[アメコミ]LAGIAの趣味部屋[アメトイ]

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アメコミ:PUNISHER(2009)#10

パニッシャーvsザ・フッド、決着?

最強の処刑人、その原点の価値を問われる時!

 

 

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【あらすじ】

ザ・フッドが蘇らせたヴィランたちとパニッシャーとの戦い、それももう間もなく終わろうとしていた。ヴィランたちの策略によってパニッシャーの近しい者たちが次々と巻き込まれ、命を落とし、そしてパニッシャーの怒りの炎も激しさを増していった。

だが、その炎の根本を断たれたらパニッシャーはどうなるのか。ノーマン・オズボーンから見放されつつあったザ・フッドが打ち出す逆転の一撃がパニッシャーを襲そうとしていた。バジリスクたちが仕掛けた炎の罠を搔い潜り、凶悪なヴィランたちを始末しようとするパニッシャーだっだが、不意打ちに合い、意識を失う。

果たして、目覚めたパニッシャーが目にしたものとは…。

デスアダーを始末しようとするパニッシャー。だが、彼らの戦いをバジリスクが止める。
それは彼がフッドからある命令を出されていたからだった。
【甘言と葛藤と】

パニッシャーことフランク・キャッスルは数多くのヴィランから恐れられ、そしてヒーローたちから警戒されてきた。それはフランクの決して消えない怒りの感情を抑えることを彼らにはできなかったからだ。愛する妻と2人の子供たち。あの日、昼下がりの公園で家族でピクニックに行き、そして悪党たちの手で失った大切な人たちを失った絶望と悲しみ、憎悪、復讐心。それらの負の感情がフランク・キャッスルを私刑執行人パニッシャーとして掻き立て、ここまで突き進んできた。

だが、その怒りの根源となった者たちが生前と変わらない姿に戻ってフランクの前に立ったら?その時フランクはこれまで通りにパニッシャーとして戦えるのか?

これはパニッシャー誌を呼んできたファン、そしてライターたちが考え、悩んできた疑問だろう。なにせフランクが戦う理由が無くなってしまったら、もう彼がパニッシャーとして戦う理由は全くと言っていい程に無いからだ。この2009年度のパニッシャーまでにも、そして今後の展開でもパニッシャーにはこの疑問という名の壁がぶち当たってきた。そして、その度にフランクは結果的にではあるがこの壁を乗り越えてきた。それは失った命、殊更にパニッシャーの起源となった命を取り戻すことは、パニッシャーがこれまで歩んできた道のり、そしてパニッシャーが奪ってきた命の重さを否定することに他ならないからだろう。

この(登場人物と読者、そしてマーベルが抱える)疑問を“武器”として持ち出したのがザ・フッドだ。フッドはフランクの妻子の遺体が眠る墓地を荒し、三人の棺を自身のアジトに運び込んでいた。そうしてフランクをそこに連れて来させ、彼の戦意を削ごうと企んだのだ。ザ・フッドには悪魔の力が宿っており、彼の力を以てすれば死人を甦らせることなど訳ない。現にフランクが直接引導を渡したマイクロや多くのヴィランたちが生前と変わらない姿で蘇っているのが、何よりもの証拠だろう。

しかし、そんな甘い話ばかりではないのが世の常だ。家族が蘇るには生贄となる魂が必要。その生贄とはフランクがフッドとの戦いで奪ってきた命、そして最後の魂となるものはフランクの手で近しい者を奪うことだった。そのためにバジリスクたちはフランクと親交があったブリッジ捜査官を襲ったのだ。拘束され、身動きが取れないブリッジ。彼の命を奪えば愛する家族が帰ってくる。この残酷な事実にフランクの精神は揺れ、葛藤する。

愛する家族が、在りし日が帰ってくる。
甘い誘惑をかけられ、渡されたナイフに力が入るが…。

これ程までに悪辣な作戦はないだろうと管理人は思う。フランクがパニッシャーとして戦う理由を無くすためだけに、眠る死者を冒涜し、そしてフランクのパニッシャーとしてのアイデンティティも残らず破壊しようというのだから。フランクが真に殺人者となっていたらブリッジを躊躇わずに殺していただろう、そうすれば妻子は帰ってくるのだから。だが、フランクの良心がそれを許さない。どんな理由があれど殺人は許さない、ましてや善人を手にかけることなど以ての外だ。

葛藤に震え、苦しむフランク。そんな彼の背中を押そうと声をかけるのがマイクロだ。マイクロことリーバーマンもまた、悪党の手で奪われた家族を甦らせるために生前の彼が憎んできた悪党と手を組んだ。自らの信念を捻じ曲げてでも、愛する者を取り戻したい。マイクロを突き動かすのはもはや盲執的な狂気だ。フッドの甘言に乗るまいと悪足搔きを続けるフランクに痺れを切らしたマイクロはフッドの銃を奪い…。

【ONE WAY STREET】

マイクロの放った銃弾でブリッジは死んだ。これにより、フッドが仕掛けた死人を甦らせるための儀式に必要な生贄となる魂は揃った。

狂気に歪むフッドが高らかに叫ぶと幾つもの棺から蘇った死人たちが起き上がる。その中にはマイクロの家族が、そしてフランクの妻子の姿があった。

彼らの姿を目にしたフランクの表情は、正直、言葉に表せない。歓喜と驚喜、憤怒、悲愴、あらゆる思いがフランクの心には渦巻いていただろう。だが、フランクの中には決して無かったことにはできない事実がある、愛する家族はあの日死んだこと。そして今の自分は私刑執行人パニッシャーだということだ。その事実だけは否定できない。ならば、取る手段はこれしかない。

人には絶対に見せないであろうフランクの表情。
パニッシャーとして歩んだ道、そして原点を冒涜することは許さない。

 

この自らのアイデンティティを守るために、アイデンティティの起源となった妻子の死を再び自らの手で引き起こしてしまう。「あれは俺の家族じゃない!俺の家族はあの日に死んだ!」そう叫ぶフランクのことを、人殺しと呼ぶ者はいないと思いたい。

燃え落ち、灰となる妻子。そしてマイクロがあれだけ蘇らせようと苦心してきた家族もまた、マイクロの腕の中で崩れ落ちていった。この事態に怒り狂うフッドだが、怪人化してどれだけパニッシャーを痛めつけても、フランクの心は折れない。

勝ったのはパニッシャーだ。

パニッシャーにはもはや戦える気力がないこと、フッドにも戦闘力は残されていないことから両者痛み分けの結果に。
だが、フッドはしっかりとフランクに置き土産を残していった。

勝つには勝った。だが、勝利の代償はあまりにも大きいものだ。

パニッシャーとしての意地から悪党からの誘いを蹴り、取り返せた幸せを掴むチャンスを不意にした。この勝利にはそれだけの価値があったのか。更に追い打ちをかけるように、フッドの口からヘンリーの正体を聞かされてしまっ。

あの小僧はジグソーの息子、そんな奴と行動を共にしてるようならオマエは俺たちと大差ないぞ、とフッドが放った言葉がフランクを追い詰める。

拠点であるバンに戻ったフランクは、ヘンリーを追い出してしまう。それはヘンリーがヘンリー自身の素性を隠していたから、そしてそれ以上に彼をこの戦いに巻き込みたくなかったからだ。自分は1人ででも戦える。立ち去るパニッシャーをヘンリーは見送ることしかできなかった…。

ザ・フッドとの長い戦いは終わった。
だが、パニッシャーの戦いはまだ終わらない…。次回、パニッシャーに最大の危機が迫る。