“より優れた“大虐殺、開始!
【あらすじ】
スーペリア・スパイダーマンがニューヨークを監視、支配してから暫く経ったある日のこと、公にされていない刑務所にヴィランたちが収監された。市長であるジェイムソンの意向に従わない超人や、何の能力も持たない一般人も含めて、犯罪者は纏めて牢に入れられた。その中にはかつてニューヨークを恐怖のどん底に叩き落した凶悪な殺人鬼、カーネイジことクレタス・キャサディの姿もあった…。
【プリズン・ブレイク】
さて、冒頭から一般人のモノローグから始まる今シリーズ「SUPERIOR CARNAGE」は全5話で構成されたミニシリーズであり、ラフト刑務所を脱獄し、エージェント・ヴェノムと二代目スカーレット・スパイダーの2人に倒されてからの動向を描いた作品だ。
何の罪も犯していないのに、凶悪なヴィランが数多く捕らえられている刑務所に収監されてしまったコネリーは、ある日エージェント・ヴェノムに連れられて刑務所に収監されるクレタスを目撃した。クレタスは車椅子に乗っており、両腕も拘束されていたが、その瞳は血のようにどす黒い赤で染まっていた。そんな見るからにヤバい男が隣の監房に収監されてしまったものだから、コネリーは気が気でない。
自分に高圧的な態度を取る看守に、凶悪犯が蠢く薄暗い刑務所。コネリーの精神は限界に近づいていただろう。
コネリーが目撃したのは、全身を拘束された赤髪の凶悪犯。
捕まりながらも余裕な態度を崩さないクレタスの顔は邪悪に歪んでいた。
だが、この哀れな男の不幸はこれで終わりではなかった。
いつものようにコネリーを嘲っていた看守が、突然うわごとを言いながら全ての監房の電磁ゲートを解除しようと電子ロックを打ち込み始めるのだ。そして看守の奇行に合わせてクレタスの体を真っ赤なゲル状の何か、シンビオートが包み込む。突然の事態にパニックになりながらも看守に止めるよう叫ぶコネリーだが、時すでに遅し。ゲートは解除され、看守もカーネイジの姿を現したクレタスの手で殺されてしまった。自由の身となったカーネイジは本能の赴くままに殺戮を開始。監房から脱出を図る悪党たちも看守も問わず、皆殺しにしてしまう。
その凄惨な現場と恐ろしいカーネイジの姿に凍り付き、失禁してしまうコネリー。
何故自分がこんな目に合わなければならないのか、もはや逃げることもできないコネリーはそんなことを考えながらも、確実に近付いてくる“死”を受け入れるしかなかった。
カーネイジが起こした大虐殺と刑務所からの脱走。そんな様子をモニター室から愉快そうに眺めている男がいた。ウィザードと名乗る男は自身が開発した装置を使って、他者の意識を操ることが可能としたヴィランだ。看守の意識を乗っ取り、カーネイジが脱獄するよう仕向けたのだ。ウィザードがこんな危険な真似をした理由は簡単、カーネイジをはじめとしたシンビオートを味方につけ、利用するためだ。意識を乗っ取った適当な人間を依り代にシンビオートを憑依させ、服従させれば強大な戦力となると企んだのだ。カーネイジに起こさせた虐殺も、利用するに値するかを見極めるテスト、そしてデモンストレーションに過ぎなかったのだ。
ウィザードの期待通りにカーネイジは、その暴力的なまでの強さを見せつけた。後はカーネイジの宿主であるクレタスの意識を乗っ取り、服従させるだけだ。だが、ここでウィザードが想定もしていなかった事態が発生する。カーネイジの中にはクレタスの意識がないのだ。ウィザードが操ることができるのは人間の意識だけであり、シンビオートの意識は操れない。困惑するウィザードにはカーネイジの獰猛な力を抑えることはできない。
事件の黒幕が自分が想像もしていなかった事態によってやられるという、何ともお間抜けな展開に唖然としてしまうが、これで終わりではない。ウィザードがカーネイジの手で殺される寸前、カーネイジの体を強力な衝撃波が襲ったのだ。バラバラに吹き飛ばされたカーネイジ・シンビオートと力なく倒れるクレタス。
カーネイジの脱獄と大虐殺は、ウィザード1人が起こしたものではなく協力者がいたのだ...。
窮地に立たされたウィザードを救ったのは衝撃波を発するサイボーグ、クロウだった。
シンビオートの弱点を突けるこの男の存在が、カーネイジの命運を決めることになる。