[アメコミ]LAGIAの趣味部屋[アメトイ]

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アメコミ:GHOST RIDER(2022)#21

“復讐の精霊”生誕50周年を祝うサバトの第21幕!

復讐のロードに終わりはない!悪魔を崇拝するカルト集団を打ち倒し、次のロードを駆けるのみ。

 

前回はこちらから↓

 

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【あらすじ】

カルト・オブ・メフィストのアジトを突き止めたタリア・ウォーロードとジョニー・ブレイズ。鬱蒼とした木々に囲まれ、強力な結界に囲まれたアジトに潜入してカルトの指導者であるステファン・スカーから子供たちを救うために、タリアはジョニーと“復讐の精霊”の手を借りて自身のコピーを作り出す。ムーンチャイルドと呼ばれる“それ”は結界を越え、アジト内への潜入に成功する。

しかし、悪魔に魅了された者たちがタリアたちの存在に気が付いていない訳がなかった。彼らは主の望みを満たすために障害を排除せんと動き出したのだった。

ムーンチャイルドのコントロールに専念しなければならないタリアを襲うモンスターたち。メフィストの魔力を得た木々が化け物へと姿を変えて、ジョニーたちの往く手を阻む。邪魔をするならば地獄の炎で焼き尽くすまでだ。

【Teach of Your Children,Not The End】

2022年から開始された“復讐の精霊”生誕50周年を記念とした本シリーズ。アニバーサリー企画として開始された物語も、いよいよ今号を以てひとまずの完結を迎えることになった。思えば当ブログで始めて紹介した作品もこのゴーストライダー誌だったことを考えると色々と感慨深いものがあるものだ。「ひとまず」と先述したのは物語が続くことが確定しているから。これを読んでいる読者のお前たちには、まだまだ管理人と共に地獄に付き合ってもらうぞ。

前置きが長くなったが、今号の解説に入ろう。前号にてタリアにとって因縁深きカルト集団のアジトへの潜入を開始したムーンチャイルド。ムーンチャイルドを通して見たタリアの目には、この世のものとは思えない地獄絵図が広がっていた。ステファン・スカーはとある全寮制の学校をアジトに構えていたが、かの悪魔崇拝者は学校に通う生徒たち全員に悪魔学を学ばせていた。人道に反した悪辣な教育を施された子供たちは、ただただ自分たちの快楽のためにそして主であるメフィストのために罪なき人々を殺害し、ヒトの臓器でスポーツをしたり実験の材料にしたりと書いていて反吐が出そうな非行を重ねていた。人間という生物は幼い頃から教え込まれた教育がその人にとっての「当たり前」となるものだが、彼らは皆自分たちが行っていることが正しいものだと盲目的に信じ込まされているようだ。

その光景にタリアはかつての自分を見ているようで、言いようのない嫌悪感とそしてその裏で安堵を覚えていた。子供たちの姿は幼い頃のタリアとうり二つだった。子供故に抗うことも出来ずに悪魔に魅入られ、死を振りまく尖兵と成り果てていく。タリアたちがここに来なければ、彼らもまたそうなっていた筈だから。自分のような「過ち」を繰り返す悲劇を回避できる。そう淡い希望を抱く彼女だが、その希望をステファンは摘み取ろうとする。

ムーンチャイルドの制御権を呪術を使ってタリアから奪ったステファン。その様はまるで、お前は未だに大人にすがらなければ生きていけないガキなのだと告げているかのよう。かつてのタリアがそうだったように、現在のタリアもメフィストの庇護がなければ生きていけないのか。

汚い欲望を抱く大人のために子供が犠牲となる、そんなことはあってはならないと“復讐の精霊”も至高の魔術師も実力を以て否定する。ライダーは地獄の炎を纏うチェーンソーと振るい、タリアを襲うモンスターたちを薙ぎ払う。至ドクターストレンジもまた、幼いタリアを救うべく奔走しステファンに魅入られるタリアを救おうとした。進む道を指し示し、選択肢を与える。そして選んだ道をどう進むかを見守る。これが正しい大人の在り方だろう。

