月夜に吠える狼が1“人”。
彼の名はジャック・ラッセル。またの名をウェアウルフ・バイ・ナイト!
【あらすじ】
とあるバーに狼人間の伝説を聞かされて育った女がいた。女は狼人間の血を引くという一族の血を嫌い放浪の旅に出ていたのだ。
疲労が貯まる女、ローラの前に狼人間たちモンスターを狩るハンターと、ジャック・ラッセルが現れる。ジャックがローラに近づいた理由は一体?
【レギオン・オブ・モンスターズ】
タイトルにある「レギオン・オブ・モンスターズ」。このタイトルの初出は70年代、ゴーストライダーを主役にマンシングとモービウス、そしてウェアウルフ・バイ・ナイトの4人が集ったクロスオーバーイベントのタイトルとチーム名として世に送り出された。
本シリーズはその「レギオン・オブ・モンスターズ」を冠したミニシリーズの一つで、オリジナルメンバーであるジャックと初登場であるローラの2人を主軸に沿えて展開されるメインストーリー。もう一つは“フランケンシュタインの怪物”ことフランケンシュタイン・ザ・モンスターの悲劇を描いたストーリーで構成されている。まずは狼人間であるジャックと、ハンターたちとの戦いに巻き込まれる女と3者3様の怪物たちが彩る「怪物の軍団」の物語を紹介しよう。
【A Werewolf by Night Tale】
ウェアウルフ・バイ・ナイト、この長ったらしい名前を持つジャックは70年代は初出のヒーローであり、月の力で人間の姿から獰猛な狼人間の姿へと変身する能力を持つ青年だ。研ぎ澄まされた爪と牙、常人のそれを越えた野性的なパワーで自身や同胞を守る守護者、それがジャックだ。
ジャックがローラに近づいた理由、それはローラが自分と同じウェアウルフであり心無い者たちから迫害、追われる者だと察知したから。
同胞を傷付ける者はどんな相手でも許さない。狼を怒らせた人間にもたらされるのは凄惨な死だ。
ジャックが同胞を傷つけられ、自分たち狼人間の尊厳を踏みにじられることに怒るのは安っぽい正義感からではない。
自分たちウェアウルフがこの人間たちの世界で生き抜くためだ。自分たちとは違う存在を、人間は決して許さない。どんな手を使ってでも排除する。そんな理不尽な暴挙に晒され、怪物たちの生きる道が断たれることが、ジャックには許せない。
自分も怪物であり、ヒトを引き裂いた事実に涙するローラだが、ジャックはそんなローラに変った自分自身を受け入れるよう助言する。酷な話ではあるが怪物が生きるためには自分を受け入れなければならない。それが出来ずに消えていった奴らをジャックは見てきた。
この新しく誕生した同胞が生きる力を身に着けるには自分が導かなければ。仲間を導く光になることこそが、自分の使命なのだから。
獣の姿に人間の心を持つ男、ジャック・ラッセルの戦いはまだまだ終わらない。命尽きるその日まで。
…誇り高き狼男は光を浴びて生きていく。続いては闇に潜み生きていく男の物語を紹介しようと思う。男の名はフランケンシュタイン・ザ・モンスター。これは怪物へと変えられた哀れな男の物語。
【あらすじ】
19世紀、ヨーロッパの何処かで複数の男たちが議論を重ねていた。神の僕たる司教である彼らは、神の教えに従ってある遺産を探し当てた。かのヴィクター・フランケンシュタイン博士が造り上げた人造人間。
この人造人間を造り上げた博士の技術力に着目した司教たちはマーキュリー神父にある命令を下す。ゴーストタウンにある廃墟を調査せよ、と。一体そこに何があるのか…。
【To Be A Monster】
モンスターの中にはジャック・ラッセルをはじめとした善良なモンスターたちがいっぱいいる。彼らは己の誇りのために、同族を護るために力を振るう。そうすることで彼らは“光”を浴びて生きてきた。しかし、中には正しく力を振るいながらも光を浴びることが出来なかったモンスターたちもいる。そのモンスターの1人がフランケンシュタイン・ザ・モンスターだ。
フランケンシュタイン・ザ・モンスター、“フランケンシュタインの怪物”と呼ばれる彼について詳しい説明は不要だろう。数多く存在するホラー作品の中でも狼男と並んで代表的な存在である「彼」が辿るストーリーは、希望に満ちていた狼男ジャックのそれとは違って陰鬱としたものだ。
「彼」はマッコレー神父をFather=神父様と呼んでいた。創造主に存在を否定され、怒りと悲しみのあまりに創造主の大切な者たちを壊し、贖罪のために死ぬことを望みながらもそれすらも許されなかった怪物。純粋だったが故に絶望に沈み、塞ぎ込んでいた「彼」が自らを必要としてくれる司教たち、取り分け自分を気遣ってくれるマッコレー神父を慕うのは当然の帰結だっただろう。神父の命じるままに、「彼」は独りゴーストタウンへ向かった。その神父の表情が明るいものではなかったことには気付かずに…。
かつてのマッコレー神父は司教たち共に自分たちの“信仰”のために、多くの人々の命を奪い、“祝福”に捧げてきた。彼らが言う祝福の正体は「彼」と同じ人造人間、即ち命じるままに行動する不滅の存在だった。しかし、組織というのは必ずしも一枚岩とは限らない。神父と意を異にする者たちも当然、存在する。
マッコレー神父は自分の“息子”である「彼」の存在も、自身と「彼」を否定しながらもヴィクター・フランケンシュタインの技術を盗んだ司教たちの存在も許せなかった。だからこそ、共倒れになってもらうことにした。神の名において、全ての悪しき者たち即ちモンスターを浄化する。一石二鳥とはこのことだったが…?
己の誇りも、護るべき同胞もいない「彼」の目は常に暗く沈んでいる。しかし、その生気を感じさせない目の奥には確かな悲しみの感情が渦巻いている。「彼」は誰よりも真っすぐな男だ。それ故に人々の悪意と自身に向けられる憎悪の感情に苦しんできた。それでも「彼」は生きなければならない。モンスターと蔑まれても、慕った父親を殺めたとしても光が差さない暗闇の中を歩みを彷徨うしかない。たとえ、自身が真の意味で化け物に変わり果ててでも…。