栄光と没落の歴史を生きる神々
というわけで、今回はマーベルユニバースに登場するオリンポスの神々について解説していこうと思う。当ブログではアル・ユーイングのガーディアンズ・オブ・ギャラクシー誌やジェイソン・アーロンのパニッシャー誌を紹介してきたが、その中でヒーローたちの強敵として立ちはだかったのが神話に登場する神たち。マーベルには雷神ソーを筆頭に神話上の神々が数多く登場する(ルシファーやザドキエルなどの聖書関連のキャラクターはあえて除外するとして)が、その中でも特に武闘派の神々がギリシャ神話の神だ。
“大英雄”ハーキュリーズ(ヘラクレスは日本での呼び名)に主神ゼウス、“戦いの神”アレスや“知恵の神”アテナといった多くの神々の
彼らの基本的な設定は我々が知るギリシャ神話のそれに準じるが、マーベルに登場するにあたりその出自には独特の改変が加えられている。主神ゼウスの父はタイタン人クロノス。マーベルでタイタン人と言えばサノスを思い浮かべるが、オリンポスの神々はサノスとは遠縁にあたる種族にあたる。さらに言えばタイタン人は宇宙の創造神セレスティアルズの使者たるエターナルズの分派、つまりゼウスやアレス、そしてハーキュリーズは創造神の血筋を継いだ神々ということになる。
ゼウスは創造主であるクロノスにその力を危険視され、兄弟共々に冥界に封印されるものの、彼を打倒。彼が悪政を敷いていたオリンポスを取り戻すだけでなく冥界に囚われていた兄弟たちを解放し、名実ともにかの地の支配者となったのだった。
このバックボーンがあるためにオリンポスの神々は大なり小なり自分たちの力を誇り、その力を高めることに労力を惜しまないストイックな者たちが大半を占める。それと同時に、自分たち以外の人種、特に己の身1つで戦うことができない者たちを侮蔑する傾向が強い。戦闘だけでなく、芸術や化学においても他の種族の追随を許さないのも彼らの性分があってのことだろう。突き抜けすぎて変な方向に突っ走っているのも、浮世離れした神々らしいと言えるかもしれない。
アスガルドに比類する強大な力を持ち、地球上でも絶大な影響力を誇るオリンポスの神々。そんな彼らだからか、ヒーローにとって倒すべき壁として登場することが多い。ハーキュリーズは最初はソーのライバルとして登場し、アレスはソーだけでなくハーキュリーズとも戦いを繰り広げる荒ぶる神として描かれた。ゼウスもアテナも当初は地球人と交友関係にあるハーキュリーズに難色を示し、考えを改めようと試練を与えた程。
そして、同時に圧倒的な力を持つ巨悪の力強さを読者に示すための指標、ぶっちゃけかませ扱いをされることもままある。日本神話にその名が記された“カオス・キング”アマツミカボシに蹂躙されたり、“夜の女神”ニュクスに滅ぼされたりと碌な目に合わない。本拠地たるオリンポス・シティなど何度破壊されたことか。
拠点を破壊され、命を奪われてと散々な目に合い続ける彼らだが、大体すぐに復活する傾向にある。これは死んだことがなかったことにされたり有耶無耶にされているのではなく、エタノールズひいてはセレスティアルズ由来の不老不滅の生命力を持つ存在だから。死亡した彼らの魂は冥界へと送られるようだが、すぐさまに生き返る様は某超人墓場を彷彿させるフリーダムさを感じさせる。また、復活する際にパワーが不足していれば全盛の力を発揮できない子供の姿になることもあるようだ。
衆人環視の前で堂々の復活を果たしたゼウス。その姿は半裸の少年の姿だったが。…時の流れて残酷だなぁ(しみじみ)。
自らが持つ力への絶対的な自信と背負う異名に恥じない武勇を誇る彼らにとって、何よりも忌み嫌うのは敗北ではなく自分たちが築いてきた功績を消されてしまうこと。故にアレスは世界の悪となってでもザ・ハンドに与した己の芸術たるパニッシャーを、ゼウスは悪神と成り果てでもオリンポス・シティの再建と武勇を取り戻そうとした。それはハーキュリーズにも当てはまり、世界に轟く“大英雄”たる自分と地上に暮らす一市民の自分とで揺れ動くことも多々あった。
オリンポスの神々は悪役を担うこともあるが、その戦闘力に裏打ちされた誇りは本物。どんな相手でも恐れることなく力強く戦う姿が、管理人には眩しく見える。
オリンポスの神々のただ1人の生き残りであるハーキュリーズは、2024年現在はアベンジャーズに所属。クロスオーバーイベント「ブラッドハント」でもその剛腕と愛嬌を振る舞う姿がカッコいい!