至高の魔術師はタリアに目を覚まさせる切っ掛けを与え、“復讐の精霊”はタリアに贖罪の道を指し示した。子供がどう生きるかは、結局は子供自身が選ぶしかないのだ。

ストレンジから両親が亡くなった原因を聞かされたタリアはステファンを殺そうとするものの、とうのストレンジに止められてしまう。復讐のためではなく、贖罪のために戦うのがタリアの生きるロードだったことをストレンジには分かっていたのだろう(じゃあ最初からそう言えってば)。ストレンジの手を払ったタリアは独学で魔術を学び、超常現象を調査・解決するFBIのエージェントとなったのだった。「毒を以て毒を制す」とはよく言われるが、この仕事はタリアが最も適任だったと言える。彼女が得た「毒」は彼女の意志を叶える力となるから。

ムーンチャイルドがステファンに奪われたことを察知したタリアはライダー共にアジト内に強襲、待ち構えていた子供たちをライダーに任せて自身はステファンの元へ走る。果たしてタリアが来るのを待っていたステファンは、タリアの行動と半生を嘲笑する。贖罪の道など結局は自分の傷を隠すために自己満足に過ぎない、と。そんなことは「大人」に言われなくてもタリアにも分かっている。分かっているからこそ、ケジメをつけなければならないのだ。悪魔に魅入られた子供たちを救い出し、元凶を自分諸共に葬り去る。それがタリアが突き進んだ贖罪のロードの終着点。

執念からムーンチャイルドの制御権を取り戻したタリアは「我が子」に地獄への門へと繋がる門を描かせる。かつてはストレンジに止められてしまった術だが、今は止める者は誰もいない。炎に包まれた門の底にはタリアが来るのをずっと待っていた両親の姿があった。

子供たちに取り憑いていた邪念は全てライダーが喰らい、ステファンはタリア諸共に地獄へと落ちていった。これで贖罪は果たされた。醜悪なゾンビと成り果てた両親に抱かれながら業火に焼かれるタリアの表情は、憑き物が落ちたかのように清々しいものだった。

 

ベンジャミン・パーシーがライターを務めた本シリーズのテーマは、これまでライダー誌で描かれた「復讐の意義」を改めて問いかけるものだったと管理人は思う。“復讐の精霊”が罪なき人々と呼ぶヒトを食い物にする悪魔たちを許さない義憤の心、どんなに手を血で染めようが愛する者を奪われた怒りをぶつける憤怒の心、そしてかつての過ちを悔い償おうと足掻く心。そのどれもが復讐という言葉が形を変えたものであり、それを成すためには己の在り方を見失わないことが大事なのだろう。

復讐心というものは時に己の目を曇らせ、心を惑わせて破滅へと導く諸刃の感情だ。本シリーズではそういった人々が多く登場した。タリアもジョニーも、破滅を体験したことで己の進むべきロードを見出した。その険しく過酷な道を真っすぐに進むことができるのは意義を見出した者だけ。その道をゴールできた時こそ復讐心は晴れるのだ。

タリア・ウォーロードはゴールした。しかし、残されたジョニー・ブレイズの前にはまだまだ道は続いている。犠牲となった者たちの魂を背負って生きるジョニーの背に、また1人の魂が加わったから。彼らの命を無駄にしないために、ゴーストライダーは真夜中の荒野を駆ける。ここにタリアたちがいたことを示すかの如く。

ライダーはまた独り、荒野を駆ける。静寂に包まれたロードを地獄の炎で照らす様は哀しくもあり何処か美しい。その背後でまた新たな厄災を地上に齎すために悪意が蠢いていた…。

次号、ゴーストライダー:ファイナル・ヴェンジェンスゴーストライダー最後の戦いの幕が上がる!新ライダーも登場で地獄の炎はますます燃え上がる!お楽しみに!