3人のダークヒーローが夢の共演!地獄の王子ブラックハートの野望を食い止めろ!
90年代のクロスオーバーイベントを代表する1作、ハーツオブダークネス。その前編を紹介する。
【あらすじ】
イバラに覆われ、"キリストの冠“の名を持つ地クライスツ・クラウン、そこではメフィストを信仰するカルトの悪魔崇拝が行われていた。
その地に現れたのは地獄の王子ブラックハート。彼はメフィストの望むままにカルトを虐殺、その魂を捧げるが父の操り人形でしかない自分の境遇に不満が爆発。メフィストへの憎悪に燃え、彼の抹殺を目論む。
数日後、クライスツ・クラウンへやってきたダニー・ケッチ。ダニーは彼の元へ送られた手紙の主を訪ねてきたのだ。手紙には「ゴーストライダーの秘密はソウル・クリスタルにある。私を信じてクライスツ・クラウンに来てください」とあったのだ。
ダニーは手紙の差出人を探す前に純真な心を持つ娘ルーシーと彼女の母親に出会い、彼女らの家に案内される。そこにはローガン=ウルヴァリン、フランク=パニッシャーの2人の先客がいた。
2人も謎の手紙を受け取り、差出人の正体と目的を知るべくクライスツ・クラウンに来ていたのだ。
やがて夜が更け、辺りが暗闇に包まれると件の差出人、ブラックハートが現れた。
ブラックハートは打倒メフィストのためにダニーたちに協力を申し出る。協力するなら望むものを与えると嘯く悪魔にダニーたちは…。
【3大ヒーローたちの共演】
クライスツ・クラウンに呼び寄せられた3人のヒーローたち。彼らはこれまでにも共演することはあったが、3人揃ってはこれが初めて。
戦いの場で顔を合わせ対立し、共通の敵を倒すべく共闘することはあっても素顔を晒すことはなかった。その3人がヒーローとしての顔ではなく普段の姿で会うというのはなかなか面白い。うち1名は普段から素顔を晒しているために変装をしているが、全く変装になっていないのはもっと面白い。本人はマジメにやってるのだからたちが悪い。
【心に闇を持つ者たち】
ダニーたちの前に現れたブラックハートは「地獄の王メフィストの非道さや人間に与える影響は害だけだ。自分が父に代わり王となれば人間たちにとっても幸福だ。父を倒す手助けをしてくれたらお前たちの力を強化し更なる力を与える」と協力を迫る。
3人は何故自分たちなのか、メフィスト退治ならソーやシルバーサーファーの方が適任だ、と反論するがブラックハートはこの3人でなければダメだと言う。
地獄の力に屈さないのは心の光と闇の境界、その境界を必要とあらば躊躇いなく超えていける者なのだという。自分の目的のためならどんなに非道なことでも行える強い魂を持つ人間、それがメフィストを倒せる存在なのだ。
ブラックハートは自分とダニーたちは同じ存在であり、共にメフィストを倒そうと繰り返す。
だが、悪魔の提案に乗る3人ではない。メフィストが危険な存在だということは噓ではないのは分かる。しかしブラックハートが王になってもメフィストの愚行を繰り返すだけ。ダニーたちは悪魔の提案を突っぱねるた。
ブラックハートはルーシーを除く町の住人たちを洗脳し、自身の周囲にまるで壁のように配置させ「私を倒したければこの取るに足らんニンゲン共を打ち倒してみろ!君たちがいつもやっているようにな!」と叫ぶ。
ブラックハートは簡単に心の境界を越えたが、ダニーたちはそうしない。倒すべき敵はブラックハートだけだからだ。それは彼らが境界を超えることを厭わないが、善性までは捨てないからだ。
操られた人々から離れたことを好機とみたウルヴァリンとパニッシャーはバンで追跡。残されたダニーも追跡を試みるもバイクが無ければ追えない。諦められないダニーはサイクルショップのバイクを拝借。エンジンをかけようとしたその時、ダニーの掌に彼のバイクのガスキャップに刻まれたエンブレムが。体が燃え、血肉が煮えたぎる。
【非道な悪魔に制裁を】
ブラックハートは自分が召喚された地、地獄の入り口でヒーローたちを待っていた。ここまで自分を追ってきたことを褒め称え、再び協力を迫る。今度はダニーに憑依したゴーストライダーには"ゴーストライダーの正体”を、ローガンには"失った記憶やアダマンチウムの秘密”を、フランクには”妻子を殺害した犯人”を教えるという。
だが、これまで非道を重ねてきた悪魔を許すことはできない。3人はそれぞれの武器をもってブラックハートを攻撃する。
ブラックハートは3人の中で特にゴーストライダー、いやさ"復讐の精霊”ザラソスの力を欲していたようでゴーストライダーに自身の存在も怒りの感情も完全否定されたことで激昂する。ルーシーを盾にしようとするも、ウルヴァリンとパニッシャーに阻まれる。
ルーシーを救出した3人に、尚も往生際悪く立ちはだかろうとするブラックハートだが、その場に件の地獄王、メフィストの介入が。
「今回の敗北は息子にとっていい経験となっただろう。彼らも自分の運命も変えられない、あるがままの自分を受け入れるしかないことを身をもって分かっただろう」
メフィストはゴーストライダーに礼を告げると息子を連れて去っていく。
残されたのは草原に倒れている町の人々とルーシー、そして勝利を掴んだウルヴァリンとパニッシャー、そしてゴーストライダーの3人だ。
ブラックハートの言う境界が本当にあるのかは分からない。自分たちも境界を越えて悪に墜ちるのかも分からない。
それでも罪なき人々を弱き者を守ることが自分たちの使命。助け出すことができた少女は決意を新たにする3人のヒーローたちに寄り添うのだった。
今作のメインヴィランに抜擢されたことで当時一躍知名度を上げたブラックハート。彼はメフィストの息子、つまり地獄の王子だ。大体のフィクションでは王子というのは、王の威厳を自分の力のようにひけらかすバカか、プライドの高さが玉に瑕だが己の野望のために邁進する男なのがお約束だと筆者は思う。
ブラックハートはこの2者の中では後者だろう。父の偉業を越えるためにはどんな手でも使う。人間の力だって利用する。なりふり構わずやれることはやってやる、という姿勢を筆者は大好きだ。
反抗期真っ盛りなドラ息子というのも愛嬌があっていいだろう。ブラックハートの飽くなきチャレンジ魂は今後も尽きないだろう。
それが例え父の思惑通りだとしても…。