朽ちていく未来。スーペリア・スパイダーマンが見せた未来は残酷なものだった。
シルビアが求める世界は過去にあるが、スーペリア・スパイダーマンが目指す世界は未来にある。人類の英知である科学を駆使、改善を重ね、よりよい明日を作り続けること。ヒーローであると同時に科学者でもあるスーペリア・スパイダーマンにはシルビアが求めた過去は無意味なものでしかなかった。
悪夢のような光景を見させられて脳波が乱れたシルビアに一瞬だけ正体がバレそうになりはしたが、過去に固執することは止めさせることには成功したオットー。だが、問題はこれだけではない。エイリアンたちとの戦闘は依然として続いており、上空からはサノスの軍勢の巨大な宇宙戦艦まで飛来し、街を破壊して回っているのだ。
過去を追い求めた末に未来を潰すことなどあってはならない。そして“明日”を創る人類の命が奪われることも許されない。よりよい明日を作る、その障害となるものは排除せねば。スーペリア・スパイダーマンの懸命な説得で考えを改めたシルビアがエネルギーの塊となって戦艦を破壊する。
シルビアは己が得た力に対して責任を果たした。途方もない理想を求め、突き進んだ女。砕かれた戦艦の残骸が閃光に変わり、暗闇に包まれていたニューヨークを明るく照らす。そんな光景を見やるスーペリア・スパイダーマンはどこか誇らしげだ。
スーペリア・スパイダーマンに別れを告げた彼女がここまでやるとは、オットーは思ってもいなかったからだ。理想を追い求めた者同士、通じ合えるものがあり、それを叶えるためならどんなことでもやる。それはヒーローであっても夢追い人であっても変わらない。
「キミは私の誇りだ。」
オットーは閃光に消えていった彼女に、最大の賛辞を贈るのだった。